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ゲストハウス蔵

まちの小さなエネルギースポット

ゲストハウス蔵は、長野県須坂市にある築130年の古民家ゲストハウスだ。
JR長野駅から長野電鉄ー地元では親しみを込めてながでんと呼ばれる私鉄に乗り換え、特急で20分ほど。須坂駅からゆっくり歩いて15分位の位置にある。

須坂は、お隣のまち小布施に比べると知名度がちょっと低めだけれど、古くは養蚕で栄えており、残された家の作りがとても立派。ゲストハウス蔵(以後ー蔵と記述)の建物もそうした位の高い人が利用していた古民家だったらしい。近くに田中本家と言う博物館になっている豪商の館があったり、酒造や味噌蔵など、今ちょっとしたブームの発酵モノが気になる人にはたまらない場所だと思う。

蔵は、小さめの個室が1つと、男女別の和室ドミトリーが1部屋ずつというシンプルな構成のゲストハウス。「なるべく日本家屋の作りを残したかった」と言うオーナーの山上万里奈さん。障子やふすまで仕切られた部屋が、海外からの人にはなかなか理解されず、批判的な意見ではなかったけれど、「ペーパードア(←ふすまのこと)だけだから声が筒抜けだから気をつけて」と口コミに書かれたこともあると笑って教えてくれた。けれど、障子もふすまも、人に気を使いながら過ごす日本の家のつくりそのものも、偽りのない日本の文化だからまるごと味わってほしいというのが彼女の考えだ。

山上さんは須坂出身。学生時代は東京に出て、その後ゲストハウスをやりたくてこのまちに戻ってきた。以前は日本語教師として都内だけでなく、まだ発展途上だった中国の田舎町で2年働いていたというキャリアの持ち主で、彼女のそのバイタリティーと明るいキャラクターが、ゲストハウス蔵の大きな持ち味になっている。とにかく華があって明るくて。彼女の周りにはそうしたエネルギーに吸い寄せられるようにおもしろい人が集まってくるのかもしれない。

だからなのか、ここに来るといろんな印象的な出会いがある。

初めて出会ったのはいつだったか、近隣在住でよくラウンジに顔を出していたしんちゃんという若者とは、その後、彼自身が風景写真家として活躍しつつ別の宿で働いていたときに再会し、なぜか誕生日パーティと称して一緒にケーキを食べたりした。

ここで宿業修行中だったパクさんという男子は、ゲストハウスプレスのWEB記事がきっかけでここを知ったのだと教えてくれた。なんともうれしいニュースだった。さらにその数年後、彼は神戸で自分のゲストハウスを開くことになる。

また、ある時は同じ日に泊まったお客さんが実は知人だったということもあった。

たまたま行くと何かしらおもしろいことが起こるので、すごいなーと思うけれど、彼女いわく「いつもこんなわけじゃないですよ」とのことなので、こうしたハプニングは、自分と宿との運や相性みたいなものなのかもしれない。

実は、ゲストハウスプレスとして初めてインタビュー取材をしたのは彼女だった。わたしは個人的なブログ記事などで発信することには慣れていたけれど、職業としてのライターは未経験だったから、すでに顔見知りで親しみやすいキャラクターの彼女なら適任だと思ったのだ。

今思えば、最初のインタビューは本当に不慣れで、確か2〜3時間かけてお話を聞いたような気もする。もう彼女の自分史が書けるんじゃないだろうかって言う位あれこれとライフヒストリーを聞き、彼女もわたしを信頼してたくさん話してくれた。

わたしの興味は、最初からゲストハウスそのものよりも「なぜこの人がここでゲストハウスをやろうと思ったのか?」というところにあった。
いつもセラピストの仕事でクライアントさまに人生のあれこれを深く聞いていたので、どうしてもその感覚が出てしまったのかもしれない。長過ぎるインタビューにきちんと向き合ってくれたのは、彼女の優しさだろう。


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ここ数年、須坂にも若い人が個人経営してるようなおもしろいお店がどんどん増えてきたそう。ゲストハウス波及効果!?

ゲストハウス蔵に併設している山上さんのお母さまが運営しているカフェも素敵だし、須坂出身の依田しずよさんが、中庭の奥にある小さな本当の蔵を利用して雑貨屋さん『Sketch in -hike-』も営業している。ここに来たらあまり遠出はせずにノープランで過ごしてみるといいと思う。

ここに泊まるといくつかの夕食の選択肢があって、1人でふらりと訪れる時は、地元をよく知るスタッフにレコメンドされた居酒屋に行ってのんびりちょい食べちょい飲みするのが好き。ディープな地元の人がいるお店が多いから、普通だったら選ばないような濃い店に巡りあうことも多く、そういう偶然の発見や驚きがゲストハウス旅の醍醐味だから。

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フリペとWEBをつくる人。ゲストハウスと旅にまつわるお話を書いています。ただいま書籍出版に向けて準備中!少額でもサポートしてくださると全わたしが泣いて喜びます。ニシムラへのお仕事依頼(執筆・企画・編集など)はinfo@guesthousepress.jpまでお願いします。