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機械で音と気分を変えてみる

 僕にとってエフェクターは最高のおもちゃです。ものすごく乱暴な言い方をすれば、ベースという楽器の性質上エフェクターは必需品ではありません。良いベースと良いアンプ(レコーディングならば良いDIも)があれば、大抵の音楽・楽曲におけるベースというパートの役割はおおよそ果たせてしまうのが実際のところです。もちろん“大抵の”と付けたように、エレキベース本体の音だけでは事足りないケースもあります(演奏したい曲のベースがゴリゴリのシンセだとか、ブロステップのワブルベースを人力で再現したいとか)。本来的にはベースにとってエフェクターという機材は、そういう例外的なケースに対応する際に導入するオプションだと言えます。が、だったら平時には不要なのかと問われれば僕は絶対にノーだと答えたい。理由は単純で、あると楽しくなるから。楽しさはモチベーションに繋がり、モチベーションが日々の演奏を継続させてくれます。楽器演奏というスキルはある程度長期的に継続することで発達していくものなので、飽きたり気持ちが折れてしまうことが最大の敵です。もちろん演奏者の数だけモチベーションの形はあって、愛機をただ演奏しているだけで楽しくて、毎日自分の欠点や課題と向き合えるという人もいます。他人と一緒に演奏することが最大のモチベーションになるという人もいます。しかしそうではない僕のような不真面目な人種にとって、エフェクターというのは一度途切れかけたやる気を再度演奏に向かわせてくれるエナジードリンクのような存在なのです。
 なんで切れかけたやる気がエフェクターで復活するのかといえば、自分の出してる音が自分の技術とほぼ関係ないところで大きく変化するからです。いや、正直あんまり変わらないやつもある。そういうやつは後々真価を発揮してくるからそれはそれ。僕のような凡人は楽器とにらめっこしながら練習していくうちに「あれ…なんか上達が止まったかも…」という瞬間がある日突然訪れ、主観的な停滞期に陥ります(客観的に見て停滞しているかは正直関係なく、あくまで主観的なのがポイント)。この自分が停滞してるという意識はものすごい速度で飽きへと繋がるので、これを打開できないと楽器屋の店頭であんなに輝きを放って見えたはずの愛機がものすごい速度で押し入れの肥やしと化すことになります。最も理想的な打開策は、めげずに練習を続けて出来なかったテクニックを身に付けたり、弾けなかった曲を演奏できるようになることですが、RPGのレベルアップのように、定められた条件を達成すれば必ずスキルが身に付くというわけではないのが、こらえ性のない人間にとっての楽器演奏のしんどいところ。とはいえ継続以外に成長の道は無いので、たとえ錯覚でもいいから昨日までの自分と比べてなんらかの変化を体感するのが、続けていくうえでは非常に重要だと僕は思います。そのためにエフェクターで一度アホみたいに自分の音を加工してみることは、その場しのぎと言われようが、楽器を触らなくなるよりも100倍建設的な行動です。アホみたいに加工した音を聴いて湧いてくるアイデアやインスピレーションも存在するので「あ…なんか飽きてきたかも」と思ったら楽器屋へ行って気になるエフェクターを片っ端から試してみるのも成長への立派な努力だと思います。少々のお金でモチベーションが買えると思えば安いもんですよ(この文章は半分ぐらい過去の自分の行いを正当化する目的で書いています)。
 そんなわけで僕がこれまで金で買ってきたモチベーションたちを紹介します。平たく言えば機材自慢です。ベースに限らず何か楽器をやってる方は、ぜひ僕のこの有様を見て、一緒に内なる物欲の誘惑に屈してください。

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 2020年現在、僕は4種類のエフェクターセットを使用しています(実際によく使ってるのは2種類ぐらいです)。必要な場面に合わせて使い分ける目的もありますが、自分でエフェクトボードを構築してみたかったというのが手を出した動機の7割ぐらいを占めています。まずは最小構成のやつ。

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 Xotic Bass BB PreampとKORG Pitchblack Advanceだけのシンプル構成。ベースのケースひとつだけで移動しなきゃいけないときにケースのポケットに入れて持ち歩きます。電源もACアダプターから直で分岐させてるだけですが、BBプリアンプをボルテージダブラーで15V駆動にしてるのがせめてものこだわり。歪みが必要ない時には更に減量してチューナーのみになります。

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 小さい面積のボードですが、ライブではたぶんこれを一番よく使っています。E.W.S.のTri-logic Bass PreampⅢで基本の音色を作り、スラップなどでピークを抑えたいときにWAXX LMB-3を使い、歪みは自分の位牌にしたいぐらい愛してるビッグマフ、チューナーは精度と反応速度がべらぼうに高いSonic Research。可搬性と機能性を両立させて組めたと自負しているお気に入りのボードです。

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 曲ごとに全く違う音色が必要になったりして小ボードで対応できないときはBOSSのGT-10Bを使います。生産終了して久しいモデルですが、現在でも十分に通用する機能性と使い勝手を持つベース用マルチエフェクターの名機です。ただ重いのでMUSIC WORKSのリュック型のボードケースで持ち運んでいて、これがなかったら手放してたかも。渾身の音色が作れた時にパッチネームを自由につけられるのがナイスです。

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 最後に最も金がかかっていて最も使い道がないのがこちらです。この構成に落着するまで数回の内容変更を経て昨年完成したクソデカボード。でかくて重くて可搬性は最悪で、電源もタップ3口も使う大飯食らい。しかし困ったことに音は最高(自分にとって)だし音色のバリエーションも多彩という趣味性全振りの一品。ここまでやってライブでの使用回数はなんとゼロ。パッチケーブルも長さを測って全部自作したけどもう二度とやりたくない。左半分のエフェクト類を使わないときはスイッチャーで全部バイパスして回路内がBOSS GE-10だけになるスッキリ仕様なので、音質の変化をチクチク気にする神経質バカ(僕です)も安心の構成になっています。繋いだだけでむっちり太い音になるGE-10マジ最高。正直これが組み込みたくて今の構成になったと言える。譲ってくれたサワダさんマジありがとう。

 日頃練習しててなんか飽きてきたなぁと思ったらこれらを引っ張り出してきて下品な音をビービー出しながらイーッヒッヒッヒ!とかはしゃいでると失ったやる気が戻ってくるので、エフェクターは僕にとっては趣味と実益を兼ねた欠かせないおもちゃです。収集する欲望も満たしてくれるし。他にもレコーディングなどで単体で使うものもありますが、やっぱりきっちり組んだボードは踏むときの気分の盛り上がり方が違います。楽器1本、シールド1本だけで自分の腕前を磨くことが大切なのは当然ですが、それはそれとして便利な道具やテクノロジーが存在しているなら活用しないのは損だと思っているので、今後も行き詰まりを感じたらどんどんエフェクターを買ってどんどん踏んづけていきたい所存です。


#学園祭学園 #ユートピアだより #楽器 #ベース #エフェクター

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