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現代日本を舞台としたファンタジー「レオの火消し」を連載中。 野生動物の能力を使える「発…

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現代日本を舞台としたファンタジー「レオの火消し」を連載中。 野生動物の能力を使える「発火者」を巡るアクションファンタジー。

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レオの火消し

1 発火者による犯罪件数の増加、政府の対応は スマホに映るニュース記事を男は無関心そうに眺めていた。 間接照明がオシャレに配置されたリビングは最小限の家具しかない。 男は静かに高級革のソファーに腰掛け持っているスマホに向かって呟く。 「犯罪ばっかり取り上げて、もっと明るいニュースはねーのかよ」 金髪を少しかき上げると、男は短い溜息をついて飽きたようにスマホをそのまま横に置いた。 リビングの窓からは曇りがかった夜空が見え、微かに電車の音がする。 殺風景なリビングには少しの観

    • レオの火消し(8)

      8 「ところでレオ、火消しを使えるのは結構なんだが、お前喧嘩の腕前はどうなんだ。」 松尾は少し疑いの眼差しを作り、レオに聞いた。 「松尾さん、バーの一件でレオの発火を見ました。発火種はヒョウでして、高速で移動し、知覚器官も強化出来る様です。」 柳が少し自慢げに松尾に報告するなか、レオは嫌そうに目線を逸らす。 「そうか。まぁ、裏稼業でそれなりに活動してた奴だ。少しは実力があるんだろう。」 松尾は柳の報告を聞くと納得したような様子でそう言うとまた少し上を向いた。 「じゃあ明日の

      • レオの火消し(7)

        7 「ハッハッハ!」 松尾の笑い声が高らかに響き、発火光が静かに収まった。 レオは状況が飲み込めておらず、額に薄い汗をかいていた。柳はまたか、といった様子で安堵のため息をつく。 「松尾さん、、やめて下さいよ、、、あなたの発火を止めるのは一苦労なんですから、、、」 柳はため息をつきながらソファの後ろに寄りかかった。 「ビビったかレオ?まぁ、八足のシマを荒らした事の処分は少し考えよう。それよりお前に頼みたい仕事があってなぁ。」 松尾は葉巻を灰皿に置いて、少し顔を引き締めた。レオ

        • レオの火消し(6)

          6 バーからそう遠くない商業ビル。 赤坂見附に数ある商業ビルの中でも、一際目立つ21階建てのオフィスビルの最上階の入り口にレオとバーテンダーは立っていた。 入口の前にはスーツに身を纏った厳つい男2人が立っている。 「柳(やなぎ)さん、お疲れ様です。ボスがお待ちです。さぁ、どうぞ」 男の1人は丁寧に挨拶をすると、ドア横のセキュリティパネルに暗証番号を素早く打ち込む。 するとドアがゆっくりと開き、広い応接間が見えた。 レオと柳は静かに部屋に入る。 部屋には独特なパターンが描かれ

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        レオの火消し

          レオの火消し(5)

          5 コートの男の手からポォっと薄緑の光が放たれ、ニワトリ男の頭を包み込む。 すると変化したニワトリ男の体はゆっくりと元の人間の状態へ戻り始めた。 気を失っているが、もうニワトリの特徴は完全に消えていた。 「よっし、終わり。」 コートの男はふっと息をつくと、全身から薄緑の光を放ち、元の人間の姿に戻った。 ニワトリ男をゆっくりと担ぎ、近くに置いてあるコートを掴むとバーの出口へ歩き始めた。 「おい、バーテン。もう出てきていいぞ。悪いな、店壊しちまって。まぁ、壊したのは俺じゃないけ

          レオの火消し(5)

          レオの火消し(4)

          4 コートの男はしゃがんだまま集中を始めると、あたりにふわっと風が吹く。 両足の周りから鈍い赤い光が放たれ、光は渦を巻きながら両足に絡みつく。 ニワトリ男は少し動揺しながら、コートの男へ攻撃する機会を伺っている。 コートの男の目からも同じ赤い光が漏れ出し、目の形状が変化し始めた。 猫のような丸みを帯びた目に形が変わり、赤い光が徐々に収まるにつれ、黒目がはっきりとニワトリ男を捉えている事が分かる。 足も形状が変化し始め、スネのあたりから黒のジーンズが破け始める。 破けたジーン

          レオの火消し(4)

          レオの火消し(3)

          3 「み、見るなぁ〜っ!」 ハイボールの男は咄嗟にまくられた袖を隠そうとする。赤らめた顔と吹き出した汗が男の焦りを表す。 男の袖の下にはうっすらと羽毛の形状に似たものが腕の皮膚の下から浮き出ていた。 肘から手の方向に形状はくっきりと大きくなっており、まるで魚の鱗のように形作っている。 男の腕を見た黒いコートの男はニヤリと笑う一方、長身のバーテンダーは顔色を変えないが、目は変化した腕を注意深く観察していた。 「へぇ、鳥か。珍しいな。まぁ、見た感じニワトリってところか。」 そう

          レオの火消し(3)

          レオの火消し(2)

          2 薄暗いバーのカウンターに置かれたハイボールの氷がカランっと鳴った。 80年代のジャズが流れている店内に座っているのはくたびれたスーツを着ている40代前後の男だけ。 男は虚な目をしながら少し上向きで顔を赤らめていた。 「はぁ、、今月もダメか、、」 ハイボールを少し飲むと男はぐったりと肩を落とした。 目の前には長身のバーテンダーが束ねた長髪を触りながら客の様子を伺っている。 「何かお困りごとでも?」 バーテンダーは愛想良く客に話かけるが、目は男の挙動を細かく観察している様子

          レオの火消し(2)