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連載『オスカルな女たち』

《 いちばんいい? 》・・・6

「ならなんで逃げた」
 畳みかけるように首を垂れる真実(まこと)に、
「だからっ怒られる、と思って。…普通のことでしょ」
「普通じゃないことしたと思ったから逃げたんだろー」
「先生! またそんな言い方…」
「反対されると思ったのか? 産むつもりなら素直に言やぁいいだろ。玲(あきら)は反対しないと思うぜ?」
 それを当然のように述べる真実。
「なんで?」
「あ?」
「なんで反対しないの?」
 まるで反対してほしいような口ぶりの羽子(わこ)に、腕を外して白衣のポケットに両手を突っ込む。
「なんで?…って」
 前屈みに羽子に迫り、
「だって、好きな男なんだろ? そういうところは…」
 寛大だ…そう言おうとするも、
「あたしのことなんかどうでもいいから…?」
 と逆に鼻声の羽子に言葉を遮られた。
「はぁ? おまえ殴るぞ」
 ついいつもの調子で遠慮がない真実は、立場を忘れ腰を浮かせた。
「せんせい!」
 すかさずその態度に噛みつく楓。
「ちっ…。ちゃんと予告しただろうが…!」
 一歩踏み出すが踏みとどまる。
「予告すれば殴っていいわけじゃないでしょう」
「娘なら、予告もせずに殴ってる」
「もう~。乙女心が解ってないんだから…」
「お~と~め?」
 片目をあげて楓を見据える。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです