ヴァン2

連載『オスカルな女たち』

《 ありのまま 》・・・16

「…そんなわけで、あたしに白羽の矢が立ったってわけなのよ」
 やきもきしながら病院に駆け付けてはみたものの、意外にも織瀬(おりせ)は落ち着いた様子で、病室のベッドの上で読書している姿に安堵し、これまでの経緯を差し支えない程度に話して聞かせるつかさ。
「ごめんね、忙しい時に。わざわざ来てもらっちゃって」
 そう言って無理に笑おうとする織瀬に、
「そういうことじゃないでしょう」
 思わずそう強く言ってしまうつかさ。
「あ…ごめん、おりちゃん」
 自分の方が大変だというのに、それでもこちらの都合を優先してくれる織瀬の心が、その気持ちが胸に痛くもどかしかった。
「ごめん…」
 それを受け、申し訳なさそうにする織瀬に、
「やだ。そんなつもりじゃないのよ」
肩に手をのせ、
「ただ…みんな心配してるのよ、わかってるとおもうけど。あたしもね。…その様子じゃ明らかになにかあったって…顔だもんね」
 ベッドの脇の椅子に腰かけ、確かに様子のおかしい織瀬を気遣う。
「自分でも、理解するのに時間がかかって…」
 そう言って目を潤ませ、少し考えるようなしぐさをし「まだ、自分でも解ってないのかもしれない」と付け足した。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです