いつもの春

生ぬるい温度が世界をあらわにしていく
泥で薄汚れた溶けかけの雪
雪の下で眠っていた葉の死骸たち
春の訪れはいつだって少し埃っぽい
全てが白い雪の下で眠っていた世界

でも、萎れた草木はいつか気づく
春が我々を揺り起こそうとしていることに
冷たい土の上ですっかり眠っていた枯れ草は
いつの間にか色を取り戻して起き上がる
色の乏しい世界に蕾が姿を現し
「あの花はなんだっけ?」と、いつもと同じ会話をし始める

世界に春が来たのだ
世界は春に染まっていく
全てが目を覚まして、瞬きをする
その度に風が吹いて、冬の名残を吹き散らしてく
陽の光が体に染み渡っていくみたいで
私は太陽の下を選んで歩く

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