長く続いた緊急事態宣言が緩和され
我が街の地下歩行空間にも人影が多くなってきた
イベントスペースではまだフルスペースではないが
特産物の即売会や現代アートの展示など催し物が始まりつつある

今日は景気よく呑みにいこうか
増えだした人込みを掻き分けイベントスペースを通る
ひと際目を引くものがあった
「禅タロット占い　1人1,500円」

禅とタロットは調和するのか
和と洋のスピリチュアルコラボレーションだ

一人の初老の女性が座っている
見た目はスナックのママのようだ
手元にはタロットカードがある

ここまで確認できるかぎり
禅の要素が全くない
占い好きのスナックのママがいるだけだ
ものすごく不安になる

よく見れば黄色や赤の布をデーブルに被せただけの簡素な作りだ
遠目に見ればタイの屋台にも見える
そこにポスカで手書きされた看板がある
なんか看板の字ずらだけをみれば学園祭の出し物にも見える

まったく占ってもらうつもりがないので
素通りしようと前を横切る
その時、スマホが鳴った
例の占い師の方からだ

息を飲む

「アー、モシモシ、イマドコイルノ」

もはや日本人でもなかったようだ

禅はどこにあるのだろうか
私たち日本人のマインドである禅はまだ見つかっていない

了