人の目

「まあいっか」と自己否定を繰り返して、日々は通り過ぎていく
体を横切っていく、通りすがりにナイフを振り翳して
傷もついていない胸の中を庇っては、私は泣き真似を繰り返すのだ
まるでスクランブル交差点の真ん中みたい
人に溢れているのに、誰もが誰かを気に留めない
信号を渡るのは、目的地に向かうため
目に映るのはただそれだけだ

誰もいないところを求めていた
人並みの中は孤独だから
こちらを見ない目が訪れてはさっていく光景が
悲しくてたまらなかったから
目のない場所で、私はやっと息継ぎをする
空を見る、木を見る、花を見る
私だけの世界

柔らかくて、痛みのない場所
包まれて、呼吸も止まって
私は還る、元の場所へ
何もない場所
何もいらない場所
自分勝手だけでできた、小さな箱庭
優しい、水の底

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