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【詩の翻訳】赤い屋根/アルノー・ホルツ

赤い屋根

僕は小さな、18歳の若者で、
顎を両方の拳にうずめて
腹ばいで寝っ転がって、
天窓から覗いてる。
僕の下に、傾斜のきつい中庭が。
僕の後ろに、放り投げられた本が。
フランツ・ホフマン……『奴隷狩り』……
なんて静かなんだ!

ただ向こう側にある木の節の雨どいの中で
麦わらを取りあって言い争う二匹のすずめと、
のこぎりをひく一人の男と、
そのあいだで、はっきりと教会からこちらへ、
少し間を置いて、規則正しく、トントン打っている、
銅細工師のティール。

僕が下の方を見下ろすと、
ちょうどお母さんの植木鉢の台が見える。
ウォールフラワーが一鉢、ストックが二鉢、ゼラニウムが一つ、
そしてその真ん中に、小さな葉巻箱の中で優美に、
モクセイソウが一群れ。

その香りといったら!僕のところまで走ってこい!
そして色!いま!いかに風がそれを越えて吹くことか!
素晴らしく、素晴らしく美しい色!
僕は目を閉じる。まだ色が見えている。

Arno Holz: „Rote Dächer“, Hrgb. von Ernst Meyer-Hermann[u.a.], Deutsche Gedichte für die Hauptschule, Frankfurt a. M.: Diesterweg,1966, S.37

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