見出し画像

不育症  ~10歩芽~

心身共に落ち着いた私は、
凍結させた最後の受精卵のことを考え
再び札幌の病院に通った。

先生は、安定期にはいった妊娠5ヶ月目で死産だったら
高額だけど、検査してみましょうか?と提案してくれた。
普通は、2度3度流産した人に向けて検査するものらしかった。
私は検査を受けることにした。

検査の結果、不育症と診断された。
だから、おなかの子は亡くなってしまったんだ・・・。
もっと安静にしていればよかったのだろうか。といろいろ悩んでいたが
原因がわかって少しほっとした。
子どもがいないことには、変わりないのに
心とは不思議なものだ。

もうちょっと詳しくいうと、「抗リン脂質抗体症候群」といって
おなかの子に血が行き届かなくなる体質らしい。
血栓ができてしまうそうで、そのために
アスピリンを毎日服用しなければならなくなった。

驚くくらい大量の薬が処方された。
その薬を飲み続けながら、最後の体外受精に挑んだ。
授からなった。
でも、もう私は泣かなかった。
薬をもう飲まなくていい。とほっとした。

辛かったのは、
不育症でも、授かった人はたくさんいる。
授かるよ。まだ若い。40代でも妊娠、出産している人はいっぱいいる。
という言葉たちだった。

もう治療を続ける気力は私にはなかった。
子どものいない人生を歩んでいこう。と決めた。
夫とは、おかげで本当の夫婦に、家族になれた気がした。
「辛いという字があるが、もう少しで幸せになれそうな字である。」
といった、冨弘さんの詩を思い出した。

前より、私は強く、そして優しくなった気がした。

仕事も、パート仕事から、フル勤務に
しかも観光地で英語を使える仕事に就くことができた。
栗城講演会の準備と、新しい仕事、そして子どものいない人生を歩むと決めたことで、私の生活は、充実していった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?