チューリップピンク2

連載『オスカルな女たち』

《 守秘義務 》・・・16

「あたし、しゃべったんです。奥の奥さんと…」
(奥の奥さん…?)
「楓ちゃん…!」
 いつも以上に勢いよく回転椅子で振り返る真実(まこと)。
「偶然ですよ、偶然。天気がいいですね…って話しかけられたもので…」
「まさか…?」
 なぜ子どもができないのか…などと聞いてはいまいかと勘ぐる真実。
「まさか、あたしだってそのくらいの常識はありますよ~。でも…」
「でも…?」

「あの人、オスカルでしたよ?」
「オスカル…?」
「はい。真実先生と同じ学校の卒業生だったみたいです。3つ上みたいですけど…」
「3つならかぶってない」
「ですよねぇ…でも、真実先生のこと、知ってる風でしたよ? 『奇跡のオスカル』なんですって…? 素敵ですねぇ」
 その頃の真実に恋焦がれるようにカルテを抱きしめる楓。

「そんな昔のこと…」
「はいはい詮索はしませんけど…」
「あたしは知らない」
「でも、」
「でも、じゃないよ、楓ちゃん」
「はい。…でも、どんなオスカルだったか、知りたくないですか? 奥の奥さん」
「知らなくていい…」
 問題は山積みだった。このうえご近所の話まで気にしてはいられない。しばらく眠れなくなりそうだ…と、憂鬱な気分を隠せない真実だった。

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