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比較的読んだ(2024.01~02)

年明け早々、餅つきのために高尾山に登って、ついでに今年はじめてのおみくじを引き、見事にを出しました。
びっくりするくらい、いいことが一つも書かれてないおみくじだったわけですが、ふと御参りする前に引いたせいかもしれないことに思い当たり、おみくじを結び付けた後に御参りして、おみくじの内容を帳消しにしてもらえるように念押ししてきました。マッチポンプでは?

↑という書き出しを書いてからはや一か月弱。あまりにも忙しくてこのnoteを公開するのを忘れてました。その間にもあれこれ読んだり見たりしたので、そこをちょこっと足しました。


映画

PERFECT DAYS

役所広司がカンヌ男優賞取ったというあの映画。
現代日本の東京の下町で晴耕雨読を体現する公衆トイレ清掃員の平山(役所広司)のとりとめのない日常を追い続ける作品。東京の変なデザインの公衆トイレがいっぱい見れます。

概ね役所広司がかわいい。無口という設定の通り、姪っ子が訪ねてきたとき以外本当に役所広司は喋らないのだが、仕草や表情があまりにもおしゃべりで、見ていてこちらも一緒ににこにこしてしまった。銭湯で口まで沈めてぷくぷく泡吐いてたのがかわいい。
姪っ子と自転車で並走しながらとりとめのないことを喋ったり、役所広司(いい人)と三浦友和(いい人)が隅田川沿いで慣れない煙草に咽たり、缶チューハイ片手に状況に酔ってちょっと気障なこと言ってみたと思ったら影踏みしてきゃっきゃ遊び始めるシーンが作品の山場だったのに花丸あげてしまう。そこがちょっとした非日常で、ちょっと恥ずかしくて、そしてうきうきするシーンなのはとてもわかる。好き。

タイトルの通り、色々あるけれども、今日もいい日になりそうだなという役所広司の表情で毎日がスタートするのが印象的だった。現代東京下町におけるおじさん日常系をお求めの方におすすめ。


ドラマ

孤独のグルメ

年末スペシャルと一つ前の2022年の年末スペシャル、あとはseason1を少しだけ。
これを年末に流すテレ東はわかってる。世間には掃除や料理、年超す前に片付けておきたい作業をしながら、おじさんがきゃっきゃしてるだけの日常系×グルメを垂れ流しておきたいという需要があることを。もちろん本作の松重豊もかわいいおじさん枠です。

2022年末は北海道に行ってたので、2023年末は沖縄か~、じゃあ来年は海外にでも行くのかな、と思っていたら2023年で台湾まで行っててウケた。白菜の漬物鍋があまりにも美味しそうだったので、今年台湾に行きたい。

このドラマのおかげで、映えを意識していない、地元民に愛されてそうなお店を見つけると、脳内の井之頭五郎が「お、これはこれは」と喋るようになった。孤独のグルメごっこをしてるとお店選びもわくわくが増す。
ポケモンSV制作陣にも頭の中に井之頭五郎が住んでる人が確実にいると思ってます。

エンディングのいい感じのヨーロピアン(?)な曲の歌詞が「INOGASHIRA GORO~♪ Huu!」って言ってるだけだと気付いたときの衝撃が半端なかったので、今知った人は今度聞いてみてください。


アニメ

PLUTO

ネトフリでアニメを鑑賞。
アトム自体、小学生の頃に講談社の全集版で何度も読んでいたが、浦沢直樹が連載し始めた当時、あれをこうするのか!?と大いに衝撃を受けて、今も単行本を手元に置いている。

まず、浦沢絵がちゃんと動いてたのがすごかった。
他の浦沢作品のアニメ化を見てないので比較はできないが、浦沢絵は整理され切ってない線で感情表現を操っているような印象があり、それが魅力的だと思っていたものの、アニメで動かすには線がくにゃくにゃしすぎだろうと思っていた。
ところが開けてびっくり。線は整理されていたものの浦沢絵っぽい雰囲気は残ってるんだからすごいなあ。

細かく補完はあったと思うが、ストーリーは概ね原作通りだったように思う。やっぱり浦沢作品は王道のサスペンスとして面白い。VIVANT面白く見れた人にはおすすめです。(私のVIVANTはまだ途中)


PSYCHO-PASS

作業のおともにアマプラでseason1を視聴。実は見たことがなかった。
放映当時、本の帯で「紙の本を読みなよ」というキャッチと一緒に載っていた朱ちゃんと狡噛の顔は知ってた。これ槙島のセリフだったんかい。

人が機械によって管理され、犯してない犯罪の可能性で裁かれる未来の話。このところのAIの進歩やSNSなどのプラットフォーム側のコントロールなどを見ると多少近づいてきたなと思う反面、シビュラシステムみたいな存在はまだまだ先な気がする。
そういえば、ひとの思考を均質化すると正解に近づく、という思想はどこ発なんだろう。均質化はするだろうけど、それはただ均質化された答えであり、それが正解であるかはケースバイケースだと思うのだが。古典探せば元ネタがありそうだ。ひとの習性として、壁を取り払うと別の壁を作るというのが今起きてることらしいので、それを元にした面白い話があったら読んでみたい。

全てが機会によって決められている未来において、ひとりだけ選択肢を持つという現代的なの感覚がある朱ちゃんの成長譚として面白かった。


テレビ番組

NHKオンデマンド

NHKオンデマンドに加入したので、古いドキュメンタリー系やトーク系の番組を見漁っていた。
昔からNHKばかり点けている家だったこともあり、見慣れている番組も多いのもあるが、やっぱNHKの実際の出来事や人間を取り扱った番組は面白いものあるなと思う。特に、名もない一般人を扱うことが多い「100カメ」「ねほりんぱほりん」「ドキュメント72時間」あたりはあんまり他の局で見ない企画な気がする。お気に入り。

実際にあった大事件を取り上げ、新情報の検証も加えたドラマ&ドキュメンタリーの「未解決事件」は事件再現ドラマもいい役者使ってて、ちゃんと面白いのでおすすめ。警視総監暗殺未遂事件の犯人役のイッセー尾形が怖すぎて泣きました。(これはこわいおじさん枠)

今回は手をつけなかったが「Nスぺ」「欲望の資本主義」「映像の世紀」あたりも追々掘ってみたい。あとは教育系の番組もそのうち見たい。

そしてNHKの偉い人は頼むから「漫勉」を全seasonオンデマンドに追加してください。デジタル作画全盛期だからこそ、プロ作家の引くほど早いアナログ作画やデジタルだからこそできる作画を見られるのは大いなる資産なんだ。みんなにさいとうたかおがゴルゴ描く時にアタリからいきなりマッキーで眉毛をぎゅっと引くところ見てほしい。あまりにも迷いがなさすぎて笑っちゃうから。よろしくお願いします。


十角館の殺人

映像化が決まったので、ネタバレ踏む前にいいから読め!!とのTLの圧を感じて読んだ。

現代ミステリ史みたいなもので新本格ミステリの立役者としてタイトルはもちろん聞いたことがあったし、綾辻行人のことは残穢から、小野不由美の旦那で京極夏彦のお友達、そして無類のモルカ―大好きおじさんとして認識していた。
違った。モルカー大好きおじさんじゃなかった。面白いミステリ作家おじさんだった。

本書の肝である仕掛けみたいなのが大好物なので、該当のページではとても興奮してページを行ったり来たりしてしまった。今も昔も、この手の仕掛けを用いた作品はあるはずだが、あまりにも鮮烈な使い方でめちゃくちゃ気持ちよかった。
これは確かに紙で読むべき作品でした。


三体

数年前に意を決して買ったが、結局読みだしたのは2023年7月で、なんやかんやでようやく2024年2月頭に読み終わった。これまだ1巻目なんですか?満足感すでにすごいんですが。

中国SFは気になってはいつつ、本棚の肥やしにしてしまっていたのだが、前評判に違わず面白かった。
個人的に中国文学や映画に触れる機会がなかったため、まず冒頭の文革の描写やその後の時代の描写に面喰ってしまったが、三体ゲームの謎めいた世界観に思わず前のめりになってしまった。まったく正解は当てられなかったが、深読みが好きなオタクと相性がよかった。

さて続きを、と思うのだが、ここにきて文庫版が2月から刊行することを知ってしまった。しかもハードカバー版から結構手を入れたと訳者が言っているので、どっちで続き買うか悩んでいる。


ゲームが教える世界の論点

これも発売当初に買っていたが、ずーっとだらだら読んでいた枠。ゲームというメディアそのものの評論ももちろん楽しいが、どちからかというと映画や小説のように個別の作品の評論を読みたかったので、ほくほくしながら読んだ。

各タイトルのシナリオとテーマ、グラフィック、そしてどの部分をインタラクティブなパートにして読者に体験を提供するのか、というところにスポットを当てて読み解くのはもちろん、2010年代以降のゲームが複雑でエンタメとは必ずしも合致しないシステムや、メッセージ性の強いシナリオを採用するようになったことを、現代の時代背景と対照することで、ゲームというメディアが成熟しつつあること、そんなゲームが今何を映しているのかがコンパクトに語られていて面白かった。
完結が存在しないのできっと扱うのが難しいとは思うが、ソシャゲの評論も見てみたいなと思う。

なかなかソシャゲ以外のゲームに時間をかけられていないので、今年は色々触ってみたいなと改めて思った。


マンガ

ダンジョン飯

1巻から追っかけてたライオスたちの”食”の旅がついに完結してしまった。

本作を最終回まで読んで改めて、タイトルの”ダンジョン””飯”をテーマに、最後までブレずにストーリーを回収しきった九井諒子の手腕に舌を巻いた。世界を救ったのが友情でも愛でもなく、””なのはやばい。
レッドドラゴンを倒し、ファリンが怪物になってしまってから、これ本当に解決するのか?と気になっていたが、最後までダンジョン飯らしい笑いとご飯でいっぱいだった。エンディング後もしっかり描かれていて、大満足。

アニメの方もスタートし、そうだった、ライオスは始めから様子がおかしかったし、センシはご飯のことしか考えてなかったし、チルチャックが一般人の視点だけど妙に順応性が高くて、そして何よりマルシルのおかげでこの旅は常に愉快だったんだなあということを思い出した。
アニメも楽しみ。


違国日記

ついに完結してしまったその2。
夏に完結していたけど、読み切ってしまうのがもったいなくてここまで先延ばしにしてしまった。

さみしいと言われると、私もさみしい。
ときどき不幸せでもいいよ。
10代の頃からずっとヤマシタトモコの言葉が好きだったけど、違国日記は殊更に刺さる。それを言いたかった日が、私にもあったように思う。

刺さるようになったのは私が大人になったからかもしれないし、人間の難しさに気づき始めてしまったからかもしれない。
感情を言葉にするのは何よりも難しい。それを表す言葉を知らなければ、認識できない気持ちがあることが本作でも語られていたがヤマシタトモコはそのちょうど境目のゆらゆらした部分を掬い取ってみせたのではないだろうか。

本棚に置いといて、人間の難しさにさみしくなるようなことがあったらまた読みたい。


君と宇宙を歩くために

電子で買ってしまったけど、読んですぐに紙でも買った漫画。

主要な登場人物たちは小学生で勉強に躓いてしまったヤンキー、個性的な転校生、人と話すと緊張しすぎて余計なことを言ってしまう先輩と、苦労がありそうだが、どこにでもいるであろう男子高校生たち。
本作では分かりやすい言葉で彼らをラベリングせず、彼らが大人になったら忘れてしまうかもしれない恥ずかしさや怒り、怖れ、そしてどうにも空回りしてしまう相手を大切にしたい気持ちを丁寧にほどいて拾っていて、とても読み応えがあった。
何でもない日を面白く書けたら最強というのを地でいっている作品。漫画力が強い。

"ちょっと変わった友人"と”ままならない自分”と、彼らが宇宙をキーワードに今後何をなしていくのか、とても楽しみ。


どうにもここ数年の創作における本調子ではないようなもぞもぞ感は本を読んでないせいではないかということを思いつきました。
昨年は睡眠改善を志してまあまあいい感じになってきて、なんとなくそこら辺のやる気がある気がするので、本年はソシャゲはほどほどに楽しみつつ、絵を練習する時間を確保しつつ、本読んだりゲームしたり料理したり運動したりいっぱい寝たり遊んだり食べたりしたいと思います。


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