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街頭アンケートから恋が始まった話

新宿駅付近を歩いていたら、女性に声をかけられました。


女性「すみません、急に声かけちゃって!いま街頭アンケートやってまして!単身男性の住居問題についてのアンケートなんですけど、1,2分で終わるんですけどいいですか?」

特段急ぐ用事もないので、2,3分ならと思いアンケートを受けました。加藤夏希さんに似た、可愛らしく愛嬌のある女性でした。

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初見で単身男性と決めつけられたことはやや気にかかりましたが。(これはバキバキ童貞のインタビューの時から、ずっとそう)


住居問題についてのアンケート。
「まず何人で住んでるんですか?」と聞かれました。なんてことない質問ですが、私はぎくりとしました。答えにくい部分だったからです。



説明すると僕はふだん、気持ち悪いと呼ばれる芸人同士で5人でルームシェア生活をしています。巷ではキモシェアハウス、などと蔑称で呼ばれています(レンタルぶさいくなどと同居している) 。

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↑ABEMA Primeにてルームシェアが紹介された時の模様。煽られている。

3LDKの間取りに5人居るので、人数に対して部屋が足りません。そのため僕は押入れで寝るなどして過酷なルームシェア生活で家賃を浮かせています。

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↑押し入れに暮らす画像。絵を飾っている


このようなことを住居アンケートとはいえ、初対面の女性に言ったらとドン引きされると思いました。女性にドン引きされるのはどんな形であれもうこりごりなんです。
そのため、どういうカッコつけなのかは分かりませんが「3人で住んでます」と答えました。とっさに2人サバ読んでしまいました。

女性「ルームシェアですか!珍しいですね〜、じゃあ〜、今のお部屋に対して不満とかありますか?たとえば、狭いとか・・・」

自分「そ、そうですね、確かにめちゃくちゃ狭いです。足も伸ばせないくらい。あと暗いし、湿気がたまりやすいですね」
などと、テンパって、まんま押入れの感想を口走ってしまいました。

女性「あー…日当たりがあまり良くないんですか?」

自分「日当たりっていうか…wそもそも暗くて光は入らない空間って言うか…人が本来入る場所じゃないっていうか…」

なんだそこは。座敷牢か?
アンケートの方に座敷牢あがりの奇人だと思われていないか。


とはいえ、女性はこういった質問やしどろもどろ男に慣れているのか、にこやかに受け答えをしてくれました。
だいぶ打ち解けた雰囲気さえ出てきました。
すると突然こんなことを聞いてきました。

女性「余談なんですけど、私何歳に見えますか?多分お兄さんが思ってるより若いですよ〜」

こんな質問初めてされました。
どう答えればいい?

女性「私、よく27歳とかって言われちゃうんですよねー。」

自分「え、そうなんですか、、じゃあ、、、25歳とか?」

女性「ブーブー!実は22歳です!新卒ホヤホヤです!入社して1年目だから街頭インタビューとか駆り出されちゃうんですよーw」

自分「ええ…それは大変ですね・・・」

女性「そうなんですよ、ははっwお兄さん優しい!」

自分「え、はは、いやそんな、普通ですよぬふし」

女性「あ!ごめんなさいw 質問に戻りますね!」






好きかもしれない。
そう思いました。愛嬌と素朴さがとても魅力的な方でした。



アンケートは、上記のような脱線、雑談を幾度と繰り返したため2,3分では終わらず、体感で20分ほどかかったと思います。
終わり際に女性から名刺をもらいました。


女性「アンケートに答えていただいてありがとうございます!いや、実はわたし、誰もアンケート答えてくれなくて泣きそうだったんです!でも山口さん(名乗った)が立ち止まってくれて本当に嬉しかったです。」

女性「そこでなんですけど。今はお忙しいと思うので、今夜にでもお礼の電話をしたいんですけど、いいですか??サンキューコールって言って、アンケート答えてくれた方にお礼の電話をしてるんです~」

女性「どうしてももう一度山口さんとお話ししたくて!その…電話番号って私と交換してくれないですか…?

”もう一度お話したい…”、とろけそうなことを言ってくれるぜ…。しかし、さすがに不信感が勝ちました。街頭アンケートの方に電話番号を聞かれるというのはどうみても怪しいです。
「さすがに個人情報なので、控えたいです」と伝えました。すると…

女性「あー、山口さん、今ひょっとして、怪しいかもって思いました〜?そうですよね…街であっただけの知らない人に電話なんて教えられないですよね…。でも信じてほしいんですけど本当にお礼を言いたい気持ちでいっぱいなんです…(うるうる)」

などと言い、壮絶に落ち込んでいる表情を浮かべました。第一志望校に落ちたかのような絶望の形相。
かと思えば、ぱーっと華やいだ明るい笑顔に切り替わって


女性「じゃあ山口さんは、私か、知らないおばさんだったらどっちと電話したいですか?」

自分「そりゃ、まあ、あ、あなたですけど」

女性「え!!私と喋りたいんですか!?嬉しい〜!!山口さんってホントいい人ですね!なんか期待しちゃうな〜!」

と大はしゃぎしています。そのあとも優しさとか、アンケート時の応対の良さなどめちゃめちゃ褒めてくれて、強く断りにくくなりました。

女性「怪しくないですよ。名刺にも書いてますけど、ちゃんと○○証明書(不動産販売に必要らしい)も取得してる会社ですし!カスタマーセンターもあるので、不安だったら電話してもらっても大丈夫です!笑」

女性「夜11時しか電話できる時間がないんですか??大丈夫です!11時に電話できますよ!うち、営業時間長いんで!笑」

結果的に、ゴリ押しとゴリ褒めに観念して、電話番号を交換しました。彼女が喜ぶならいいかと思わされる何かがありました。






お察しの方がほとんどだと思いますが、これは詐欺でした。一般にデート商法と呼ばれるものです。デート商法とは。以下ネットの引用です。

"デート商法は、異性に対して電話で呼び出したり街頭で声をかけたりしてデートなどに誘い出して、仲良くなったところで相手の恋愛感情を悪用して高額な商品を契約させる商法です。
街角で声をかけたり、婚活パーティーなどで出会ったりするところから始まることが多く、ターゲットに好意があるフリをしてデートに誘い、ある程度仲が良くなったところで高額な商品や投資の話を持ち出すというのが良くあるパターンです。相手に対する恋愛感情を持っているため、「断ったら嫌われてしまうかもしれない」という心理につけ込むところが悪質です。
近年では知り合ってから実際の勧誘が行われるまでに何度もデートを重ねるという手法も増えており、ちょうど相手の警戒心が和らいで、恋愛感情が高まってきたちょうどいいタイミングで商品の話題を持ち出すことも多く、「相手のことを信じたい」という気持ちがより被害を拡大させています。"

まんまこれの通りでした。念のため名刺をあらためますと、会社のホームぺージこそお粗末ながら存在はしていましたが、カスタマーセンターの電話番号は広島県の中古自動車販売会社の番号でした。デタラメです。

僕はデート商法については知らなかったですが、勧誘の時点で彼女の悪意に気付くことはできました。では何故、電話番号を交換してしまったのか。


ネットにはよく「デート商法の女性を叱った。なんなら改心させて足を洗わせた」という話が転がっていますが、そんな親心ではありません。


ぼくはもう、女性と喋りたくて仕方ありませんでした。電話でお話したかったのです。
詐欺師でも構わないから、恋人気分を味わいたかったのです。


"詐欺師には、人を騙して金銭を巻き上げる白サギ、異性を餌として心と体を弄ぶ赤サギ、そしてシロサギやアカサギのみを喰らう黒サギがいる"といいます(ドラマ「クロサギ」より)

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僕はクロサギになろうと決めました。ぐんぴぃは山Pになると決意したのです(すみません)



電話番号を教えてからというもの、毎晩のように詐欺子から電話がきました。内容はいたってとりとめのない話。こちらのなんてことない話に大きく笑って、褒めて頷いて。勧誘の気配はありません。
「この子は、本当に僕のことが好きなのではないか?」という希望が顔をもたげるのを、何度も水の中に押さえつけました。

とはいえ、話をよく聞くとかなり無理がありました。
詐欺子「わたし、山口さんの優しさにパワーもらってるんです!あの時、アンケートに答えてくれて、すごい優しい人だと思って!山口さんが優しいから、わたしハッピーオーラが出るんです!」

よく聞くと優しさについてしか言及していません。"優しさ"一本槍。無理のある角度からの褒めの連打なんです。めちゃくちゃ違和感がありました。


それでも女性と話せるというのは貴重なので、心だけは許さずに、デート商法をキャバクラと割り切る日々を過ごしました。同居人たちにもスピーカーで通話を聞いてもらいました。デート商法キャバクラのおすそ分けです。
結果、同居人も詐欺子をちょっと好きになっていました。敵はやはりプロなのです。

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デート商法の子とのメール。なぜか同じメッセージを二度ずつ送ってくる


ある日、詐欺子ととりとめのない通話をしていたら、進展がありました。

詐欺子「私、山口さんの話をいろんな人にしちゃうんです!そしたら上司が聞きつけちゃって。なんか山口さんと話したいって言うんですよ~wそんなに"いい人"がいるなら喋ってみたいって。今度上司に紹介してもいいですか??


…これはいけません。詐欺師の上司です。
詐欺師のルートがステップアップしています。彼女の最終目的は僕に高い商材を売りつけること。詐欺師の上司の到来は、このキャバクラの終焉を意味します。なんとか防がなくてはなりません。などと考えていると…

詐欺子「あ、上司がちょうど来ました!代わっていいですか~?w」スチャッ

自分「あ、、え、、」

詐欺上司「あ、お電話変わりました、△△です。いつもうちの者がお世話になっております」


なんと強制的に詐欺上司とエンカウントさせられてしまいました。非常にまずい。


詐欺上司「うちの〇〇(詐欺子の名前)が、いつも山口さんの話をしてましてね…笑 ぜひ一度お話してみたかったんですよ。もしよければ、一度お会いしませんか。うちの〇〇も会いたがってますよ」

詐欺子「ちょっと△△さん!急になんなんですか!////照」(電話の横から漏れ聞こえる)

詐欺上司「よければぜひお会いしましょう。日時など都合のいい日があればおっしゃってください。
そうだ、どうせお会いするなら、私たちの仕事も知っておいてほしいですね。よければ私どものセミナーにいらっしゃいませんか?通常は有料のセミナーなんですが、山口さんは〇〇のお気に入りなので、特別に無料で受講できるように手配します!いかがでしょうか」


ぐいぐい来ます。詐欺上司がフィニッシュに向けて最短距離をたたき出しています。
様子がおかしい。今まで勧誘の気配など一切なかったのに。
断れる雰囲気でもなかったので、一度日程を調べるといい、その電話を切りました。


混乱しました。デート商法の流れとして、まず一度は本人とデートするターンがあるはずなんです。デート商法と言うぐらいなので。
実際に会った上で、女性からの更なるアプローチがあって。メロメロにされて。会わせたい人がいる、と仲間を紹介されて。果てにセミナーに誘われる、というのが彼らの常套手段なのです。

デート商法は、デートさえしなければ延々とキャバクラのノリで電話し続けられるという勝算がありました。ましてデートしても、仲間の紹介は断ればいいと思っていました。

しかし現実は。デートをすっぽ抜かして、詐欺上司が召喚され、セミナーへの招集がなされているのです。計算が大きく外れました。


どうして、詐欺子側がこのような急ピッチで仕掛けてきたのか。

同居人のならたに相談しました。すると彼はこの現象を推理して語り始めました。

ならた「さすがに、ぐんぴぃさんが童貞すぎたんじゃないですかね。チョロすぎるっていうか。女慣れしてない感じで毎晩電話して、楽しく喋って。詐欺子からしたら上手く行きすぎてるんで、デート抜きで最短ルートでフィニッシュかけれると判断されたんですよ」

なんと。徹底的に騙されたフリをしていたのですが、童貞感の強さで、デートをすっぽかしても大丈夫と判断されたようでした。悔しいですが、ここまでです。


同居人で後輩のならたを連れて、会場に乗り込むことも考えましたが、もろもろあって諦めました。詐欺子の電話番号を着信拒否にしました。



…僕の恋、デート商法編は急に終わりを告げました。今度は、デート商法でなく、真の恋を見つけたいと思います。男はつらいよ。

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こんど、こう言ったことも話す「バキバキ童貞卒業への道」というライブもありますので、ぜひご覧ください。



おわり。



P.S.

同居してる後輩のならたも、デート商法キャバクラを真似しようとして。「斎藤さん」という、不特定の人と通話できるアプリをDLしてやってました。
結果、男と分かった時点で向こうからワン切りされまくったり、めちゃくちゃ変な奴に捕まってて笑いました(↓動画。Twitterに飛んじゃいます)

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最後に、デート商法とわかっても、電話番号を交換するのはぜったいにやめましょう!危険です!



身に覚えのない慰謝料にあてます。