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【天気の子】weatherの意味

新海誠の最新作『天気の子』の英語タイトル(副題)は、『Weathering with you』。
映画のオープニングシーンでこの英文を見たときは「ん? 」と思ったけど、weather には天気(名詞)のほか、 「切り抜ける」や「乗り越える」(動詞)という意味があることを知り、納得。

weatherは、この物語の肝である。
前作『君の名は。』は「救いの物語」だったけれど、今作は「救われない物語」。
もう誰かの力で世界を変えることなどできない。そんなところまで、この世界は狂ってしまった。

降り続く雨のシーン。それは狂った世界のメタファーとして、冒頭からやや執拗に描写される。
気候変動はもっともわかりやすい天からの警鐘だ。
日本をはじめ世界各地の異常気象を思い起こせば、映画の中だけの話ではないかもしれない。一抹の怖さを感じながら、物語に引き込まれていった。

1人の犠牲か、1000万人の幸福か。
降り注ぐ陽の光か、止むことのない雨か。
主人公の少年・帆高は、「世の中の人々」ではなく「個」の幸せを選択した。人柱となった「100%晴れ女」の少女・陽菜を命がけで取り戻す。

その結果、太陽が消え、東京は水没した。
帆高の選択は正しかったのか、間違っていたのか。この問いに答えるのは難しい。判断は、観るものに委ねられている。
ここでカギとなるのは、正解ではなく、自ら選択する、という行為である。
自分の意志で選んだから、良いも悪いも受け入れて、乗り越えることができる。

映画を見た直後は、陽菜を救った帆高がラストに言うセリフ、「大丈夫だ!」が理解できず、モヤモヤしていた。
でも、weatherの意味を知り、モヤモヤが溶けていった。こんな世界でも自分たちが選んだのだから乗り越えられる。「大丈夫」、そう思いたい気持ちの表明なのだと思った。
自ら生き方を選び取り、「大丈夫」と言い合える相手(with you)がいれば、人は強くなれる。狂った社会でも何とか生きていける(weather)。

救われない世界を描きながら、悲壮感ではなく一縷の希望を与える結末。これもまた、観る人によって感じ方は違うと思うけれど。
ストーリーの展開も「天気」の気分引き出す映像も、新海誠監督の面目躍如だと思った。
オバサンは、『君の名は。』より『天気の子』派である。


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