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『この、あざやかな闇』補稿(2)

(ヘッダー画像:ロサンゼルス市スキッド・ロウ5thストリート、Googleストリートビューより)

スキッド・ロウといえばロックバンド――ぐらいの認識しかなかったわたしは、本書と出会って言葉を失いました。小便にまみれた巨大な十字架、あちこちで商売をするドラッグ・ディーラー、ブルーシートのテントの波、また波。

地名の調べ物のためGoogle Mapを開き、何の気なしにGoogleストリートビューを立ち上げたわたしの目に真っ先に入ってきたのが、今回の補稿でヘッダーに使っているブルーシートのテントでした。テントが少しずつ間を置いて張られている理由は、本書で詳しく述べられています。

チャーリー・“アフリカ”・クネインはカメルーン生まれ、紆余曲折を経てスキッド・ロウにやって来ました。何より身のこなしが優美で、読書家で、ときおりハムレットの一節をそらんじるインテリとして、まわりの人たちから愛されていたチャーリー。アフリカから来た、フランス語のイントネーションで話す英語がチャーミングだったチャーリー。スキッド・ロウでもお気に入りの場所にブルーシートのテントを張り、穏やかな日々を送っていました。

2015年3月1日。

(New York PostのYouTubeページより。音が出ます)

警察の職務質問を受けたチャーリーは、彼から「バットで殴られそうになった」と誤解した警官に射殺されます。上の動画は警官2名が装着していたボディカメラの映像ですが、警察がこの動画を公開したのは、チャーリーの死から3年後のことでした。

チャーリーの死に抗議する人々がロサンゼルスで抗議デモを行い、14人が逮捕されました。抗議の輪はSNSへと広がり、 #BlackLivesMatter のハッシュタグをかかげた投稿が注目されるようになります。

ジェフ・シャーレットは長期取材を敢行。スキッド・ロウでの“アフリカ”ことチャーリーだけではなく、彼の家族から幼少期の話も聞いています。アメリカに来た理由も、カメルーンに帰れなかった理由も。

チャーリーが亡くなってもうすぐ8年。先日もメンフィスでタイリー・ニコルズが地元警官から激しい暴行を受け、亡くなっています。タイリーの事件でも警官のボディカメラ映像が裁判の証拠として提出されているとのこと。

『この、あざやかな闇』駒草出版より2月17日発売。


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