#12. 絵が動くカード
あなたも子供のときにきっと、「絵が動いて見えるシール」で遊んだことがあるだろう。
近年はあまり見かけない気がするのだが、私の目に触れていないだけなのだろうか。
あの技術の正式名称は「レンチキュラー印刷」という。
「lenticular」は「レンズ状の」という意味である。
絵が動いて見える原理についてはあちこちのウェブサイトで説明されているから、ここでは省略する。
私はこのレンチキュラーが結構好きなのだが、世間ではさほど人気が高くないように見えて、寂しく思っている。
レンチキュラー印刷は100年ほど前に特許が出願され、1960年代ごろからポストカードとして普及したらしい。
たしかに現代では「何これ?見たことない!」という驚きはないだろう。
しかし、ホログラムなどと比べても劣らないほど子供にウケそうでもあるし、やり方によってはオシャレなデザインにもなるはずだ。
今日紹介する2点は、いずれもドイツのL.M. Kartenvertrieb社の製品である。
角度を変えると猿の手足や顔が動いて見える。
裏面のデザインもカッコいい。
中央部分の小さい文字を2行で組んでいるところ、バーコードが会社名の「LM」になっているところなどが特に気に入っている。
もう1点は、放射状に描かれた線。
これを店頭で見つけたときに私は「オシャレだな」と思ったのだが、今どきの若いデザイナーのみなさんはどう感じるのだろうか。
以下のサイトのサンプルのように、手法としてはさまざまなアプローチが可能だが、格好良くなるかダサくなるかはセンス次第だろう。
以前、レンチキュラー印刷を使った鉄腕アトムのTシャツがあった。
Tシャツの正面に描かれている鉄腕アトムの絵を違う角度から見ると、内部の機械が透けて見えているかのように変化するというものだった。
私は20代の頃にこの『鉄腕アトムTシャツ』を持っていて、会社にも着ていっていた。
職場の女性たちが「わぁ、かわいい!」などと言うので、私はすっかり好評なものだと思っていたのだ。
その後、その女性たちの中の一人とお付き合いすることになったのだが、あるとき真剣な顔で「いい年をしてみっともないから、そんな子供みたいなTシャツは着ないでほしい」と懇願された。
人間の「本音と建前」の怖さをしみじみと感じた瞬間である。
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