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とりいくぐるGuesthouse & Lounge

ここに来ればなにかあるかも、と思える文化の発信拠点


とりいくぐる」という謎めいた名前のゲストハウスができるという話を聞いた時はおどろいた。インパクトあるそのネーミング、ちょっと目立つ単色刷りのイラストが書かれたチラシ。なんじゃこりゃ!?(いい意味で)と、ゲストハウスのニュームーブメントだと色めきだったものだ。

とりいくぐるGuesthosue & Lounge(以下とりいくぐると表記) は、JR岡山駅西口からてくてく歩いて13分、奉還町商店街という駅前アーケード街の、アーケードが終わってそのままずんずん歩いていった先にある。まわりは小さな商店や家が混在するエリアで、なんとも懐かしい昭和な雰囲気がそのまま残っている。

なぜ「とりいくぐる」という名称なのか?それは下記の写真を見ればわかるだろう。建物の前に神社の鳥居がめりこんでいるようなつくりなのだ。

この不思議なつくりの複合ビルは、もともとは精肉店とその作業所として利用されていたものだったそうだ。神社があったというわけではないそうだが、その場所(食肉処理とか)柄、祀りのために小さな神社的なものと鳥居もつくられたというわけらしい。

道路に面した長屋部分の奥に広い中庭があり、その先にも建物が入っている。ここはゲストハウス以外にアトリエや小商い的なテナントが入る複合施設NAWATEとして整備されたリノベーション物件だ

もともとは尾道のゲストハウス「あなごのねどこ」とも関わりの深い岡山の建築事務所がいろんな縁でこの使われていない空き物件を扱うこととなり、商店街活性化の一端としてここを上手く使いたいというところからスタートしたプロジェクトだった。

宿を管理しているのは、取材をした2016年当時は明石さんと野口さんという男性2人。その後野口さんは業務を離れ、現在は明石健治さんが中心に法人化しNAWATEのテナント管理のほか、一棟貸しの別館と、とりくぐるから徒歩30秒のところに姉妹店としてオープンした飲食のできるラウンジ「ラウンジカド」もあわせて運営している。

普通は個人オーナーが宿運営をする場合、実家や持ってる建物を宿にするというパターン以外は「ゲストハウスやりたい!」という意思を持って物件を探し、複雑な手続きを経てようやく開業、というパターンがほとんどのように思っていたがここは違った。まず最初に空き物件を再生して活用したいという建物があり、そこで「何か」することが決まっていて、たまたまその改装の手伝いをしていた2人が中心にそのままオーナーになってしまったという。

なってしまった、と言うとやる気がないような捉え方みたいで語弊があるかもしれないけれど、2人のいつでも自然体な力の抜けた感じは「たまたま、流れで、こうなった」と言われてもなんとなく納得してしまう運の強さのようなものも感じる。

取材でお話をうかがっておもしろかったのは、彼らが最初「ゲストハウスをすごくやりたいというわけではなかった」というところ。

そもそも2人でやることになったのもこれまた「流れで」あっという間に決まったという。そんな感じなのに2年以上ずっとタッグを組んで、地元の商店街や地域の人たちとうまくやっていきながら、決して楽ではない運営を続けてこられたのは、目に見えない努力がきっとたくさんあるのだろうと思う。

2人へのインタビューを行ったのが2016年の秋のことだった。ちょうど「ラウンジカド」が出来て少しした頃。とりいくぐるへはその前に2度ほど訪れていて、顔見知りになっていたので、インタビュー前にのんびりランチを頂いたりして、すっかりくつろいだ気分でいた。

するとなんと、その日の午後、岡山県では何年振りかという大きな地震が起きた。お隣の鳥取県、野口さんのご実家付近が震源というニュース。小さい余震も何回か起こったりして、それから少し予測不能で不穏な空気が漂った。

「あれ、まだ話を全然聞いてないんだけど、こんなことならのんびりくつろいでランチなんて食べなきゃよかった…」と思ったけれど後の祭り。それでもその後2時間くらい時間を過ごしたのち、結局その日にインタビュー取材をさせてもらったのだった。写真撮影もちゃんと笑顔で応えてくれて、さすが接客のプロフェッショナルだと思った。

とりいくぐるの良さは、その場所が持つアートや文化的な吸引力があるところ。自分たちでイベントをやることもあるし、そうした情報が集まってくる場所になっているところだ。

旅人として泊まるだけじゃなく、地元ーというより中国地方というくらい広い範囲のおもしろい人たちのホットスポットみたいな情報拠点になっているところなのがいい。ふらりと予定なく泊まって、置かれているチラシの案内を見て出かけてみる、みたいなことがとても似合うゲストハウスだ。

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