海

連載『オスカルな女たち』

《 孤独な闘い 》・・・8

「はい、はい、」
 言いながら真実はカルテに目を落とし、
(また若いか~ちゃんか…)
 小さく溜息をついて聴診器を首にかけた。
 そしてなぜか診察後、その「若いか~ちゃん」はなかなか席を立とうとしなかった。
「まことせーんせ」
 ひかるが受付にカルテを持って出た後も、ニヤニヤとなれなれしい言葉をかけてくる「わかいか~ちゃん」。
「はい。なにか」
 顔を見ずに答える真実(まこと)。
「まことせんせー」
「はい、聞こえてます」
 少々語気を荒げ、顔を上げる。
「そうじゃなくて、」
(なんだよ)
「わたしのこと、覚えてませんかぁ? お、ねー、さ、ん」
「は?」
(おねーさん…?)
「えーと高遠さん、里帰り出産ですね。なにか問題でも?」
「そうじゃなくて、カルテ。名前、ちゃんと見えてます?」
「…カルテ。はい、見えてますよ。高遠…麻琴、さん…。まこと…?」
「はい」
 顔を見て、
「まこと?」
「はい」

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