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LCAやPBについて考えるために、原油のことを調べてみた。

世の中がエコだエコだと騒がれてから月日がだいぶ経っていますが、みなさんLCAやらPBといった言葉を聞いたことがありますでしょうか?

LCA(Life-cycle assessment)は主に個別の商品の製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用までの各段階における環境負荷を明らかにし、CO2排出量等の環境負荷を定量的に評価するための算定手法となります。

PB(Pranetaly boundary)は地球の環境容量を科学的に表示し、地球の環境容量を代表する9つのプラネタリーシステム(気候変動、海洋酸性化、成層圏オゾンの破壊、窒素とリンの循環、グローバルな淡水利用、土地利用変化、生物多様性の損失、大気エアロゾルの負荷、化学物質による汚染)を対象として取り上げ、そのバウンダリー(臨界点、ティッピング・ポイント)の具体的な評価を行ったものになります。

なんだか難しいですよね。何をどこから調べてゆけば良いのか分からない人も多いと思います。

私もその一人です。

なので、ひとまずLCAやPBについて調べる前に、身の回りにあるプラスチック製品の原料である原油のことから色々と調べていきましたので、そこから紹介していきたいと思います。

日本の年間原油使用料

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2019年度は1億7,304万kℓの原油を輸入。(そのうち燃料油生産量は1億6,341万kℓになります。)原油を運ぶタンカーは20~30万トン級のVLCC(Very Large Crude Carrier)と呼ばれるタンカーが中心となります。(26万tクラスのタンカーで全長は約330m。およそ東京タワーと同じくらいの大きさになるそうです。) 

日本国内の油田から産出される原油量
年間50万から100万キロリットルになるそうです。2018年度の産出量49.6万キロリットルは、表現を変えれば4億9600万リットル。仮に自動車1台あたりの満タン量を50リットルとした場合、原油から精製されるガソリンの割合を3割とすると約298万台の自動車を満タンにさせるだけのガソリンが供給できることになります。

原油の消費割合

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原油は、製油所でそれぞれの用途に適した石油製品につくりかえられることになりますが、原油は加熱炉で約350℃に熱せられたのち、常圧蒸留装置(トッパー)に送られ、この常圧蒸留装置のなかで石油蒸気となります。その後冷やされ、沸点の低いものから高いものへと順番に、いろいろな石油製品のもととなる基材に分けられます。下記は年度別の生産得率の図になります。

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ナフサについて

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ナフサはプラスチック製品や化学繊維・他の原料となりますが、上記図2019年の9.9%を言い換えるならば、約1620万kℓ分がプラスチック製品の原料となります。

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下記図は日本でどういったプラスチックがどれだけ作られたか・どのような製品になっているのかを表した図になります。このうちポリエチレン23.1%(約375万kℓ)がレジ袋の原料(すべてがレジ袋になる訳ではありません。)となります。

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こうしてみると、レジ袋だけを削減したところで地球環境への負荷が減らないのでは?と思う人もいるかと思います。(ポリエチレン袋の輸入があることも忘れてはいけません。)

では、別の角度から見てみたいと思います。

プラスチックが環境に及ぼす影響

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プラスチックは生活を便利にし、豊にしてくれています。そう言った意味では有用な発明であることは確かなのですが、大量生産・大量消費することで、環境に大きな影響を及ぼしていることを私たちは理解する必要があります。

その1〜二酸化炭素

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石油由来であるプラスチックは水素と炭素を主とする化合物になります。水素や炭素といった言葉だけをみれば特に危険な物質だという感覚を持つ人は少ないと思います。しかし、この化合物を燃焼させると二酸化炭素が発生します。二酸化炭素はみなさんご存知の通り温室効果ガスの主な気体といわれています。大量に燃焼させることで二酸化炭素が大気に大量放出されることになります。

その2〜自然界で分解しない

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もう一つの問題点として、石油由来であるプラスチックは自然界で分解ができないことにあります。レジ袋などのプラスチック製品のポイ捨てや不法投棄によって、陸地だけでなく風に飛ばされ河川に流され海にたどり着いた場合、広く深い海洋に漂い続けたりどこかの国の海岸に大量に流れ着くことにもつながります。分解されずに海をただようプラスチックやその破片は、それを餌と間違えて食べてしまう海洋生物を死に追いやることにつながります。また近年では5mm以下になったマイクロプラスチックは海洋生物の体内に取り込まれた後、人間の体内にも取り込まれる危険性(発癌性・化学物質過敏症・内分泌錯乱作用を引き起こすなど)があるとニュースになっています。

マイクロプラスチックのもとになる5大プラスチック

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プラスチックの種類は100種類以上で、生活用品などに使われる5大プラスチックは生産量のおよそ75%を占めています。

①ポリスチレン(PS):食品トレー・ハンガーなど
②ポリエチレン(PE)
 ・高密度PE:バケツ・洗剤ボトル・屋外玩具など
 ・低密度PE:レジ袋・ラップ・紙パック飲料などの内面など
③ポリ塩化ビニル(PVC):クレカ・ホース・水道管・合皮など
④ポリエチレンテレフタラート(PET):ペットボトル・卵パック・包装フィルム・衣類など
⑤ポリプロピレン(PP):ストロー・ペットボトルキャップ・文具など

環境負荷が少ないプラスチックって?

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こちらも近年レジ袋などに記載されていたりしますが、環境負荷を抑えるために様々な企業が新たな原料からレジ袋やプラスチック製品を製造しています。みなさんは「バイオプラスチック」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

下記図はいわゆるプラスチックと呼ばれる素材についての分類図になります。
左下にあるのが従来の石油由来のプラスチックになります。これは非生分解性といわれ、自然界で分解が出来ない素材になります。縦軸のバイオマス由来と書かれた部分に注目すると、左側に非生分解性でバイオマス由来のプラスチック類のカテゴリーがわかります。

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このようにバイオプラスチックと聞いただけで、石油由来では無いから環境への負荷が減るんだろうと思ってしまう方も多いかと思います。確かに製造過程での環境負荷は減ると言えるでしょう。しかし、使用した後はどうでしょうか?図を見てもわかる通り非異生分解性のプラスチックは分解されることなく残り続けてしまいます。

海洋プラスチック問題

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既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックゴミの量は1億5000万トン*と言われています。
 * McKinsey & Company and Ocean Conservancy (2015)

そこへ年間800万トンものプラスチックゴミが流入していると推定されており、海洋ごみの影響によって魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしています。このうち実に92%がプラスチックの影響、例えば漁網などに絡まったり、ポリ袋を餌と間違えて摂取することによるものです(※3)。プラスチックごみの摂取率は、ウミガメで52%(※4)、海鳥の90%(※5)と推定されています。*
*WWFより:https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

400億枚のレジ袋と227億本のペットボトル

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日本のプラスチック生産量は世界第3位となり、1人あたりの容器包装プラスチックゴミの発生量は世界第2位。国内で年間に流通するレジ袋は推定400億枚、ペットボトルは227億本に達するそうです。

新型コロナで増えるプラスチックごみ

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レジ袋削減が呼びかけられ、2020年7月から小売店に義務付けられたプラスチック製レジ袋の有料化。結果としてレジ袋の購入を辞退する客の割合は、有料化前と比較して40%増の約76%(およそ4人に3人)はレジ袋を買わなくなったそうです。

しかしフェイスシールドや間仕切りの多くはプラスチック製であり、マスクをはじめとするさまざまな医療用機材についても、病原菌が付着している可能性があるのでほぼ使い捨てされることになる。また巣篭もり・リモートワーク の需要が高まりテイクアウトやデリバリー商品が増えることで、プラスチック容器などの包装類も増えているとのこと。

本当に調べ始めると、気になることが雪だるま式に増えていくので収集がつかなくなってきますね。

いかがでしたでしょうか?

デザインをする立場の人間として何か出来ないものか?と考えているので、また色々と調べたことを共有しつつ、何か行動を起こすきっかけづくりが出来ればと思います。

ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございます。


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