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若者の「ありがとうございます」について考えた

最近、比較的年齢の若いお客さん(僕が言うのも変かな??)に、ちょっと不思議なというか、昔の僕らなら、使わなかったような言動が見受けられるので、ちょっと考えてみたいと思う。

いえ、決して悪いことではないです。

むしろ良いことなのですが、

それは、

お酒などを運んで行って、お出しする際に、逐一、

「ありがとうございます」

と、言っていただけるのだ。

これって、僕らが昔、飲み屋に行った際には、あまり使わなかった言葉のように思う。(僕の周辺だけかな??)

うちの店がオープンした頃も、こういった言葉って、とくに若い子の間ではそう聞かれるものではなかったように思う。

そうだな、ここ数年、いやここ2〜3年のことのような気がする。

最初は、うちの店に来店される若い子達が、とくべつ品が良いのだろうと、密かに悦に入っていたのだが(笑、どうも来る子来る子、似たような言動をされるのだ。

僕らが学生、あるいは新社会人の頃って、飲み屋に入ると、むしろ「若いからって馬鹿にすんなよ」的な、生意気な態度をとる輩もいたように思う。

ところが、今の若い子達って、皆すごく礼儀正しくて、ごく自然に「ありがとうございます」と言ってくれるのだ。


こちらこそ「ありがたい」話なので、あまり深く考える必要などないのだが、どうもお金を頂く側として、奇妙な感じがするので、僕なりに考察をしてみた。


思うに、


ちょっと怖い話なのだが、


もしかすると、今の子達って、飲食店(とくに彼ら世代が行くような、決して高級とは言えない飲み屋などでは)であまり「良い体験」をしていないのではないだろうか。


とかく、人手不足と言われている「飲食」業界である。業界の人間として情けない話だが、そうそう優良な人材ばかりが集まるとは言えないのが現状かと思う。

なかには、人数確保のために、無理に働いてもらうことになった者もいるかと思う。

そんななかには素行に問題のある者もいるのではないか。

そんな店員に、虫の居所が悪かったかどうか知らないが、ぞんざいな対応をされて、嫌な思いをしたりした経験があるのではないだろうか。

あるいは、そういった対応を「恐れて」いるのではないだろうか。

とかく今の情報社会では、様々な知見が溢れていて、若者の間では、「成功」よりも「失敗をしない」ことが重要視されていると聞いたことがある。

せっかく調べて友人と入った飲食店で、少なくとも「失敗をしない」ために、従業員に対する最低限の気配りとして、とりあえず「ありがとうございます」と言っているのではないだろうか、と思うのだ。

店員には、できればこの時間だけでも、機嫌良く働いてもらおう。

それには、とりあえず「ありがとう」と言っておこう。

そんなある種の「保険」のような言葉に思えてならないのだ。


もし僕のこの推察が当たっているとしたら、とても残念な気がする。

(いや、別に必要以上の過剰な接客をすべきと言っている訳じゃありません。僕もそんなことはしたことがありませんので。)


僕も学生時代に数多くのアルバイトを経験してきた。もちろんその中には飲食店も含まれている。こちらは見習いアルバイトだったし、大人の客からは明らかに舐められ、見下されていると感じるようなことも少なくなかったと記憶している。
ただ、そんな中でも、今でも印象に残るような、丁寧な応対をしてくれたお客さんって、はたから見ても身なりも良く、物腰も柔らかで、今で言うところの、いわゆる「成功者」といった風貌をしていたと思う。

だが、それも今にしてみれば、僕のような若い新米の従業員に、無礼な対応をされて、貴重な時間を台無しにされるのを避けるために、とりあえず愛想を良くしておいてくれたようにも思える。


「目下の相手にはむしろ礼を尽くして」

は、

上に立つものの「定石」なのだろう。


今の若い子達の「ありがとう」は、

当時の成功者の「ありがとう」とは、

必ずしも一致するとは限らないかもしれないが、


飲食に携わる人間として、自分がどう思われているのかを振り返ってみるのも、


一考だと思っている。


神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。

考えすぎかな。こちらこそ「ありがとうございます」。

お待ちしております。


everything you say (Original Mix) / mommy x philanthrope feat. Kyle McEvoy
Chill hop music
2018

(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)

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