日本は何故アメリカと戦争したのか?(15)改めて石油禁輸は何だったのか?その1・それは日本が昭和16年に開戦すべき理由のひとつに過ぎなかった

 戦後の日本では、「アメリカは、石油を禁輸することで、日本を戦争に追い詰めた」という主張がある。しかし実のところ、日本がアメリカとの戦争を決定したのは総合判断からだ。石油の禁輸は、その理由のひとつでしかない。だから、日本は石油を禁輸されなくてもアメリカとの戦争に踏み切っていただろうと推測できる。現実に起きなかったことなので、断定までは出来ないが。
 ここは簡単に。陸軍参謀本部作成『帝国国策遂行要領ニ関スル御前会議ニ於ケル質疑応答資料』の一部抜粋↓(原書房『杉山メモ 参謀本部編 上』P323より)。

六 戦争準備ヲ十月下旬目途トセル理由如何
目下ニ於ケル帝国国力及戦力ノ隘路カ油ナルハ多言ヲ要セス而シテ帝国ハ目下貯油ヲ逐次消費シツツアリテ此ノ儘ノ姿勢ニテ推移スルトシテモ其ノ自給力ハ今後多クモ二年ヲ出テス大ナル作戦ヲ行へハ此ノ期間更ニ短縮スヘク時日ノ経過ト共ニ帝国ハ武力的ニ無力トナリ戦争遂行力ハ低下スヘシ
一方米国ノ海空軍ハ時ヲ逐フテ飛躍的ニ向上シ南方ニ於ケル米英蘭ノ防備ハ逐次増強セラレ従テ時ノ経過ト共ニ作戦的二益々困難ノ度ヲ加フルノミナラス来年秋以後ハ米国海軍軍備ノ充実ハ帝国海軍力ヲ凌駕シテ遂ニ戦ハスシテ米英ニ屈従セサルヘカラサルニ至ルヘシ
他方北方ハ気候ノ関係上冬期大ナル作戦ハ彼我共ニ至難ナルヲ以テ此ノ期間ニ於テ速ニ南方ノ主ナル作戦ヲ終リ明年春以降北方ニ対シ用兵上ノ自由ヲ保留スル為ニモ成ルヘク速ニ戦争準備ヲ完整スルコト必要ナリ
之レカ為今ヨリ直チニ戦争準備着手スルモ動員、船ノ徴傭、艤装等ヲ行ヒ且長遠ナル海上輸送ヲ以テ戦略要点兵力ノ展開ヲ完了スルハ十月下旬頃ナリ

(補足説明。当時の日本は、ソ連が日ソ中立条約を守るとは、さらさら思っていなかった。だから日本は、ソ連の対日参戦を常に警戒していた。逆に日本も日ソ中立条約を遵守するつもりはなく、好機が来たらソ連を攻撃するつもりだった)。

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