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【詩の翻訳】ある少年の夏/カール・クローロ

ある少年の夏

よく彼は丸めた足の指でさりげなく
謎めいたしるしをいくつも砂に描いた。
硬い実のなる茂みやスピノサスモモの木の中で
夏鳥が追いかけっこをしていた。彼の褐色の手は

丈夫な枝を曲げて釣竿にし、
葦から明るく響くフルートを切り取った。
夜には星々が冷ややかに彼の血の中でざわめき、
脆い夢々が転げ出てきた。

野いちごが彼のために口もとで熟れた、
彼がたわわな生垣から野いちごを取れないときには。
急足の雲は彼と同盟を組み、
草原からは大きな鳥と小さな鳥の鳴き声がした。

彼は裸で川を泳ぎ、少年の腰は
甘く、葦の緑色をした光で照り映えた。
塵と二番刈りの干し草の匂いが混ざり、
あたたかい風がもやのようなそれを漏らすことなく運んでいく。

彼は嵐が好きだった、短いにわか雨が、
パラパラと乾いた葉の中へ突き進み、
ラズベリーと同じ赤い夕暮れ、
つるべ落としの夜が影を引き連れて彼を包むとき。

たまにだけ、両親が彼を呼ぶときに、
彼は驚いて飛び上がる。自分の名前がなじみなく思える。
彼はそれが汗のように首すじからしたたるのを感じ、
きまり悪そうに自分のぼろぼろのシャツを見る。

Karl Krolow: „Sommer eines Knaben“, Hrgb. von Ernst Meyer-Hermann[u.a.], Deutsche Gedichte für die Hauptschule, Frankfurt a. M.: Diesterweg,1966, S.38-39

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