頂上

連載『オスカルな女たち』

《 秘密の効用 》・・・14

「疲れませんか?」
「体力にだけは自信あるの…」
 普段からハイヒールで駆けまわってる織瀬(おりせ)ではあるが、慣れない道でさすがに足元がおぼつかない。だが、余計な気を使わせまいと強がった。
「もうすぐですよ…」
 10分ほど登っただろうか、さすがにヒールで古木の階段はきついと感じた頃、目的地にたどり着いたようだった。
「わぁ…」
 そこは周りにはなにも遮るものがない一面の芝生で、ドーム状に緩やかな丘が広がっていた。
「歩きにくいですかね?」
 明らかにそこは、ヒールが食い込む感じの芝生にやわらかい地面だった。が、
「平気、靴脱いじゃう…」
 そう言って織瀬は6センチのヒールを右手に掴んで歩き出した。
「ぁ、ぃた…っ、やっぱりダメかな…」
 チクチクする芝生に裸足で歩くことを断念し、片足ずつヒールを履き直そうとする織瀬。たが、それを真田が受け取り、自分のデニムの後ろポケットにヒールのかかとを差し込んだ。
「え、ちょっと…」
 なに、いじわる?…とそう言おうとするや否や、急に足元をすくわれる感じで体が宙に浮いた。
「ひゃ…え、待って…」
 真田に軽々と抱き上げられてしまう。
「ちょ…っ、わっ」
 バランスを崩し、思わず真田の首に腕を回す。

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