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HR業界にもっと「専門知」を (伊達洋駆氏インタビュー #2)

こんにちは!GUiDEE開発チームのモイです!前回に引き続き、ビジネスリサーチラボ伊達洋駆さんへのインタビューです。今回は、伊達さんが日本のHR業界について感じていることを中心にうかがいました。

HR担当者の「目利き力」を高めたい

——伊達さんはHRの幅広い分野で様々なお仕事をしていますが、日本のHR業界をどうご覧になっていますか。

日本では大手から中小まで数多くのHR事業者がいて、たくさんのサービスをリリースしていますが、その内容は玉石混交です。非常によくできたサービスがある一方で、正直、問題のあるサービスも見られます。ところが、多くのサービスはプロモーションやマーケティングがうまいので、品質の違いが分からない。これはサーベイ、アセスメン ト、研修、システムなど、どの領域でも同様です。

この背景には2つの要因があると思っています。ひとつは日本の企業のHR担当者の目利き力や知識が必ずしも十分でない、ということ。それはHR担当者の能⼒がないということではなく、異動が早いため、専⾨知を⾼めにくい構造になっていることに起因します。

もうひとつは、そもそもHRの専⾨知があまり流通していない、ということ。前回、研究と実務に距離があるというお話をしましたが、科学的には既に明らかになっている知識であっても、実務の現場では知られていないケースもよくあります。

例えば、サーベイやアセスメントのサービスを選ぶときは「妥当性」「信頼性」(※1)が品質の基準になりますが、そういう知識は十分に共有されていません。そのため、サービス選択における基準から品質が抜け落ち、
「どの会社が導⼊しているか」や「UIが優れているか」だけになってしまいます。これでは⽟⽯混交の状態は改善されません。

※1 筆者注︓妥当性は、測りたいものをどのくらい的確に測定できているかという指標。信頼性は、同じ⽅法で測定すれば安定して同様の結果が出たり、複数の項目が同一のものを測定したりしている程度。

この状況は、HR事業者全体にとってもよくない影響を及ぼします。不況になったときに、「本当にこれ意味あるの︖」と社内で突っ込まれ、コストカットの対象になってしまうわけです。

⽇本のHR業界では「経験と勘」の⼒が強く、エビデンスに基づいて判断する流れになっていかないところが現在の課題です。これからHR市場がさらに洗練されていくには、業界全体、中でもユーザー側が知識をつけていくことが重要です。

知識は仮説を立てるためにある

——専門知の流通という部分では、伊達さんのご活躍にも期待がかかりますね。

その点では、⾃分たちはまだまだ⼒不⾜だなと思っています。ただ、今年は採⽤の本(※2)を出し、さらに来年にかけて2冊準備しています。どちらも研究の知⾒を実務の現場と接合させて紹介する、という内容になる予定です。HR領域全体が対象で、実務家の方々と⼀緒に作っています。

※2 「最高の人材」が入社する採用の絶対ルール の詳細は記事末尾に掲載。

本を作ったり、セミナーを行ったり、調査やコンサルティングを提供したりする中で、サービスを「⽬利き」するための知識を提供していき、少しでも⽟⽯混交の状態を改善し て、HR業界の発展に貢献できればと思っています。

——日本のHR業界は変わってきているのでしょうか。

私が活動をはじめた⼗数年前と⽐較すると、エビデンスに関する感度は上がっています。データ分析や研究知見に基づいて⼈事の施策を実⾏したり判断をしていこうと考える⼈は、少数派ではありますが、増えてはいます。

それに伴ってHR系のデータを分析するサービスも出てきています。ところがそういったサービスを導⼊しても、ユーザーは中⾝が分からず、適切に使えていない現状が認められます。

——もっとHRに関する知識が必要、と。

ここでいう知識が何のために必要なのかというと、仮説を⽴てるためです。例えば「どういう⼈を採用すれば良いか」という問いがあったときに、「こう質問をしたときに、こう回答する⼈ではないか」とか「この指標が⼤切ではないか」など、いろいろな仮説を⽴てられます。

仮説を⽴てるための知識源が「経験と勘」だけでは限界があります。特に、⾃分があまり経験したことがないことについて仮説を⽴てるのは容易ではありません。

仮説という意味では、HR系のサービスも、そもそも仮説のかたまりですよね。各社が、⾃社の⽴てた仮説に沿ってプロダクトを作って提供しているわけです。だから使う側もしっかり仮説を持って、「うちの仮説と同じだ。このサービスは使えるのでは」という観点からサービスを選ぶのが、あるべき姿だと思います。そのためにも、ユーザー側がもっと成熟していくほうが良いでしょうね。

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日本のHR業界に専門知を提供したい、という伊達さんの熱い思いが伝わってくるインタビューでした。HR系のプロダクトにも「仮説が重要」というお話しでしたが、それはGUiDEEも同じ。私たちは「上司と部下というペアの関係が良くなれば、組織全体が良くなる」という仮説を持ってプロダクトを開発しています。3回シリーズの最終回となる次回は、GUiDEEのアセスメント開発をどのように進めているかというお話しを聞いてみたいと思います。

第1回 研究とビジネスの距離を縮めたい
第2回 HR業界にもっと「専門知」を (本記事)
第3回 ペアに注目したアセスメントの作り方


『「最高の人材」が入社する採用の絶対ルール』は、伊達さんが共著者として執筆した本です。エントリーシートは本当に必要か、志望動機はなぜ聞くのか、など従来の「採用の常識」にズバリと切りこんで、新常識を提案しています。刺激的に見えますが、背後にはしっかりとした根拠があり、「確かにそうかもしれない」と納得させられることばかり。採用担当者はもちろんのこと、求職者にもオススメしたい一冊です。

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