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尋常小学唱歌「牧場の朝」で思い出す、Nさんのこと

先日、ある施設でお世話になったスタッフさんに再会した。

この施設では、昨年暮れまで約6年間「歌声広場」のイベントを開催させて頂いていたのだった。。

「あの節は、とてもよくして頂いてありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ、楽しい時間を皆さん楽しみにしていらしたのに、先生にお会いできなくなって残念です。 
そうそう、Nさん、覚えてらっしゃいます?
つい先日お亡くなりになったんです」

そうなんだ・・・。


Nさん・・最初から参加してくださっていた。
車椅子が いっぱいいっぱいかな、と思うほど恰幅の良い女性だった。

いつもにこやかで、大きな声で歌ってくださって。

私から、皆さんへの語り掛けの折には
「Yes!!」 
「Beautiful !!」
「Of course !!」 などと、なぜか英語で答えて下さることが多く、

あるとき、いつも一緒に付き添って下さるお嬢さんに聞いたことがある。

「海外経験とか、おありなんですか?」
「いいえ、全く。でも なんか英語が好きな母でした」
なんとなく、ほほえましい。


9月の歌のプログラムに「牧場の朝」という歌を入れている。

もちろん、私は知らない歌だったが、皆さんには馴染の深い歌。
色々調べると、、、
昭和8年の尋常小学校唱歌、
福島県の牧場にオランダから乳牛ホルスタインが輸入され、記念に友好の『鐘』も贈られたのを記念して作られた歌。
歌の最後に、『鐘がな~る、な~る、か~んか~ンと』とある。

歌う前に、こんなお話をしていた。
「オランダからホルスタインという牛が日本にやってき・・
「Holstein!!」
Nさんの 大きな声が響いた。
(カタカナでしゃべっていたから、発音を訂正してくださったんだな)

ある時、参加者の中にNさんの姿を見なくなった。
高齢者施設だもの、入院とか、転居とか、最悪は・・・。
敢えて、スタッフには尋ねないことにしている。

数か月経ち、
(あっ Nさん!)
以前とは全く違い、やせ細った身体が車椅子から落ちそうだった。
意識レベルも低そうだ。
生気がない。
いつも振ってくださっていた手も、もう上がることはなかった。

でも、でも、
私のピアノの前奏が始まると、
急に天井を見上げ、歌い始めた!!

お嬢様と目と目で会話したのは、
「歌っている! 歌っているわ!」


Nさん、よく頑張られましたね。


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