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えま

『カラスムギを胸に抱いて、』アナザーストーリー 川島恵麻という人

「まりこ、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。」
路上ライブ終わりの帰宅する時の会話。
どうやら、まりこは少し体調が悪くなったらしい。
「本当に?急に雨降ってきちゃったからね~。降ったら冷えてきちゃったし」
「ホント、雨降るなんて言ってなかったじゃんね」
二人は何とか最寄りの駅までは電車でたどり着いた。
「よし、決めた❗今日はタクシーで帰ろう❗雨が結構強いし。」
「えっ?だって…」
「大丈夫、大丈夫。ほら、雨降ってきて片付け手伝ってくれてたじゃない、うちのファミリーの皆さん。」
「うん」
「こっそりとO木さんがね、『まりこさん、体調悪そうだから、これでタクシーで帰りな』ってお布施をくれたの。だからタクシーで帰らないと着服になっちゃうの❗」
「あっ、えま❗そういうのは……」
「はい、ストップ❗まりこはんの言いたいことは重々わかります。普段なら絶対にそんなことしません❗だけど、あんまり顔色良くないしさ…」
「もう、そんなこと言われたら文句言えないじゃん…」
「そう、まりこはん。文句は言わないでね。おばちゃんがひとっ走り行ってタクシーつかまえてくるから。こっちの小さい荷物だけお願いね。」
「はい、じゃあ今日は素直に甘えて。えまおばちゃん、よろしくね。」
「任せておき~」
そういうと、えまは大きいカートを引きずってエレベーターの方へ走っていった。

「ラッキー🎵誰もいない、さすがにこれ持って階段はキツいからね。さて、改札階と」
(ガクンっ❗ウィーン…)
「んっ?」
えまはまだ気づいていない…。これが天空へ続くエレベーターだとは。

「(あれ?何か長くない?改札階ってこんなに時間かかるっけ?)」
(ガタガタ❗ガタガタン❗)
「へっ⁉️なに⁉️」
(チン🎵)
「(あっ、やっと着いた)」
扉が開いたその先には、椅子に座った髭を生やした小さな老人が座っていた。

えま「……?ここは…??」
老人「ここは天空の…」
えま「天空って、何?」
老人「いや、だから天空の…」
えま「あなたは誰なの?」
老人「(人の話しを聞かないな苦笑)私は…君たちの世界で言うと神様かな」
えま「神様?冗談ですよね?」
老人「あの駅のエレベーターは稀に天空に繋がる時があるんだよ」
えま「てことは、私は死んだの?」
老人「いやいや、天国ではないから死んではいないよ(微笑)」
えま「じゃあ…何で?」
老人「今日、貴方は道に迷った老女に親切に道案内してあげましたよね」
えま「あぁ、おばあちゃん。知っているとこだったから。それで路上ライブには遅刻しそうになったけど(笑)」
老人「我々は定期的に善行をした人をこちらにきてもらって一つだけ願いをかなえてあげているんだよ」
えま「願いごと?どんな?」
老人「何でも。どんな願いでも」
えま「じゃあ…いい、おじさん❗」
老人「おじさんって…」
えま「私は急いでいるの❗まりこが具合悪そうだから❗だから早く戻して❗」
老人「願いごとは…」
えま「願いごと?まりこの具合を良くして❗そして早く戻して❗」
老人「本当にそれでいいのかい?大金を手にするとか、爆発的に売れるとか…」
えま「いいから、早く戻してください❗お願い❗」
老人「承知致した。では願いをかなえよう」

えまは地上へと戻された。

(チン❗)
「着いた。さあ早くタクシーつかまえないとね」
「えま~❗」階段を駆け上がってくるまりこ。
「ちょ、ちょっと、まりこ?そんなダッシュで。あなた…」
「なんかね、急にスッキリして力がみなぎってきたのよ。本当だよ❗じゃなきゃ、ダッシュなんてできないじゃない。」
「あぁ…確かにね。。。」

そう、地上に降りてきた時点で
先ほどのやり取りはえまの記憶からは一切消し去られていた。

えま、こと川島恵麻とは誰よりも相方を案じる優しい娘です。

『カラムネ、』が愛される理由がわかる気がします。

えま編 完

#作 #超短編小説風 #片耳にカラスムギ
#えま #まりこ





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