炎の悪魔

裏切りが俺の頭上から降り注ぎ、絶望が足元から俺を貫いた。

足りないまま生き続けた体にお前がくれたのは、確かに俺の中のどこかを満たしていた。
存在の喪失は、覚悟で乗り越えることに決めた。俺の中にある意味のある過去が、記憶が、狂った頭に小さな希望を灯し続けていたから。
許せないものへの怒りを持ち続けていたとしても、その怒りだけで生きていかなくてもいいということを教えてくれたから。

全てが嘘で出来ていたことを知った日、俺は自分の存在の全てがあやふやになって。生きる形を辛うじて保てたのは、身も心も焼き尽くさんばかりの怒りがあったから。燃えても、燃えても、黒焦げの消し炭になれないくらい、そこには確かな自分の存在があった。それだけが、生の理由であると確信できた。
存在していないことよりも、存在していないという嘘を乗り越えようとしていた自分の空虚さが、俺には許せなかった。

お前は何かのために「生きたい」と言った。そんなものが嘘の始まりなのだとしたら、あまりにも割に合わない。俺は希望を持つ横顔に背を向けられるほど善人ではなかった。知っていたはずだ。俺も、お前も。

俺はお前を焼き尽くす悪夢になろう。お前は目を開けたまま、夢を見続ければいい。現実を愛そうとするのなら、お前が目を背けたくなる焼野原を見せてやる。最後の最後まで、お前の目に映るのは真っ赤な炎であるように。

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