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【詩の翻訳】古いたんすの総ざらいのときに/クリストフ・メッケル

古いたんすの総ざらいのときに

今日僕らは見つけた、古い戸棚の
引き出しを片付けているとき、出て行った家族たちの服を、
シルクハットを、フロックコートを、礼拝とお祭りにいくための
ニスの塗られたオーバーシューズを、
軽騎兵の、竜騎兵の、消防士の色鮮やかな制服を、そして思った、
古き良き時代を、無感動に。

僕らは服をバルコニーに吹く風の中へ掛けた、
うやうやしくではないが、しかしなんの
敬意もないわけではなく、いささか困惑して——
苦い感情もなく笑いながら、こう考えて。
今日生きている僕たちが、
のちの人々の驚きに少なからず奇妙な要素をもたらすだろうと。

Christoph Meckel: „Rote Dächer“, Hrgb. von Ernst Meyer-Hermann[u.a.], Deutsche Gedichte für die Hauptschule, Frankfurt a. M.: Diesterweg,1966, S.38

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