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ギターサウンド研究会 ブリティッシュサウンド編


歪みエフェクターやアンプの商品説明を呼んでいると、なかなかイメージをしづらい単語を多く見かけます。
そんな場合、「〇〇のサウンド」と説明をされても、馴染みのない言葉であればどんな音か全く想像ができませんよね。

その中でもよく見かける「ブリティッシュサウンド」といった単語。
ブリティッシュ?イギリスの音?
その言葉の実情をご存じない方にとっては全く音をイメージできないのではないでしょうか。
そこで今回は、「ブリティッシュサウンド」の真相についてご紹介いたします。

◆ブリティッシュサウンドの出発点はどこだったのか?◆

1960年代の初頭。 アメリカでは既にロックン・ロールが登場しており、イギリスでもそれは紹介されています。
とはいえこの当時のイギリスではまだ、ロックン・ロールはエンタメの主流にはなっておらず、大都市圏のライヴ・クラブはフォークやらフル・バンドのジャズやらが幅を利かせており、電気楽器やアンプもそれほど大きな音がでないと、まぁ差し迫った必要性はない時代だったわけです。

60年代末から70年代前半に登場したブリティッシュ・ハード・ロックのアーティスト、 特にギタリストは大なり小なり、THE SHADOWSから影響を受けていますが、 アメリカのTHE VENTURESやサーフ系ギター・インストバンドの英国版ともいえる THE SHADOWSのサウンドはクリーンなトーン、 大変端正にしてスクエアなギター・インスト・サウンドで、若年層のギター購買需要は一気に上昇しますが、まだ大音量化の需要はそれほど大きくなかったのです。


こうした状況が一変するのは THE BEATLES の登場以降でしょう。
それまで都市部のクラブ・シーン、 劇場興行では観客の声が大きすぎて演奏がかき消されるなどということはほとんどなかったのが、 THE BEATLES登場以降はそれが一変。女性ファンの金切り声で演奏がほとんど聞こえないということが日常的に起きるようになります。
演奏する側もなんとか音量を上げていこうと努力しますが、いかんせんVOXのビルトイン・アンプなどが主流の時代です。
ヴォリュームを上げていくと確かに音量は上がりますが、同時に音質は自然とオーヴァードライヴやディストーション・ペダルを使用するのと同様に歪んでいきます。必要に迫られてのことですが、 このナチュラルなディストーションが、 THE BEATLESやTHE ROLLING STONESに代表されるビート系バンドが影響を受けた、アメリカのロックンロール、プルーズ、R&Bのレコードで聴くことのできる、 ファンキーでダーティなトーンに近いこともあり、世の主流は歪んだ音に傾いていくのです。

VOX AC30
ビートルズが使用した1960年代以降、世界的に圧倒的な人気を誇る英国産アンプのクラシックモデル。時代の流れと共に細かな仕様変更が繰り返されてきたが、EL84菅を4本使った30W出力と、非常に効率の良いブルー・アルニコスピーカーを採用したことで、30Wとは思えない音量と絶品のクリーン・クランチトーンを出す名機




◆人種差別がなかったからこそ生まれた英国サウンド◆

もうひとつ、違った側面から見ると、 イギリス人の国民性というのも大きく作用しているように思われます。
ブリティッシュ・ロックは元々、アメリカの黒人ブルーズをベースにしたビート系バンドから発展したケースが多々見られます。
60年代当時はアメリカではまだ人種差別が色濃く残っており、興行的にも白人・黒人の色分けがなされていたが、イギリス人はそうした差別意識を持たなかった。逆に率先して黒人音楽のレコードを通販してくれるアメリカのショップを見つけ出し、ミュージシャン、 マニアはそこから大量にレコードを購入。そしてブルーズ界のアーティストを率先してイギリスに招聘。
そもそもピン芸人が多かったブルーズ・アーティストですので、招聘してバックはイギリス人アーティストが務めるという形が定着。 本場のブルーズ人と演奏することでそのスタイルを学び、同時に持ち前の勤勉さでそれを発展させていったという点も見逃せません。 THE YARDBIRDS、FLEETWOODMAC 、GROUNDHOGS等黒人ブルーズマンとの共演作品を残したアーティストは多数存在しています。


◆マーシャルアンプの登場◆

元々ドラマーで、 ドラム専門のショップを経営していたジム・マーシャル。 ブリティッシュ・ビートの機運が高まると彼のショップにはドラマー以外も多く来店するようになり、1962年にフェンダーのベースマンをベースとしたJTM45の販売を開始し、注目を集めます。
THE WHOのピート・タウンゼンドはこのJTM45をベースに30cmスピーカーを8発収めたキャビネットを特注。 しかし、キャビネットが巨大化し重量的にも運搬に支障をきたすということで、30cmスピーカー4発を搭載したキャビネットを2台積み上げるという現在のマーシャル・スタックに通じるスタイルを作り上げます。 “1959" と呼ばれたこのマーシャルスタックは瞬く間に浸透し、60年代後半にはロック大音量化の旗印となります。

Marshall JTM45


現代のギターの音作りにおいても非常に重要な立ち位置を占める「ブリティッシュサウンド」。今回はこのサウンドについての理解を深めることによって、これらの謳い文句が書かれている歪みエフェクターやアンプなどを実際に試奏した際に、あなたの目指しているギターサウンドに近いものかを判断する基準を作る材料となるはずです。
よかったら続きをチェックしてみてください。
なお、10部販売したら値上げします

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