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【清水由起のデータから読み解くギフト事情 vol.5】旬のグルメギフトを贈るイベントへ進化する「中元・歳暮」


フォーマルギフトにおいても注力度の高いオケージョン

中元・歳暮は、日頃からお世話になっている方々に感謝の気持ちと健康を願う気持ちを物に託して伝える日本古来の風習である。
そのため半年に一度、年の真ん中である夏の挨拶として中元、一年の最後を締めくくる挨拶として歳暮が存在している。


コロナ以前は、儀礼的なフォーマルギフトの縮小傾向や中心顧客の高齢化の影響で、中元/歳暮市場ともに年率3~4%程度の縮小傾向が継続していた。コロナ禍の2020年、2021年は「帰省暮」なる言葉が生まれたように、パーソナル需要での特需的な要素、虚礼廃止傾向に拍車がかかった法人需要での大幅縮小が見られ、例年とは違う様相を呈した。

人流が戻り出した2022年以降は、パーソナル需要における儀礼要素はダウントレンド、プレゼント要素や自家需要はアップトレンド、法人需要では持ち直し傾向が見られている。

1:この季節にしか味わえないグルメギフトを強化

中元・歳暮は、儀礼的なギフトという位置づけであったため、これまでは何を贈るかよりも贈ること自体が重要視されていた。洗剤やタオル、乾物、食用油など日持ちの良いもの、相手の趣味嗜好に左右され難いものを中心に、毎年同じものを贈る傾向が強かった。しかし、人付き合いに対する志向の移り変わり、虚礼廃止の風潮が広まるなか、儀礼的な意味合いの強い中元・歳暮を贈る機会が減っている。

こうした状況を受け、5~10年ほど前から、「中元」ではなく「夏ギフト」、「歳暮」ではなく「冬の贈り物」などと呼称し、「この季節にしか味わえないグルメ」を贈るイベントとして位置付けることで、儀礼的な印象を和らげてプロモーションする事業者が多く見られている。こだわりのグルメギフトを、親しい人たちで贈り合ってもらうプロモーションが強化され、また、誰かに贈るためだけでなく自家需要も含めたギフト需要を掘り起こす取り組みも行われている。

こうした地道な取り組みが奏功したこともあり、親族や友人など親しい人に対し、相手が喜ぶものを贈りたいという人が増えている。むしろ、流通各社が「こだわりギフト」を強化するため、「贈りたい」と思える魅力的な商品がこの時期にラインナップされ、購入が拡大しているとも言える。

2:儀礼需要は値上げが打撃、親しい相手には高額品好調

このように、中元・歳暮は、他のフォーマルギフトオケージョンより参入各社の注力度が高いことからも、贈りたくなる商品開発、自宅に取り寄せたくなる商品開発、贈りやすい環境が整っていると言える。とはいえ、定番品の売上状況や百貨店の顧客動向から推察すると、いまだ商戦の7割近くは儀礼要素で購入されていると考えられ、こうした需要では、昨今の値上げの波は売れ行きに大きく響き、贈り主の高齢化や贈り先の高齢化による自然減といったマイナス環境に拍車をかけることは間違いない。

自家需要を含めて親しい人にこだわりのグルメを贈るニーズでは、高価格帯の商品の動きが良いことも明らかな傾向となっていることから、こうした儀礼需要の減少をカバーすべく、購入してみたくなるような心に響く理由付けが今まで以上に求められている。


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