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連載『オスカルな女たち』

《 そうするための… 》・・・20

「無理だもの…って、諦めてるってことでしょう? それって、どうにかなりたいと思ってるからじゃないの?」
「と、とにかく。彼のことはいいの…!」
「ま、かわいらしいこと言っちゃって」
 弥生子(やえこ)は瞼を上下させ「そういうところがいいのかしら、真実(まこと)さんも」と、織瀬(おりせ)に聞こえない程度のひとりごとをつぶやいた。


 次の週の日曜日・・・・。 
 織瀬は国道沿いのバイクショップの前を歩いていた。何台も並ぶいかついバイクを素通りし、ショウウィンドウに映る自分を横目で確認しながら、何度も鏡の前で確認した自分の姿を改めた。
(あたしも随分と大胆になったな…)
 そんなことを考えながら、ビルの切れ目の細い路地に入り込む。しばらく歩いた先の階段を上って3階を訪れた。
 インターフォンを推す前に、ドアが開く。
「わ…」
「いらっしゃい。ヒールの音が聞こえたから…」
 顔を出した章悟は、まるで初めて会う人のような顔をしていた。
「あぁ、そうなのね…」
 確かに鉄製の階段は、どんなに静かに歩いてもヒールの音を消してはくれなかった。
「ごめんなさい、突然お邪魔…」
 言い終える間もなく織瀬は抱きすくめられた。
(え…)
 これはいつか夢で見たシチュエーション、そう思いながらも意外と気持ちは冷静だった。

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