無敵の人、無敵の理論

西村博之という「2ちゃんねる」という匿名掲示板を作った人がいる。彼が提唱した「無敵の人」という概念がある。無敵の人とは、失うものがない人が犯罪を犯しても損することがないので、結果として無敵になる、というおはなしだ。

「無敵の人」の概念のおもしろさは、弱者であるがゆえに逆転して強者(といってよいのかどうかむずかしいが)になる、というギャップだ。

この世の中、無敵なものってあまりない。多くのものは、あるものには勝ち、あるものには負ける。じゃんけんのように。

本当の無敵って、実はつまらない。じゃんけんで、いつも勝てるものがあれば、そもそもゲームが成り立たない。

スーパーマリオブラザーズでスターを取ると無敵になるが、調子にのって穴に落ちてしまうと死んでしまう。ワンパンマンの最強キャラであるサイタマも、格闘ゲーム化されたときには到着まで時間がかかるという設定になっている。コンピュータゲームにおいても、無敵はゲームが成り立つように弱められているのだ。

他人がなにか行動した結果、困った状況に陥っているのを「自己責任」と切り捨てる人がいる。

この文章を書いている2020年3月末、世間は新型コロナ関連の話題でもちきりだが、「フリーランスで補償額がすくないのは自己責任」という主張を見かけた。

ぼくは、「自己責任」というのは、無敵ワードだと思っている。だって、あらゆるものに当てはめることができ、それに反論することはむずかしいからだ。

「自己責任」という言葉は、それそのものは実質何も言っていない。ただ、そのような言葉を他人に投げかける人の行動は、「お前が悪い」「俺は責任を持たない」ということを主張している。

なので、「自己責任」という言葉を使う人を見ると、それだけでかなり「うへぇ」という気分になる。「私は性格が悪うございますよ」と言っているだけに見えて。

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中年ITエンジニアであるグニャラくんが、零細株式会社の運営や、普段考えていること、インターネット生放送で出た話などの日々の様子を書いていま…

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