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女子高校生にナンパされたうえ、弁当まで買ってもらった話

車中泊の旅をしていたことを記事に書いていたら、急にある出来事が思い出された。

私を旅に誘ってくれたU君は、旅の間、毎日のように路上ライブで歌っており、それはたいてい夜に行われた。
夜のほうが聴衆が集まるし、チップもたくさんもらえるからだ。

しかしその日はめずらしく、彼は午前中から駅前広場で歌いはじめた。
場所の記憶が曖昧なのだが、そこは滋賀県の大津駅だったように思う。
私は彼とは少し離れた場所の地面に座り、自分で描いたポストカードサイズの絵を売っていた。

路上ライブは昼前には終わり、それに合わせて私も路上に広げていた絵を片付けた。
いつものように軽のワゴン車に乗り込もうとしたとき、女子高校生と思われる2人の女の子が走り寄ってきた。

「友達だった!」と、声を弾ませて彼女たちは言った。
駅前で歌っていた男絵を売っていた男は無関係だと思っていたのに、ツレだったのかという意味だ。

これからスーパーマーケットに行きたいから、そこまでいっしょに車に乗せていってくれないかという。
この旅で女性をナンパするようなことはしなかったが、女性のほうから来てくれるぶんにはもちろん大歓迎である。
U君はイケメンで女性にモテる人だったので、私はそのおこぼれにあずかれたのだろうと思う。

地方のスーパーは、徒歩で行くには不便な場所にあることも多い。
そのスーパーも駅からは少し離れた場所にあり、そして東京では考えられないくらい大きな建物だった。

スーパーの駐車場に車を停めると、「お礼にお弁当を買ってあげたいから、一緒に店に入ろう」と彼女たちは言う。
さらに「手をつなごう」と言うので、一人の女の子がU君と、もう一人の女の子が私と、手をつないでスーパーに入った

あとで聞いたところによると、あまりの唐突な出来事に、U君はそれが美人局(つつもたせ)ではないかとビクビクしていたらしい。
私はそういった危機管理能力に欠けているので、単純にウキウキと楽しんでいた。

手をつないで広大な店内をうろうろし、弁当を私たちに買ってくれた後、彼女たちはどこかへ歩いて帰っていった
連絡先はおろか、名前も聞かなかったと思う。

こうして書いてみるとなかなかインパクトの強い出来事なので、長らくこのエピソードを忘れていた自分に驚いている。

30年も前の話だから、その女子高校生たちももう50歳近くになるのだろう。
彼女たちがこの記事を目にすることになればさらなる奇跡だが、さすがにそこまでの奇跡は起こらないだろうか。

トップ画像引用元:アメブロ/駅兄の駅めぐり旅日記

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