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それからは、いつもポケットに小さい折り鶴を入れていた。


言葉の通じない場所で、
てんてこまいで、
その日、泊まる場所を見つけるために、
猛烈に必死だった。
そんな、「旅」とは、とても言えないことを
したことがあった。
わざわざ、外国へ迷子になりに行ったようだった。
ヒースロー空港へ降りたすぐ後から、
あぁ、馬鹿なことしちゃったな。。と後悔した。


ヨーロッパのお金は、まだユーロじゃなかった。
「トーマスクック(だったと思う)」の赤い
路線地図と時刻表の本を頼りに、地球の歩き方を
お守りのように握りしめて。
いつも、怯えた顔をしていたと思う。


なんであんな無謀なことをしたのか、
今思うと、背筋が冷たくなるけれど、
あの年齢の自分なりに、
色々ケリをつけたい思いが強かったから、
飛び出したのだろう。


宿が簡単に見つかったり、
親切な人に出会うと、
「よーし、これは度胸試しの旅だー!」
と意気込み、
日暮れギリギリになっても、
宿が見つからないときや、
いやな人に出会った日は、
「早く2ヶ月終われー!」
としょんぼりしたり、
そんなことの繰り返しだった。

度胸はつかなかった。
言葉もほとんど覚えず帰ってきた。

言葉の通じない場所で、
一番感じたこと、

どこへ行っても、どんな境遇でも、
やさしい人はやさしい。
いじわるな人はいじわるだ。
どこに行っても同じだった。


やさしかった人たちのおかげで、
無事に帰って
今、こうして暮らしている。
やさしかった人たちに、
「ありがとう」と言う言葉以上の想いを
伝えたかったけれど、難しかった。
それで、小さな折り鶴を折って、差し出した。
すると、もらった人は、手のひらの上に
ちょこんと乗った鶴を、面白そうに眺めて
喜んでくれた。
それからは、いつもポケットに小さい折り鶴を入れていた。


デジカメもちゃんとしたカメラも持って行かなかったので、
「写ルンです」で撮った何枚かだけが、今残っている。
久々に片付けながら見たら、色あせているので、
ふと気づいたときに、
ここに、少しずつ写真をのこすことにした。

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『 国や言葉が違っても、
いい人って、やっぱりいるよ。
そっちに心のピントを合わせたら、
やなことは、どうでも良くなるからさ。
だからさ。。心の折れたとこから、
また根っこを出してほしい。』

あの時の自分から、
今の自分へのタイムカプセルみたいな
メモがひらりと出てきた。







熊本の小さな集落で、ひょうたんを育てながら、 「お話とらんぷ」をテーマに、ひょうたんの らんぷをつくっています。 イヌ、ネコ、山の暮らしの風景と、 らんぷのことを、 少しずつ書きます。