紅兎〜決断編〜菓子

「わあ!すっげーーーー!!!」

政樹は、目の前にズラリ並べられたお菓子の数々に、思わず感嘆の声をあげた。

「えっへん!どだ、凄いじゃろー!」

茜は、朱理の癖と物言いを真似て、鼻の下を擦りながら言うと、自らの自信作に満足げに何度も頷いてみせた。

金団にねりきり、おはぎに大福…

色取り取り、よくもこんなにと思われる程こしらえられたお菓子が、調理テーブルいっぱいに、所狭しと並べられている。

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紅兎〜決断編〜菓子

「わあ!すっげーーーー!!!」

政樹は、目の前にズラリ並べられたお菓子の数々に、思わず感嘆の声をあげた。

「えっへん!どだ、凄いじゃろー!」

茜は、朱理の癖と物言いを真似て、鼻の下を擦りながら言うと、自らの自信作に満足げに何度も頷いてみせた。

金団にねりきり、おはぎに大福…

色取り取り、よくもこんなにと思われる程こしらえられたお菓子が、調理テーブルいっぱいに、所狭しと並べられている。

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珈琲の大霊師292

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第35章

    心・技・体!三番勝負

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「ごめんなさい、ジョージさん。・・・珈琲、まだ飲めるのは無かったです・・・」

 申し訳なさそうに俯くモカナに、ジョージは胸が締め付けられるような想いだった。

 モカナは、何よりも最初にジョージが美味しいと感動したこの里の珈琲を手に入れる為に、夜の森を歩いていたのだ

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紅兎〜決意編〜八重

秀行は、木陰に佇み、参集殿の二階を見上げる亜美を見つめていた。

亜美の眼差しに精彩はなく、顔は無表情であった。

愛の産んだ赤ん坊と、取り巻く兎達の笑い声…

しかし、本当なら一番喜ぶであろう早苗の声がそこにないのが無性に寂しい。

『赤ちゃん、聞こえる?今日ね、カズ兄ちゃんに箱車を作って貰ったんだ。』

菜穂が和幸の子を妊娠した時…

早苗は、菜穂の寝所に通っては、いつもお腹の子に語りかけてい

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連載『オスカルな女たち』

《 孤独な闘い 》・・・17

「浮気でもされた?」
「そりゃ、しょっちゅう」
「帰ってこないとか」
「それも、しょっちゅう」
「金遣いがあらい…」
「そうね、一部をとっては…」
 人が良すぎる祐介は、自分が捕まえた悪党にていよく騙され、よく返ってこないお金を貸していたことを思い出す。
(なんだか腹が立ってきた…)
「思い出したくない」
 真実(まこと)がそう言っても、
「大酒のみ…酒乱?」
 弥

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未熟ではありますが今後ともよろしくお願いいたします
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紅兎〜決心編〜八重

秀行は、木陰に佇み、参集殿の二階を見上げる亜美を見つめていた。

亜美の眼差しに精彩はなく、顔は無表情であった。

愛の産んだ赤ん坊と、取り巻く兎達の笑い声…

しかし、本当なら一番喜ぶであろう早苗の声がそこにないのが無性に寂しい。

『赤ちゃん、聞こえる?今日ね、カズ兄ちゃんに箱車を作って貰ったんだ。』

菜穂が和幸の子を妊娠した時…

早苗は、菜穂の寝所に通っては、いつもお腹の子に語りかけてい

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『白い運命』⑰

夏の公園に黒斑に青色の羽根のアサギマダラという蝶が飛んでいる。この蝶は渡り蝶ともいわれ、秋になると南下する。時には1000キロにもおよぶ場所へ移動するらしい。

病院の研究室で働くマキは、白衣を着てドクターから文献のコピーをたのまれ、図書室で十数冊をカートに乗せて最後の一冊を探しているところだ。
そして、その一冊も見つかりコピーする。
コピーした用紙の上に、文献の題名を赤文字で書いてドクター

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紅兎〜決意編〜前進

鱶見社領に通ずる一本道に入って以来、その気配はずっと私達の後を静かにつけていた。

此処に私達が辿り着く事を、いつどのように知ったのだろう…

いつもそうだ…

彼は、私が思うよりも先に私の思うところを察し、そうなる事を望むよりも先に、それを遂行する。

そして…

私の向かう所には、必ず私よりも先に辿り着く。

但し…

私に付き従うのも、行き先で姿を現わすのも、私にとってそうする事が必要だと、

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紅兎〜決心編〜前進

鱶見社領に通ずる一本道に入って以来、その気配はずっと私達の後を静かにつけていた。

此処に私達が辿り着く事を、いつどのように知ったのだろう…

いつもそうだ…

彼は、私が思うよりも先に私の思うところを察し、そうなる事を望むよりも先に、それを遂行する。

そして…

私の向かう所には、必ず私よりも先に辿り着く。

但し…

私に付き従うのも、行き先で姿を現わすのも、私にとってそうする事が必要だと、

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紅兎〜決意編〜難産

境内…

銀杏の木陰に佇み、亜美は梢を見上げていた。

既に葉はなく、代わりに雪が被さっていた。

『白い花が咲いている…』

早苗の声が、耳奥にこだまする。

ふと、隣に聳える楓の梢…

『赤ちゃんのお手手、冷たくないかなー。』

早苗は、大きく首を反らせて見上げながら、泣きそうな声で言う。

『大丈夫よ。ほら、アケちゃんが手袋を編んでくれたわ。』

『わあ、小ちゃな手袋がいっぱいだー。』

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