『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』各シーンや登場人物の考察

https://note.com/guriko_hori/n/n26541f131d5a

映画から受け取ったメッセージ的なものは前に上記でまとめたので、今回は各シーンや登場人物たちについて自分なりに好きなところ、思ったこと、考察などをまとめようと思います。

※以下おもいっきりネタバレ





各シーン振り返り

頭から思い出しながら書いていたら、目次だけでえらいことになってしまった。
文字数のカウント見たら3万字超えててこわい。
あらすじをそのまま書き写した読書感想文のようになってしまっている部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。
記憶だけに頼っているので、抜け落ちや思い違い、順番の混乱もあるかもしれません。
円盤が出てから読み返したら面白そう……円盤出ますよね!?!?

考察めいた部分は個人的な考えなので、正解は分からないし、人様の考察も読みたい。
書き終わる前に見すぎるたらひっぱられそうなので、今のところは偶然流れてきて目にしたものぐらいしか見ていません。
これを書き終えたら、たくさん読み漁るぞ~!!


■廃村に向かう鬼太郎たちと記者

毎度おなじみ、めがね出っ歯の山田!
安心感すらありますね。
鬼太郎の出生に関する何かしらの情報を掴んで哭倉村を訪れたというのはどんな情報だったんだろう。

トンネルを抜ける鬼太郎たちが猫娘の「しつこい記者ね」という言葉を無視して、「おかあさん…」とつぶやく瞬間が印象的でした。
目玉の親父から時弥君の話を聞いたと言っていたし、村でのできごとを把握していたことを考えると、お母さんが血を奪われつつも10年以上自分を身籠り続けて守ってくれた場所に向かう覚悟からのつぶやきなのかなあ。

「あれから70年」という時点で、水木はすでに亡くなっている可能性が高いので、目玉おやじの「あの男もここに来ているかもしれんのう」という言葉は、魂などの形で見に来ているかもしれないという意味なんでしょうか。

廃村をうろつく記者、ときどき水木が初めて村に入ったときのアングルに近いカットがあるの好きです。
意味深な甲冑が倒れこんできたり、市松人形のどアップが映ったり、「いかにも」な血まみれのベッドや医療器具、ぼろぼろの鳥居だらけの通路があったり、初見時は「お化け屋敷的な演出だ~!ホラーっぽい!」としか思わなかったのに、2周目以降に意味が変わってくるのがすごい。
1つ目の感想でも書いたんですが、人形については電車の女の子の思いを感じて泣きそうになってしまいます。
甲冑はどうしても(鼻フック……)って思っちゃうごめん。

時貞の球は、最初に見たときは「あーこりゃねずみ男がまたやばい封印のお札を剥がす系のやらかしをして、なんやかんやで球にされたんだな」と思ったんですがジジイの球でした。冤罪かけてごめんねねずちゃん。
声の違いもエフェクトがかかってるからかなあと思ったんですよね。
あの球については1回見ただけでも「最初のあの球ジジイだったんか!ざまあみろ!」となるの本当によくできてる。

■昭和の東京、帝国血液銀行からの夜行列車

決してきれいではない街並みからの血液銀行、血を売りに来ている人たちだと思われる階段の列の、みんなぐったりしている感じも生々しい。
社内の空間のたばこの煙の濃さには昭和を感じてウワー!となった。
小さいころにあのぐらいのたばこの煙の感じをギリ体験している世代なんですが、そこから令和にかけてで部屋が白く曇るほどのたばこの煙に囲まれることって少なくなりましたよね。

社長室での会話
人間に改造されて飼われている頂天眼の出目金、最初は気味の悪いタイプの金魚をえらくアップで映すわねと思ったら、トークショーのレポでこの先の屍人たちや幽霊族が捕らえられて飼われている展開の暗喩になっているというのを見て、ほんと隅々まで行き届いてるなあと感心しました。
禿山社長のキャラデザが原作まんまなのニコニコしちゃう。蝶ネクタイかわいいですよね。

時貞翁の訃報を聞きつけ「チャンス!」という顔をして、盗み聞きからの社長室に勝手に入って話に混ざる水木、ほんとに野心ギラギラだとわかる。
社長たちは過去に血液銀行から村に行って戻らなくなった人間がいたことを伏せたまま水木を行かせるあたり、水木が感じている通り使い捨ての駒としか思ってないんですよね。
水木が哭倉村の名前を出したときの、「行ったことあるのかね!?(そして戻ってこられたのかね!?)」という食いつきが生々しくてよい。

金魚のアップからフェードで移り替わって夜行列車のシーン。
金魚が月に、水槽の中の装飾が汽車の出てくるトンネルのある山にスムーズに移りかわるのすごい。
電車の中もたばこの煙がもっくもくだしゴミは落ちてるしで昭和って感じですね。

人形持った女の子が咳き込むところ、よく見たら通路挟んだ席で裏鬼道のカッパ頭と角刈りがにやにや親子のことを見ていて、応援上映的なものがあったら「今すぐ電車降りてー!!逃げてー!!!煉獄さん助けてー!!!」って叫びたくなりそう。
煉獄さんはいません。

親子は電車にたまたま乗っていて攫いやすそうな人を品定めして連れてこられたのか、女の子の病気の治療にいい薬(M)があるからみたいな流れで裏鬼道おじたちが案内して一緒に村に向かっていたのか。

叔父が昔ピースを吸っていたので、ピースをトントンしながら龍賀の情報を整理する水木の姿を見て懐かしくなりました。
水木が持ってる資料が「スクラップブック」なの、当時はそれが普通だっただけかもしれないけど、スクラップブックを愛用していた水木しげるさんのことを感じてうれしい。

何周かして気づいたんですが、家族写真のアップのとき、よく見たらジジイが抱っこしている赤ちゃんに時ちゃんの泣きぼくろが無くて、隣に写っている沙代さんはちゃんと泣きぼくろあるからおそらく描き忘れとかでもなさそうで、ねえこれいつの写真!!??赤ちゃん誰!!??ってなってしまう。こわい。

ホクロのことに気づいてから気をつけて映画を見ると、スクラップブックの写真の周りの名前のメモ書きに「時弥」の記載が無いし、写真の姿と照らし合わせるカットが時ちゃんと会ったときには入らないことに気づきました。
10年前に心を失ったとされている孝三が正常=少なくともあの写真は10年以上前だとすると、あの赤ちゃんから成長したにしては今の時ちゃんの姿が幼なすぎるというのもあるし、あれが時ちゃんじゃないなら庚子も嫁入り前だろうから長田が写ってないのもしっくり来てしまう。こわい。
おそらくあの写真の赤ちゃんは近親交配で産まれた子どもゆえの弱さですぐに亡くなってしまったんだろうなあ、他にもたくさん長生きできなかった赤ちゃんがいるんだろうなあと思うと、龍賀一族のやっていることって本当におぞましいですよね。

たばこに火をつけようとした水木が子どもの咳で一瞬手を止めたように見えるところで、鬼太郎の父が登場。
最初に見えるのが窓ガラス越しの姿なの好きです。
たぶん鬼太郎の父が来なければそのまま火をつけていたと思うけど、ほんの一瞬ためらうさじ加減が絶妙ですよね。

警告どおり、水木にはこの先ほんとにとんでもない地獄が待っておったね。。
電車で見かけた日本兵の霊を大勢連れた人間と、この先相棒・友となって、その友の未来を見るために自分が犠牲になろうとは、このときの鬼太郎の父も全然思っていなかっただろうなあ。

白髪で着流しであの口調だから最初「爺さん」って言われてるのちょっとふふっとなりました。

■哭倉村入村

駅から村に向かうタクシーの中で、最初の戦争回想シーンが挟まります。「死にたくない……」と呟く水木たち玉砕部隊の生存兵たちが浜辺で処遇を待っている姿と、参謀たちの再突入させるのだという『総員玉砕せよ!』を彷彿とさせる会話。
前の感想でも書きましたが、私は戦記物で水木しげるさんの沼にはまったので、この回想だけでもう、この映画『総員玉砕せよ!』もやってくれるんですね……!?と背筋が伸びました。
そうだよね、これ『水木しげるさん生誕100周年記念作品』ですもんね。

山道で離合する車が積載人数オーバーっぽいのも昭和を感じる。
あの道の先に哭倉村しかないとしたら、あの車は誰が乗っててどこに向かってたんだろう。

トンネルを抜けて、入村。
めっちゃくちゃ風景描写がきれいで一気に引きこまれますよね。BGMももの悲しい感じで美しくて大好き。

それと同時に、祠の格子越しの監視されているようなアングルや、田んぼのカカシの近くにいた第一村人が蜘蛛の子を散らすように逃げるカットで不穏さもしっかり感じさせてきます。

村までの経路の中で特に、勾配が急な下り坂でちょっと早足になるときの体重移動の感じがリアルで好きです。

■沙代さん時ちゃんとの出会い

沙代さんを見つけて、タバコを放り捨てて(昭和~)ネクタイ整えてから声をかける水木。
このときの水木はまじで「克典社長の娘に取り入るチャンス!」としか思ってなさそうなんですよね。
沙代さんのこと、見目の良いかわいらしいお嬢さんだとは思ってるだろうけど、呼び方が「沙代……さん」だったの、おそらく「沙代さん」か「沙代ちゃん」か迷った間だと思うので、そこを迷うぐらいには子どもだとしか思ってないのがわかってしんどい。

沙代さんのほうは、都会から来たという、のちに丙江が「佐田啓二みたい」と評する男前に、あんなスマートな対応で助けてもらったら、そりゃぽーっともなりますわ。
でも、彼女もただの夢見る少女ではなく敏い子だから、それが父や龍賀の家に近づくためのスマート対応だと気づいているとも思う。

屋敷に向かう水木を見送ってからキリッと表情が切り替わるあの時に「この人に逃がしてもらおう」と決意したのであって、よそ者のうわさを聞いて鼻緒をちぎってスタンバイ!してたわけではないと思いたい。

初見からあのキリッのときに、このこなにか「やる」わねと思ったし実際それはもう盛大にいろんなことをやるんだけど、それよりも彼女自身がやられていたことのほうがしんどすぎたよ。

時ちゃんは登場からもう明るい人懐っこい良いこで、だからこそその口から「よそ者」という言葉が出るギャップで村の閉塞ぶりがわかってぞわっとなりました。パンフのインタビューにあった、「よそ者」という言葉は時弥自身は意味を知らずにまわりの大人たちの言葉をそのまま言っているだけというのが生々しい。

二人と別れた時の水木の「よし、楽しく話せたな」みたいな表情はほんとに打算的なんですよね。
でも子どもと話すことは好きそうに感じた。

■龍賀屋敷

水木が門をくぐって長田たちに囲まれたとき、声が上ずるのよい。
戦争帰りの度胸とフィジカルがあるとはいえ、長田以外見た目があらくれすぎるしあの人数で囲まれたらそりゃびびるわなあ。

社長がでてきて、助かった~って感じでスタコラ向かうの、すごい忠犬みたいだよね。
本人に言ったらすごい嫌な顔されるだろうけど。ごめんて。

この時点ではまだ軽めのジャブ程度に感じる村のしきたりの話をしつつ、鼻フック甲冑を通り過ぎてからの、大広間。
犬神家だー!!!ってニコニコしちゃった。
あの広間の襖とか欄間の装飾が好きすぎるから1枚1枚の資料が欲しい。

ここの親族一同たちのねめつけるような視線の居心地の悪さ、とんでもないですよね。アップで黒目だけ動く感じとか、帰りたさがすごい。
立会人という名目とはいえ、あの視線が突き刺さる広間の真ん中に座らされるの嫌すぎる。
座布団も畳の縁のとこにぽいっと置かれるし。

ここで龍賀三姉妹初登場。
いきなり感じ悪くて夫婦仲もご察しという感じの乙米、写真とちがってだいぶやさぐれている丙江、遅れて入っていた時ちゃんにやさしく声をかける庚子。

そして、時ちゃんに一瞥もくれないけど水木に牽制の視線は向ける長田。

時ちゃんが入ってきたとき、「あ、おじさん!」って無邪気に話しかける時ちゃんにたいして、今頭下げててなんだかバツが悪いし、状況的に構ってあげられなくて困ってるみたいな感じすごくリアル。

時麿登場で、色んな意味でなんじゃこりゃの反応する水木。水木はこの時点で克典の当主の座やばくないか……?と察してそうなのに当の克典は口約束を信じて呑気な顔してるんですよね。詰めが甘いっ。

遺言状が読み上げられるまで自分が当主になれると信じてたんだなあ克典。
どったんばったんしながら抗議するのが滑稽でかわいそうになる。

成人後は時弥が当主と言われたときの庚子の反応はほんとにうれしそうなんですよね。このときは純粋に愛を感じる。
横の長田がピクリとも反応しない対比がしんどい。

乱闘からサッと逃げる水木、判断が早くてえらい。
そして、その水木のそばにサッと来て助けを乞う沙代さんもまた判断が早い。
「無論僕は克典社長の味方です」っていわれたときの「そうじゃなくて」といいたげな表情がなんともいえず好き。克典社長じゃなくて、「あなたの味方です」って言ってほしかったんだろうなあ。

まろのターン!
ダンッ!と足を鳴らして乱闘を止めたから、当主らしくなんかかっこいいこと言って場をおさめるのかと思ったら、「ととさまぁ~(号泣鼻水)」なの、なるほどそう来たか~!!っておおよろこびしちゃった。
水木もドン引きしとりますわ。
まあ水木にはこのあとこんなもんじゃないドン引きがこれでもかというくらい待ってるんですが……。

龍哭をきっかけにスイッチが切り替わったようにシャンとして、笏を口に当てて御籠りを促す時麿。
この不安定さが、ずっと表にでられなかった「健康面の問題」なんだろうな。

時麿と乙米の意味深な会話(2回目からは窖の封印の話だとわかる)からの、「ととさま……」
この「ととさま……」、でまたスイッチ切り替わったのかなあと思ったけど、2回目以降に見ると沙代さんに向ける視線も込みで、性欲スイッチが入ったのかよ……となっておえっとなる。

謎の少年ことねずみ男登場!
ほんっとにこの映画の中の数少ない清涼剤のようで、でてきただけで安心感がすごい。
ねずみ男にこんなに安心するなんて。

離れに通されてようやく布団で一休みする水木。
おつかれ、ゆっくり寝るんやで~と思いきや、おそらく玉砕の突撃からの、自身が白骨化する夢を見て汗だくで目を覚ましてしまってかわいそう。
落ち着くために胸の傷痕を押さえて生きていることを確認しているように見える。
水木はきっと復員してからしょっちゅうこんな夢を見てるんだろなあ。
憑いている日本兵たちが見させているのかな。

■時麿殺害

時麿の白塗りアップの断末魔からの、使用人さんの悲鳴。
親族が集まるお社に水木も駆けつける。
いったん人垣の後ろをうろうろしてから隙間にグイグイ割り込む水木、こういうとこ強い。

ねずみ男が声をかけると、御簾の向こうから白塗りの顔が迫る形で時麿が倒れてきて、その左目に深深と突き刺さる祭壇の槍。
ここから沙代さんの狂骨にやられた龍賀一族、みんな左目をやられてるんですよね。
右目は過去を見る目、左目は未来を見る目だとよく言われているので、狂骨たちが自分の未来を奪った一族に対する復讐として、未来を見る目を潰してるのかなあ。

時麿が倒れてきたときの丙江の「時麿にい!!」っていう呼び方が、あの家庭環境のわりにすごく普通の兄弟っぽくて、歪さにゾッとします。
いい歳だろうに使用人であるねずみ男から「ぼっちゃん」と呼ばれてるのも、龍賀の家の中ではすべて当主の時貞が基準だったということが分かる。
ほんとは発見者の使用人みたいに「ご当主さま」に切り替えないといけないけど、呼び慣れた方で呼んじゃったんだろうな。

親族たちが祟りじゃ……祟りじゃ……とざわつく中の一人が「哭倉さまの……」と漏らした瞬間、それは言うなという空気になったり、漏らしてしまった人が口を押さえて隠れたり、よそ者の前ではその名前を言ってはいけないしきたりとかあるのかな。
時麿の死にぺたりと座り込んで放心している感じだった乙米も、それを聞いてピクリと反応してたよね。

ざわつくお社に、長田たちが登場してよそ者を捕らえたとの報告。
長田はこのシーンだけ結婚指輪をつけてるっぽいんだけど、なんであえてここだけで?っていう違和感がすごい。
ほかにもつけてるとこあるかもしれないけど、修験者スタイルになったら手甲の紐と混ざってわかりにくくなっちゃうんですよね。

前日に親族が集合する広間で指輪を外していたことを庚子に咎められたりしたのかな。
「形だけとはいえ夫婦なのですから、ああいった場ではちゃんとしてくださらないと困ります……っ」
みたいなそういう。
庚子がそれを言える関係かどうか微妙だけど。
もし言えたとしても視線を合わせず泳がせながら、とぎれとぎれ絞り出すように言うんだろうなあきっと。

縛られた鬼太郎の父がカラン…コロン…と下駄の音を響かせながら階段を1段ずつゆっくり登ってくるの、後からきいてくる。
その姿が見えたときの、ねずみ男の「ゲゲッ!?」も、このすぐ後にきいてくる。

この映画、隙あらば後からきいてくる要素がちりばめられてる。伏線が大渋滞。

鬼太郎の父は、後のシーンで見せるフィジカルを考えると縄ぐらい切れただろうけど、正体を隠すためにいちおう縛られてやってたのかな。
縛られてもどこかのほほんとして、皆で湯にでもつからんかと言い出したりで、ああ、ほんとに後の目玉おやじなんだなあ……って。

村に災いをもたらした咎を祓うとして、いきなり斧で首を切り落とそうとする長田たち。
たじろぐのは水木だけで、親族たちはいつものことという反応だから、こういう血なまぐさいことがしょっちゅう行われていることがわかる。
鬼太郎の父のほうも抵抗する様子もないんだけど斧が振り下ろされる手前で顔を上げるのは、さすがに切られる前に本気を出して逃れようとしたのかな。

顔を上げた鬼太郎の父と目が合った瞬間、戦争のフラッシュバックからの「やめろー!!」と飛び出す水木。
戦争で仲間たちが目の前で死ぬのを見てきたからこそ、もう目の前で人に死なれるのはたくさんなんだろうなあ。

ものすごく真っ当な言葉で落ち着けと促す水木に対して親族たちが向ける「何言ってんだこいつ」みたいな白けた視線が、この村での正常と異常の逆転を感じさせてゾッとします。

水木が助けを求めたとき、克典は目を逸らすように体ごと横に向けていたので、おそらく首を切る流れから「また始まった、この村のこういう所が嫌いなんだ」という感じだったのかな。
正常さを残したまま異常な場所にいるの、ストレスすごそう。
「冗談はそのぐらいにしたまえ、東京からの客人が驚いている」という言葉だけで、長田たち、親族たち、水木それぞれにたいしてうまいこと状況説明してるの地味にすごい。

長田の合わせとけ、という視線で「へえ、すいません」になるあらくれたちも、何気に空気読む力が高いなあと思いました。
そのあと警察を呼びましょうという水木に、崖崩れがあって道が塞がったから警察は来ないという乙米。ここでもあらくれたちは長田に合わせて「間違いねえです」って空気読めてる。ただの脳筋ではない。

■座敷牢

鬼太郎の父と一緒に長田家の座敷牢のある部屋に入れられて監視を命じられた水木が、背中を向けて寝ころんだままで名前を名乗らない男に、お社でのねずみ男の「ゲゲッ!」という言葉から「ゲゲ郎」と名付けるの、由来も含めて深読み出来るようになっていてすごい。

水木しげるさんは幼いころに自分の名前を「しげる」と発音できずに「げげる」と言っていたところからあだ名が「げげ」になり、それが後にゲゲゲの~というタイトルに繋がっていて、今回の映画は鬼太郎の2人の父親の物語だけど、その2人の名前を合わせると「水木」「ゲゲ郎」という「水木しげる」さんを感じる名前になるんですよね。
『生誕100周年記念作品』ということでメタ的な意味で主役でもあり、水木しげるさんもまた鬼太郎をうみだした父と言えると思うので、「鬼太郎の父親たちの物語」という意味も深まってしまう。ほんとすごい。

タバコを吸い始める水木に1本くれと言うも「嫌だね」と断られるゲゲ郎。
「嫌だね」の言い方と表情がめちゃくちゃ良いし、これも後からたくさんきいてくる。

■三姉妹と長田

地下通路入り口の仕掛け、鼻フックなのほんとに笑っちゃうのよ。
地下から戻って、「やはり私には……」と言いながら倒れる乙米、時麿が居なくなったことで、長女の自分が窖の狂骨たちを抑えられないかと思ったけど無理だったんだろうなあ。

龍賀家の部屋での三姉妹と長田。
長田の立ち位置が「庚子の夫」じゃなくて「乙米の従者」なんよ。
ワインを煽って煙草スッパーする乙米様好きです。

お小遣いいっぱい貰ってご満悦そうな丙江、無駄遣いしませんから~といった翌日には宿に男(宝石の並んだ鞄が転がってたから宝石商?)連れ込んでお寿司とって酒飲んでるの、ほんとにやさぐれきっててよい。

いっぽう庚子は、はやく時弥を連れてこいと責め立てられて、鬱屈した感情がそろそろ限界そう。

■時ちゃんの訪問

水木の飯の食い方が、戦争で飢えたことのある人間のそれでつらい。もう大丈夫だよゆっくりお食べ。
健啖家だった水木しげるさんのことも感じさせる食べっぷりですよね。
ゲゲ郎のごはんは雑穀米とうっすいたくあんのみ。スケスケのたくあんを透かしてみてる時におめめと同じ大きさでかわいい。
あんなに薄く切るの逆に大変じゃない??

水木やっぱり子どもと話すの好きそうだよね。
時ちゃんに語った日本の明るい未来の話、ゲゲ郎にはお為ごかしと言われたけど、水木自身がそうなってほしい、自分が強くなってそんな未来を作ってやると思い描いている未来だったんじゃないかなあ。
だからこそ、お為ごかしといわれてムッとしたように見える。

大人二人が揉め始めてすぐに間に入る時ちゃん、本当に敏くていいこだよ。
難しいことだからこそ頑張りがいがあるって、その通りなんだよなあ。
このときのゲゲ郎の「また明日の」の約束が、お互い変わり果てた姿で70年後になってしまうなんて思わなかったよ。

牢屋から出してやることを条件にゲゲ郎が村に来た目的を聞き出す水木。
妻を探していると聞いて「カミさんに逃げられたのかぁ?」と揶揄う顔がすごい楽しそうだったり、写真をひょいっと奪って明かりで確認したり、けっこう野次馬なところもあるよね。
写真に写った岩子さん(映画では名前が出ていないけど、仮で岩子さんとします。)を見て「美人だ……」と漏らしちゃうのかわいい。
岩子さんのビジュアルも、そうきたかー!!こういう女性大好き!!となりました。

古い仲間から気配を感じたという報告が~と言っていたの、時貞が死んで窖の結界が弱まったことで僅かに漏れだしたものを、島の周りの池に住んでいる河童たちが感じ取ることができたのかな。
牢を抜け出してから長老っぽい河童に話を聞きにいっていたし、窖から比較的近いけど狂骨たちにあてられて暴れるほど近くもない場所に住んでるので。

写真を見つめるゲゲ郎を見て、「こいつは負け犬だな」と考える水木、このときは本当に勝ち負けや損得でしか人を見られない状態だったんだろうなあ。

牢からすぐに出してもらえないとわかったときの、「騙したのか……」でゲゲ郎の顔に影がかかって目が光るの大好き。

■野湯

抜け出した屍人を裏鬼道が始末するカット
からの、牢屋の中で目覚める水木。
初見のときには水木の夢かと思わせるようになってるのうまい。

昨晩騙された仕返しに布団ごと牢に入れちゃうのかわいい。鍵はかけないのがなんだかんだ優しいですよねゲゲ郎。

下駄の足跡を辿って野湯に到着。
目玉おやじ(人型だけど)がお風呂に入ってる!!うれしい!!
背中がとてもセクシーですありがとうございます。

このときの水木はまだ妖怪のことを認識してないけど河童長老の姿がうっすら見えていたの、多少なりともゲゲ郎と交流したことで見えるようになってきてたのかな。
河童は妖怪の中でも「まあそういう動物もいるかもな」感があるから見えやすいとかもある?
鍵のかかった牢屋から抜け出して逆に布団ごと閉じ込めたり、霊毛組紐も見せてるから、ゲゲ郎も水木相手には人外であることを隠さなくなってきてるかも。

目的を話したから牢から出せというゲゲ郎に「明日な」と言ったのも、その翌日牢屋から出すように頼みに行こうと思ってた、というのも嘘ではなかったんじゃなかろうか。

ちゃんと隠れてろよ!と念を押す水木を「はよ行け」と追いやるの、これも後からきいてくる。

この時の「はよ行け」は、河童長老との話の続きを早くしたかったぽいよね。そのあと禁域の島に向かってるし、妻の気配を感じた場所なんかを詳しくきいている途中だったのかな。

■孝三の部屋のふもと~旅館前

龍賀の屋敷に向かい、ゲゲ郎のことを頼むとは言ったもののどうしたものが……と歩いているところで、部屋の窓から孝三を見かけて「誰だ…?」とぼやく水木。後ろから現れた沙代さんが叔父の孝三だと教えてくれる。
ここで地下の工場のシーンで出てくる特徴的な鷲鼻の老婆とすれ違う。
電車に乗っていた裏鬼道のカッパ頭もそうだけど、このシーンにこいつがいた、ということは――!となるキャラは特徴的な見た目にしてくれている感じがしますよね。

沙代さんは水木をみつけて話しかけるタイミングを伺ってたんでしょうか。

孝三がああなってしまったのは禁域の島に入ったのがきっかけという話をしながら、旅館のふもとまで連れ立って歩く二人。
その姿を旅館の窓から下着姿の丙江が見つけて、酒を煽りながらけらけら笑うの、もしあんたがその男とうまいことやって村から逃げられたって、その先はこうなるのよ、という嘲り笑いに感じられて怖い。

そんなことより東京のお話を、で聞きたがるのが銀座のパーラーのお話なの、ほんとに都会に憧れる田舎のお嬢さんなんだよなあ。
沙代さんに「銀座のパーラー」のことを教えたのはさっき窓の上で笑っていた丙江なんじゃないかと思うと容赦がない。

「クリームソーダを喫しました」
って言い回し、好きです。

「今度時弥君と一緒にいらっしゃい」
という言葉で、水木は2人セットで「子どもたち」としか見ていないってわかるんだよね。
その「子ども」の前で普通にたばこ吸おうとしてるから、やっぱり電車でもゲゲ郎が現れなかったらそのまま吸ってたんじゃないかと思う。

ここで沙代さんが「私、あなたと行きたいですわ」で、子どもじゃなくて女だとアピールするの良い。
これでようやく水木も、このお嬢さんもしかして俺に懸想しつつある……?いや俺おっさんだぞ!?ぐらいに意識してそうですよね。

そこで克典社長が車で通りがかって2人を揶揄うんだけど、このときの沙代さんの「知りませんっ」って反応めっちゃくちゃかわいい。
沙代さんがかわいければかわいいほどつらくなっちゃう。

入婿の自分が当主になれると思っていたり、あれ(沙代さん)と一緒に龍賀の名もくれてやるって言ってるあたり、克典は龍賀の女の務めのことや当主になる条件みたいな深い部分も全然知らされずに、村の外との繋がりのために使われてたんだろうなあ。

■克典との密談

床の間の装飾が手あたり次第!って感じですっごい趣味悪い。

ここでの会話でも、克典は幽霊族のことやその血を入れられた屍人たちのことは全然知らないとわかる。
まだ幼い時ちゃんを当主とすることで長田家が実権を握ろうとしてるのでは~とか考えてたけど、そんなもんじゃないんだよなこの村。

克典のことは悪人だとは思わないんだけど、高い酒を飲ませて懐柔しようとしたり吸い方を教えず葉巻吸わせといて大笑いからの背中バシーン!するのパワハラおじさんのお手本って感じですね。

■禁域

水木、力がある人間に馬鹿にされるの大っ嫌い!!
「ちくしょう!馬鹿にしやがって!!」といいつつ葉巻の匂いかいでぽっけにしまうのかわいい。

とぼけ顔で舟をこいで禁域の島に向かうゲゲ郎。
おめめ閉じて口が3になってるこの顔だいすきです。

舟で追いかけようとするも、うまく漕げなくてガンガン桟橋にぶつけるのがかわいいし、それを見かねて声をかけたねずみ男が先生とおだてられて「先生!?ぼくがぁ!?」と顔を輝かせるの、ほっぺもピンクになってて本当にかわいい。
お前が清涼剤だよ。ヨーソロー♪ヨーソロー♪

島に入ったとたんに鳴り始める耳鳴りのような音と、明らかに異様な空気。
それでも道なき道をずんずん進んでいくの本当にたくましい。

「呪」の鳥居をくぐって窖に到着、窖から漏れ出す狂骨の影響が強まったのか鼻血を垂らし、狂骨にあてられて狂暴になった妖怪たちに囲まれて狼狽したところでところでゲゲ郎が登場。
このあとも鼻血いっぱい出してくれてうれしい。

暴れる妖怪たちをいなしつつどうにか交渉しようとするも、話が通じず戦うしかなくなり、水木を背負って退散するゲゲ郎。
組紐を投げつけられたサガリがまん丸に縛り上げられるのかわいい。
おなじみのリモコン下駄も駆使しつつ超絶身体能力で逃げるんだけど、鬼太郎と違って「リモコン下駄!」とかの技名を言わないのが、習熟度が上がって詠唱がいらなくなっているみたいな強さを感じられて好きです。

大ジャンプでねずみ男が待っている舟に飛び乗りからの、河童たちに舟を運んでもらって爆速で村の岸に到着。
爆速の舟が途中でさらにギアが上がるの、河童の屁のブーストすぎて大好き。(龍賀家の大広間で水木しげるさんが大好きだった「な、ぷ~ん」が炸裂しないかなあって少し期待してしまった自分がいた)

■丙江殺害

河童たちとばいばいして、ねずみ男の口から「幽霊族」という言葉が出たところで、丙江の死体が発見されて村人たちが騒ぎ出す。

水木が克典と話して島に向かっている間に、丙江はいそいそ服を着て旅館から出て沙代さんのこと脅してたんだなあ。

丙江はモズのはやにえ状態で木のてっぺんに突き刺さってカラスに目玉(やっぱり左目)を食われるってだいぶえげつない殺し方されてますよね。
乙米が悲鳴をあげてかなり取り乱してるので、やっぱりなんやかんやかわいがってたのかな。お小遣いもあげてたし。

殺す方法にも沙代さんの意思の介入があるのか、殺意がわいたときに狂骨が勝手に出てきてやってくれるのかどっちなんだろう。
最後は完全に操っていたから、だんだん操れるようになったっていうパターンもありそう。

島での体験からの丙江の死に様に狼狽してこの村はどうなってるんだ、お前はいったい何なんだ!?と混乱する水木にゆら…ゆら…と近づきながら妖怪や幽霊族は昔からどこにでもずっと居ると語るゲゲ郎、赤い背景も相まって恐ろしくて大好き。
水木が失神してしまうのも仕方ない。

場面が変わって、蛍がたくさんいるきれいな小川で語らうふたり。
気を失った水木を水辺に連れてきてあげたの、やっぱり優しい。

幽霊族の歴史を語るときの背景イメージが、バベルの塔から始まって、深い地の底のカットまで原作そのままでうれしかった。

「憐れみをかけた」という言葉にカッとなるの、水木はほんとに馬鹿にされるの嫌いなんだなあって。

妖怪のことは子守りのばあさんから聞かされていたという言葉で、この水木にものんのんばあみたいな人がいたんだなあってほっこりする。
克典のところで飲まされたウイスキーが良い品であるということがわかったりしているし、子守りを雇っていたということは、戦後に母が騙されるまではある程度裕福な家庭だったのかな。

トークショーで関さんもおっしゃられていた「目で見るものだけ見ようとするから見えんのじゃ、片方隠すくらいが丁度いい」という台詞大好きです。

■お互いの目的のために手を組む

熱に浮かされる時ちゃんのシーンを挟んで場面が変わり、長田家の座敷牢の部屋に戻っている二人。解放されてるのにゲゲ郎の定位置は牢屋の中になってるのかわいい。

ここでゲゲ郎がお蕎麦食べてるのを見て深大寺のおそばが食べたくなったので、ゲゲゲ忌の週末に食べてきました。
地方民なのでゲゲゲ忌は配信を見るにとどめていたんですが、今年はちょうど東京に行く機会があってよかったです。
でも上映会には参加できていないのでアーカイブ配信やってほしい。今年はとくにめちゃくちゃ需要があるだろうし。

水木も自分が村に来た目的を話し、お互いの目的のために手を組むことになる二人。
とはいえ、このときはまだお互い探り探りな感じする。

戦場での「M」の噂の回想が『総員玉砕せよ!』の丸太運びの場面なの、「戦場ではこんなきっかけでの死に方もあったんだなあ」という現実を感じて印象深い場面だったのでうれしかった。

このときの水木にとってのMは、自分が成り上がるために利用するものであり、敗戦で焼け跡になった日本が強くなるための希望でもあったんだよなあ。
一度ぼろぼろになったけどどうにか立ち上がりつつある日本という国と自分自身を重ねていたところもあるのかもしれない。

ポスタービジュアルにもあった座敷牢越しの背中合わせのシーンだいすき!

Mの話にでてきた「不死」というワードで幽霊族の血の可能性に気づいたからこその「何を見ても逃げるでないぞ」という言葉。重い。

村を散策しながら情報整理する二人。
ゲゲ郎がこどもに石をぶつけられて、本人は気にしてなさそうなのに「コラー!!」って追っかける水木かわいい。いいやつ。
お地蔵様を眺めたり、駄菓子屋でアイスキャンデー食べたり、水辺で涼をとったり、画面だけ見るととてものどかですよね。
沙代さんがお茶屋さんすら無いと言っていたから、あの駄菓子屋で買うお菓子が村の子どもの唯一の食の娯楽だったりするのかな。

あの村の子どもたちって学校とかどうしてたんだろう。
村から一度も出たことない沙代さんが文字を読めるということは村の中で読み書きを教えられる施設がある?
龍賀の一族以外は成人して屍人の世話のこととかを知るまでは普通に外の学校に通ってるのかな。それだと水木が村に来るときにタクシーとすれ違った車は学校までまとめて送り迎えしてたとかもあるかも。

のどかなんだけど、お地蔵さまが風車が添えられた水子地蔵なの、龍賀で生まれる子どもが近親交配で早世が多いことを表してたりします……?

■展望台での、沙代との約束

島を調べるためにあの窖をどうにかできないか、の情報を探るために沙代さんを呼び出したらしい水木と、呼び出されて期待したのに情報のためだとわかってがっかりする沙代さん。

前のシーンで「村に依代でもおれば……」という話から沙代さんのアップだったので、初見のときにもう「沙代さんが依代……ってコト……?」になっちゃった。違っててほしかったよ。

今までずっと着物だったけどワンピース姿なの、呼び出されてそわそわして、水木さんはもしかしたら洋装のほうがお好きかもしれない、と思ってワンピースにしたのかな。かわいい。

ここで沙代さんがいよいよ勝負に出て、自分を村から連れ出してほしいという願いを水木に話す。
できるかどうかよりも、一緒に居たいと思ってくれるかどうかのほうが重要と言っているとおり、きっと「村から出て自由になること」よりも「自分を一人の人間として見てくれる人」のほうをより強く求めていたんだよなあ沙代さんは。
この時の沙代さん、凛々しくて美しくて大好き。

おそらくその場しのぎの言葉だったろうけど、自分を連れ出すと言ってくれた水木の胸に飛び込む沙代さんと、ちょっと迷ってそっと肩に手を添える水木。
ここでまだ沙代さんの気持ちを利用するのに全振りなら抱きしめてたと思うので、沙代さんの本気を受けつつも、子ども相手にどうしたものか迷い始めてるんだなあと思いました。

ちょっとはしたなかいですねって頬を赤らめる沙代さん本当に可憐。

あなたが願いを叶えてくれるから私も力を尽くすと言ってくれる沙代さんに向けた、自分は本気ではない後ろめたさを含んだような表情が絶妙でよい。

■墓場での酒盛り

墓場で一人で考え事をする水木。
水木しげるさんも墓場がお好きだったことを思い出すし、アップで映る墓石の中に、貸本版の水木の名前である「秋山」家があるの芸が細かい。

そこに天狗の酒をもって現れたゲゲ郎と酒盛り。
「墓場で考え事とは趣味が良い」って台詞好き。

沙代さんの本気にきちんと向き合っていないことを窘められた流れで、自分は戦争で見たいろいろなことを引きずったまま強く生きることに必死で、人を愛せるような状態ではないと打ち明ける。
戦争のいろいろ、みんな『総員玉砕せよ!』読んでくれ……

ゲゲ郎の「そうか……」という声に慈愛のようなものを感じたので、人間の弱さやおろかさを憐れみ慈しみ愛したという妻の気持ちがこのときに少しわかって、だからそのあとぼろぼろ泣きながら妻との思い出話をしたのかなあ。

ここで明かりになるためにぼわっと出てきてくれた釣瓶火ちゃん、水木がたばこを吸おうとしたらスッと下りてきて火をつけさせてくれるし、とっても気が利いてかわいくて、ねずみ男と並ぶこの映画の癒し枠だと思います。

釣瓶火の登場に一瞬おどろくものの、「釣瓶火……か?」ですぐ順応してるの、水木ののんのんばあが聞かせていたお話の賜物ですよね。

屋上遊園地でのクリームソーダにサクランボが乗ってて、目玉おやじの好物が「サクランボ」なのってこの思い出も入ってるんですかね!?となった。
転んだ子どもにいたいのいたいのとんでけ~!してあげる岩子さん大好き。龍賀の大人は我が子すら愛さないのに、たまたま見かけた他種族の子どもを慈しむ岩子さん、どっちが化け物だよ。

水木は克典のところで飲んだお高いウイスキーと葉巻よりも、ゲゲ郎と飲んだ天狗の酒と釣瓶火に火をつけてもらったピースがうまいと感じたんだろうなあ。

必ず運命に巡り合える……っていう言葉、のちに出会って育てることになる鬼太郎はもちろん、ゲゲ郎もまた自分を変えるきっかけになった運命の相手なんですよね。

村で出会った日に1本くれといわれて「嫌だね」と断っていたたばこをここで渡すの良すぎるんよ。
受け取ったゲゲ郎もめちゃくちゃうまそうに吸うし。

この2人はここでようやく目的のために手を組むだけじゃない「相棒」になった感じがする。

■庚子と乙米

丙江が殺されたことでいよいよ焦る乙米と、とうとう我慢していたものが爆発する庚子。
ついに言ってやった!という感じでヒクヒクと笑うの、気弱な人間が爆発したときのそれで最高。
遺言状の読み上げのときは親子愛を感じたけど、このときの庚子は時弥と自分でこの家を乗っ取ってやる!に振り切れてそう。

■展望台での裏鬼道とのバトル

沙代さんの手配で、孝三と話すために再び展望台へ。
知らせに来てくれたねずみ男のゴキブリみたいな動きがかわいい。癒し。

島がビカビカ光ってるのを見て車いすから立ち上がって逃げてるし、最後の狂骨に襲われる村でも楽しそうに歩いてたから、気力がないだけで身体能力的には普通に歩けるんだよね孝三さん。

柵から落ちかけるのを引き留めたあとのゲゲ郎の、「あんた大丈夫かね」が優しくて、そのあと岩子さんの絵を見て責め立てるときの激しさとのギャップが際立ちます。
髪の毛が一瞬ぶわっとなるの好き。
孝三さんはずっとしおしおのふにゃふにゃで震えてて、映画内で見える姿はひたすらにかわいそうでかわいい。

孝三を責め立てるときの「その者はわしの妻なのじゃ!」という言葉で、長田に幽霊族バレしちゃうゲゲ郎。
そこで長田も自分が裏鬼道だということを明かす。

うれしい驚きですって言いながら面をかぶりつつの開眼が「糸目の石田彰キャラの開眼」として100点満点すぎ。やっぱり三白眼ですよね。

ここからのゲゲ郎VS裏鬼道のバトルが、何回見てもすごい。
ジャイアントスイング、歯で刃を受け止めてからの刀へし折り、建物の手すりを引きちぎって振り回す、壁掛け上がりからの飛び蹴り、床下から床をぶち壊して引きずり倒すなど、人間相手には組紐やゲタを使わず圧倒的フィジカルでねじ伏せるのが最高だし、線がびよびよしているのも躍動感を感じる。

ひととおり倒したあと、改めて長田と対峙。
長田さっきのバトルの間お着がえしてた?っていうのは無粋かな。
髑髏を構えて「唵!」で巨大狂骨登場。
正直狂骨という妖怪に京極夏彦さんの『狂骨の夢』の印象しか無かったので、狂骨ってこんなでっけえボス妖怪にしていいんだ……あと、長田や時貞が使ってる髑髏って立川流のあれか……?となりました。
孝三が「ひぃ!でたぁあ~!」っておびえてるの、きっとこの狂骨にやられたんだなあ。

狂骨相手には組紐やゲタで応戦しようとするも、幽霊族から生まれた狂骨のためか相殺され、飲み込まれてしまう。腹の中が水で満たされてるのは井戸を表してるのかな。
溺れながら「お前……たちは……」と言っているのは、狂骨の中に大量の同族たちの怨念が渦巻いていたのかな。

■お社

鎖と札で封じられて、乙米の前に引き出されるゲゲ郎。
声が潰れてるの、弱っていることを感じさせる関さんの演技が素晴らしい。

Mの原料の秘密を知ったときの水木の反応が、原料そのものに驚いたのもあると思うけど、ゲゲ郎がそれを察していたうえで自分と組んでいた覚悟にも驚いていた気がする。

自分はどうなってもいいから妻を解放してくれと願うゲゲ郎に対する乙米の言葉が、本当に幽霊族のことを道具としか見ていなくて最悪。
まあ、実の娘すら道具としてしか見てないんだから他種族の化け物だと思っているものの扱いがそうなるのは当たり前なんだけども。
化け物と呼ばれる幽霊族が夫婦、親子どころか人間に対しても愛情深くて、自分たちを崇高だと思っている龍賀の人間たちは夫婦や親子間にすら愛が感じられないの、ほんっとにどっちが化け物なんだか。

妻が血を奪われていることに激昂したゲゲ郎、躾けが必要だと言われて裏鬼道にぼこぼこに殴られながらも目をかっぴらいて乙米をにらみつけるの好き。
痛みはあるけどそれよりも妻のことが心配で自分の痛みはどうでもいいのかもしれない。つらい。

見かねて飛び出した水木が体格のいい裏鬼道に取り押さえられたと思いきや背負い投げを決めるとこはヨッ!戦争帰り!!となる。

でも、戦争帰りであるが故に乙米が語る「大義」がトラウマぶっ刺さりまくるんですよね。
乙米の語る「大義」でMを使って国を復興させるには、その裏に犠牲になって踏みにじられる幽霊族が必要で、それが戦争中「大義」のために突撃を命じた参謀や突撃させられた自分の部隊と重なってしまう。
搾取する人間がその犠牲者に対して「本望」だと決めつける勝手さたるや。
この回想シーンの参謀の目の泳ぎ方と兵士たちの白けた視線本当に最悪で最高です。
みんな『総員玉砕せよ!』読んで。何回でも言う。

あの時の水木は乙米の条件を飲んでガクッとなったわけではなくて、原料のことを知らなかったとはいえ、Mを使って自分も国も強くしようと考えていた自分は、知らず知らずのうちにあの参謀のようになりかけていたのかと気づいての脱力と「情けない……」だったのかなあと思いました。

ゲゲ郎にその心中はわからないだろうから、墓場で心を許していろいろ話して相棒になれたと思ったけど、この男はこのまま逃げてしまうかと残念に思っていそう。

■時麿の部屋

沙代さんもここで日記の内容を確認しているから、一族とこの村が幽霊族や村の外の人間を攫ってきて何をしているか詳しく知ってしまったんだよなあ。
狂骨を呼び出したときの意思疎通具合によってはもともと全部知っていたかもしれないけども。

この村の各種因習ひとつずつ、誰が、どの時点で、どこまで、どのような経緯で、知った/知らされたのか。の対応表みたいなのが欲しい。
因習の5W1H。

ねずみ男に日記を託したところで、乙米に反抗したときの興奮状態そのままの庚子が登場。
いつもの気弱な庚子おばさまなら話を聞いてくれるかも、という感じでお母さまには黙っていてほしいと頼むも「駄目よ!!」と撥ねつけられる。
ここの沙代さん、ほんとにびっくりしていて、普段の庚子とは様子が違うことがわかりますよね。
この家は私たちのもの、勝手は許さない……!と凄んでみせるところで龍哭の地響きに切り替わるの、庚子が依代?というミスリードにもなってるのかな。

■再びお社

おそらく庚子が狂骨に首を切られて左目を燭台に串刺しにされているときに起こった龍哭で激しく揺れるお社。
揺れから守るためとはいえ、庚子がやられているときに長田と乙米が抱き合ってるの本当に容赦がない。

「あの子がちゃんとお父様の子を身籠っていれば」
という言葉に、一瞬意味が理解できずに固まる水木。
私も最初固まったし、みんな固まったと思う。
何度目かを見に行った時、おそらく初見と思われる方が近くにいて、抑えきれなかったであろう「え……?」という声が聞こえた回もあった。

水木が固まることで、見ている側にも「つまり……?」を考えさせる間を与えるのうまいですよね

克典が何か言っていたようだけど~と続けるけど、別に自分が克典に「あれをくれてやる」と言われていたのに生娘じゃなかったことに動揺してるわけじゃなくて、自分の父親に自分の娘を番わせていることをこともなさげに口に出すおぞましさに動揺してるんだわ。

家族写真の時貞と沙代さんを交互にアップで映すの、沙代さんが今より幼い姿ということもあって本当に吐き気がする。
水木かわりに吐いてくれてありがとう。

最悪なことを劇中でちゃんと「最悪だ!」って言ってくれるの、観てる側としてはちょっと安心できて助かります。
そうだよ、そんなの最悪だよ。
内情を知るまでは国も人も強くするすごい薬を作って富を得たすごい一族だと思って憧れていたんだろうなあ。

■土蔵~龍賀製薬のベンチ

土蔵で気絶している水木のところに時麿の日記を持ってきてくれるねずみ男。起こし方が手の甲でぺちぺちなのやさしい。
探したぜって言ってるから土蔵に放り込まれているのを見つけるのにけっこう苦労したのかな。

土蔵の中には明かりが無かったようで、トンネル近くの街灯のあるベンチに移動して二人で日記の中身を確認。
ねずみ男はここで悲鳴をあげてドン引きしてるから、水木にわたすまで日記の中身を見たりはしなかったんだね。

「これだから人間ってやつは!」
そう!そう!ほんとにそう!!

金の匂いがすれば多少の犠牲者が出るようなことも厭わないねずみ男があそこまで嫌がって退散するって相当のことなのよ。

水木は原料が幽霊族の血であることや「龍賀の女の務め」のことだけでも辟易してただろうに、村ぐるみで村の外の人間を攫っての搾取まで行われていることが書いてあるのを見たら、そりゃ破り捨てたくもなりますよね。
これを会社に報告すれば……とは言ってたけど、おそらく沙代さんの尊厳を守るためにも報告する気は無くなっていて、Mを使ってのし上がろうとしていた自分の気持ちごと破り捨てたように見える。

そこに現れて今すぐ逃げようという沙代さん、その背後にこれまでの被害者たちと巨大な狂骨の姿が見えたことですべてを察して、それでも一緒に逃げてあげようとするの、これまで沙代さんの本気に向き合おうとしなかったことを償おうとしているように感じました。

■地下工場

ベッドに縛り付けられたゲゲ郎がエレベーターで運び込まれた先には、同じくベッドに縛られた大量の屍人たち。

電車の親子の屍人、あの親子じゃんというだけでもつらいのに、子どもは咳き込んでいて親が心配そうに呻いているということは、幽霊族の血を入れても「死なない」だけで病気が治るわけではないし、親が子どもを心配するぐらいの意識は残ったままなんだなあと気づいてさらにつらくなった。

ゲゲ郎は首を切られそうだったときは平然としていたのに、手足を切り落とされそうなときは焦ってるの、お社では札で封じられてなかったから、やっぱり水木が飛び出さずに斧が振り下ろされていても避けられたのかなあ。
縛られた腕が鬱血しているのがすごく痛々しい。

お社のときと同じく、斧が振り下ろされる寸前で水木登場!
ピンポイントに斧をはじく狙撃の腕がすごい。
逃げたと思っていた水木が戻ってきてゲゲ郎は物凄く驚いたしうれしかっただろうし、一度落ちていたぶんの信頼度爆上がりしたと思う。
相棒から友にランクアップした感。

務めのことを知っていると知らされたときの沙代さんの反応が本当につらい。乙米の「お父様のお気に入り」って言い方も最悪なんですよね。

狂骨を使った殺人のことも知られていたとわかったときの「そっか……それも知ってたんだ水木さん」というか細い声から始まってのこの先の断末魔まで、一連の種崎さんの演技が本当にすごい。

「自分を見てほしい」というのが沙代さんのいちばんの思いだったんじゃないかと思うので、あのとき水木が目を逸らさなかったらどうなっていたんだろうって毎回考えてしまう。

あの目を見開くときが、パンフのインタビューに載っていたト書きの始まりだったのかなあ。

狂骨を操るときの髪がほどけて広がって青光りする沙代さん、しんどいけど物凄く美しくもある。

「死ね!!!!!」の叫びが毎回つらい。

裏鬼道たちも村人も容赦なく皆殺しになるんだけど、全然同情できないからいっけー狂骨やっちまえ~!という心境で見てしまう。
このあと村が狂骨に襲われるときもそんな感じだった。
何も知らない子どもたちだけは助かっていてほしい。

乙米も左目を鉄パイプで穿たれるという惨い死に方。
ここで長田が初めて乙米の名前を呼ぶの、家とか一族とか村とかしきたりとか何も考えず、最初から名前を呼んでまっすぐ気持ちを伝えていれば違う未来があったかもしれないのに、今やっとなのかよ!!お前は!!

ひととおり片付いたあと、狂骨に襲わせるのではなく、自らの手で水木の首を締め上げる沙代さん、そうだよね、好きな人は自分の手で終わらせたいよね。
水木がろくに抵抗せずに絞められるのはきっと、せめて殺されてあげようという文字通り命懸けの贖罪だろうし、沙代さんはあのまま絞め殺して自分も後を追うつもりだったんだろうな。
つらいから銀座のパーラーで穏やかにクリームソーダを喫する二人が見たいです。
時ちゃんはゲゲ郎と岩子さんといっしょに東京タワー見物に行こうね。
はー現実逃避。

息絶える寸前の長田に刺され、骨も残らず砂になってしまう沙代さん。
沙代さんの断末魔の叫びも、殺されてあげることすらできなかった水木の慟哭の演技も本当に最高でした。

長田が死んだことでお札の効力が無くなり動けるようになったゲゲ郎が歩み寄ったときの水木の気持ちの切り替えすごい早いんだけど、胸の傷を押さえて切り替えているように見えたから、あの傷を押さえることで自分をコントロールしてるのかな。
ゲゲ郎の「待っておったよ」の声がすごく優しくて一瞬ほっとする。

斧を手にして鍾乳洞の鳥居を走り抜けるところの曲が、いよいよクライマックスを感じさせる疾走感で大好き。

■窖の底

窖の真上に月の光が差し込んで、まず目に飛び込んでくるのは、美しいけれどおそろしいほどに真っ赤で、映った瞬間「血の赤じゃん…」となってしまう桜。
ゲゲゲ忌コラボパンのモチーフのひとつがこの桜だったの、「食べて大丈夫!?」ってなっちゃった。
隣の席で食べていたお嬢さんたちもそう言ってた。

時ちゃんから顔だけジジイに切り替わるの、20世紀少年を思い出してしまう。子どもの身体に大人(今回はジジイ)の顔がついてるの気持ち悪いんですよね。
「魂の姿」が見えない人間にとっては顔も時ちゃんのままに見えているというのもそれはそれでえぐいけど。

「龍賀時貞その人である!」って宣言して高笑いするときの1カメ!2カメ!3カメ!の切り替わり、こういうカメラの演出がこんなにうれしくないのも珍しい。
水木には辛辣な態度でゲゲ郎には「よう来たのう~」って猫なで声で話しかけるのぞわぞわする。
猫なで声ならキャット寝子ちゃんの歌声が聴きたいんですわこっちは。
時ちゃんの体でクチャクチャ下品な飲み食いの仕方すんな。

血桜の根の中からゲゲ郎の妻を探すところ、本当に2人とも必死で見ていてつらい。
水木が鼻血どころか桜の根の返り血は浴びるわ吐血するわの血まみれでキービジュアルを思い出しました。ありがとうございます。

妻と再会できたゲゲ郎が、姿が変わっていることに驚きつつ、長い間1人にしてすまなかったと抱きしめるのも、それに対する妻の言葉が、何年も血を奪われ続けて苦しんでいたのに「相変わらず泣き虫ね」なのも、この夫婦尊すぎる。

我が子を守るために苦しい中でずっと孕み続けるってとんでもない愛ですよね。それを気色が悪い生き物と言い放つジジイ、まじで感覚がイカれてる。
自分こそが崇高だと思い込んでいる狂気。
時ちゃんの体で下品に跳ね回んな。

し、死んでる……?大丈夫……?という状態の水木が、時貞が「これでMも大増産!日本の未来は明るいわい!!」とはしゃぐのを聞いてピントが合って意識を取り戻すところ好き。
弱い者たちを踏みつけて搾取することが前提の「明るい未来」なら、そんなもんもういらねえよという意思を感じる。

ゲゲ郎と巨大狂骨との戦闘。
この巨大狂骨のデザインとか、1回ぐるんっと体をうねらせてから突っ込んでくる動きとかめちゃくちゃかっこ良くて好きです。
長田の狂骨との戦闘でリモコン下駄などがきかないことを学んだからか、髪を伸ばして縛り上げたりと自己強化系の戦闘スタイルに切り替えてるの、戦いのセンスを感じる。
飲み込まれた時に体内電気で脱出したのも、前に飲み込まれた時に水の中だったから電気がきくと思ったのかな?
それにしてもゲゲ郎さんの長髪ありがとうございます!!!好み!!!
背中に乗られた狂骨がゲゲ郎の足元から新しい頭を出現させたときに、喉元で元の頭が小さくひっこんでいくの芸が細かくて好き。
尖った骨の手刀で体を串刺しにされるのは、人間ならあれで即死だから最初見た時あせった。幽霊族の丈夫さに感謝。

血桜に縛られて諦めろと言われた時のゲゲ郎のセリフが、水木と村で出会った日にタバコをもらうのを断られたときに言われた「嫌だね」で、いっぽうその時の水木はガツン…ガツン…と斧を引き摺りながら階段を登っていて、出会った日にゲゲ郎が階段を上るカラン…コロン…という下駄の音を彷彿とさせる音を立ててるの、本当に好き。
2人が出会ったあの日からここまでの数日で本当に「相棒」になったという絆を感じますよね。

会社を2つ3つ~っていうの、あのジジイの常套句だったんだろうなあ。克典もあんな感じでお前に後事を託すって言われてそう。
美酒に美食とか言ってるけど、残念ながらゲゲ郎と墓場で飲んだ天狗の酒は金で買えねえんだわ。
村に着いた直後の水木なら乗ったかもしれないけど、今の水木は愛情深く慈しみ深い友に感化されて成長しているので。

「あんた、つまんねえなあ!!」って斧振り上げられた時の怯え方で、こいつ本体狙われたらどうしようもないんだなあってわかる。
本体や髑髏を守るための狂骨を数体残しとくっていう頭は回らないんだね。その奢りが敗因やぞ。

水木が時貞自身の頭じゃなくて持っている髑髏のほうをかち割ったの、あんなクソ野郎であっても人を殺すのはもうまっぴらだったのと、時ちゃんの体を傷つけたくなかったの両方ありそう。
ジジイはその大事な大事な時ちゃんの体で漏らすな!!

「ツケは払わなきゃなあ!」のところ、吹っ切れてて気持ち良くて好き。
狂骨が暴れて国ごと滅ぼすぞ!に対してツケを払うというのが最初よくわからなかったんだけど、日本という国が復興した裏にMの力があったと言ってたので、そのMを作るために犠牲になった者たちの怨念である狂骨が国を滅ぼすのは確かにツケを払うだなあと。

か弱い年寄りを~とか言うの、お前は今までそういう声を何人無視してきたんだよってなるし、その体は実の孫であり子でもあるか弱い子どもの「助けて……おじい様……」を無視して手に入れたもんだろうがよ。
ここで水木がジジイのほう見もせずに抜けた歯を放り投げてるの、もうどうでもいい歯牙にもかけない存在って感じで良い。
地獄すら生ぬるいやつだから、球になって一生苦しみ続けるの、ほんとざまあみろですよね。

ゲゲ郎の体内電気で桜が散るところすごいきれい。

髑髏によるコントロールが無くなり暴れまわる巨大狂骨から、ゲゲ郎が妻を庇って立ちはだかるところで、この映画で鬼太郎の他にもう一つ生まれるもの、霊毛ちゃんちゃんこ誕生!!

お腹の中の鬼太郎の泣き声に、桜の根の下の幽霊族の屍が呼応するところ、人間が他種族からも同族からも搾取してドロドロやってるいっぽう、幽霊族は死んでもなお同族を守るために力を振り絞るという対比に泣いてしまう。

霊毛って幽霊族1人につき1本残るものだから、ゲゲ郎の組紐1本からちゃんちゃんこ1着ぶんの布に増えるほどの数の幽霊族が犠牲になっていたってことなんですよね……それがみんな同族のこれから生まれてくる希望の子の声に呼応して……

先祖の霊毛からできたちゃんちゃんこ、ということはもちろん知っていたけども、くわしい経緯を知ってしまうと、沢城さんがインタビューで「あのちゃんちゃんこ、もうおいそれと投げられないよ!」と仰られていたのも頷けますよね。
6期の鬼太郎ってちゃんちゃんこを拳に巻き付けてぶん殴るスタイルが多いから、今見返したらはわわわ……ってなっちゃいそう。

水木にちゃんちゃんこを着せて、妻を託して窖から逃がすときのゲゲ郎が、野湯で水木を追い払うために言った「はよ行け」という言葉を今度は水木を救うために使うのエモすぎません?言い方もやわらかくて大好き。

戦争で国のために戦ってきたし、Mのことを調べていたのも自分と国を強くしたいという思いだった水木が、狂骨が暴れて国を滅ぼすのを止めるために自信が犠牲になろうとするゲゲ郎に「やらせとけ!」っていうの、国よりも自分よりも大事だと思える友ができたんだなあって。
着せられたちゃんちゃんこを途中から妻に着せてあげてるのも、その友から託された妻と子だからこそ自分より優先してるんだよね。

ゲゲ郎のほうも、水木に対して「我が子が生まれる世界じゃ」までしか聞かせなかったけど、一人になって結界の御神槍を引き抜きに行くときに「それに友よ、おぬしが生きる未来を、この目で見てみとうなった」と続けるの、人間嫌いだったゲゲ郎が初めて心から慈しみを抱ける人間と出会えたんだなあ。
国のために国を守るんじゃなくて、大切な我が子と妻と友が生きる未来を守るために国も守るんだなあ。

予告で「我が子が生まれる世界を、この目で見てみとうなった」だったところが本編でこうなるの、我が子と同じぐらい大切な存在になったということに感じてすごすぎる。

最高の相棒だよ。

公開後に「友よ、おぬしが生きる未来を、この目で見てみとうなった」版の予告も増えて、いいんですか!?ありがとうございます!!になった。

御神槍を引き抜いて狂骨たちに飲み込まれ、体がどんどん溶けていくところは、こうやってあの姿に繋げるんですね……という納得感としんどさで情緒がめちゃくちゃになる。

■現代

時……ちゃん…………っ
映画館でいちばんすすり泣きが聞こえるの、ここですよね。

座敷牢の部屋での「また明日の」から次にお話できるまで70年かかっちゃったね。
目玉おやじが語る通り、現代の世は明るい未来だとはとても言えなくて、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。

時ちゃん、本当に、ものすごくいいこで、つらい。
お迎えに来てくれた沙代さんと穏やかにすごせますように。

冒頭ではろくなやつじゃなさそうだと感じた記者は、かなり真摯な男でしたね。
パンフに載っていたこの記者の雑誌記事で、詳細は映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』をご覧いただきたい。となっているの、物語を語り伝えるためにこの映画が生まれたというメタになっていてすごい。

■村の外

山道で消防隊に救出される水木。
孝三と同じく、髪が白くなって記憶を無くしているけど、逃げる途中まで着ていたちゃんちゃんこのおかげか、はたまた窖の中で幽霊族の血を浴びていたからか、心は無くしていない。
水木に大勢憑いている兵士たちが助けてくれたという説もお見掛けして、そんなの……最高じゃん……!になりました。

彼らはずっと水木のことを見ていて、あの参謀と同じになりかけていた水木がそうではないかたちで未来に進もうとしたから、ゲゲ郎と同じように戦友の生きる未来を守るために助けてくれた……?良すぎる……。

「誰かと一緒にいた」ことだけは覚えているの、直前に抱き抱えて逃げていたゲゲ郎の妻のことだと思うけど、沙代さんのことも混ざっていてほしい。

思い出せないのに、なんでこんなに哀しいんだ……という言葉からエンドロールに入るの大好き。

■エンドロール~ポストクレジット、からの来場者特典

カランコロンの歌のアレンジ最高です。
はやくサントラ届いてほしい。

エンドロールはもう、ねえ。
水木の姿をこの映画の水木に置き換えての原作再現といってしまえばそうなんだけど、原作をしっかり踏襲しつつ、この映画のエンドロールとして無声で流すことで意味が生まれてくるというか。
「この映画軸での再会のかたち」と、「原作に忠実に繋げる」を両立させてるのがすごい。

知っている絵面の場面なのに新鮮に、あー!あー!水木気付いてー!!逃げんといてー!!あー!あ……あああ……ってなるもんな。

見ず知らずの化け物である2人の亡骸に憐れむような視線を向けて、まだ運べる状態の妻のことを抱き抱えて埋葬してあげるの、記憶は無くしてるけど、ゲゲ郎と出会う前の野心のために損得で動く人間ではなくなっているんですよね。

スタッフさんのお名前のほうも見たいのにどうしても左側に目が行ってしまうので、円盤で一時停止とかしながら見たいと思います。

ここは原作のあのシーンを知っているからこその感動があるところだと思いますが、個人的には直前の「履修」だと「知ってる知ってる!進研ゼミでやったところだ!」にしかならないんじゃないかと思ってしまい、それならまっさらでドキドキしながら初めて映画であのシーンを見るという、原作を見ている人間にはできない超貴重な体験をしてもらって、あとから原作を見る方がいいんじゃないかと思いました。
こういうのってほんとに人によるところだから難しいんですが。

溶けてしまった父の遺体から、目玉(未来を見る左目!)がこぼれ落ちて鬼太郎の産声でポストクレジットにフェード。

産声をあげながら墓穴から這い出して来る鬼太郎がかわいい。ちょっとおっきめのちいさいいのち。
俺たちの希望の子が力強くてうれしいよ。
エンドロールと同じく、原作漫画のいずれかをそのままアニメ化しているのではなくてこの映画軸でのあの場面だとはわかっているんだけど、片目が最初から潰れていたので、抱き上げたあと墓石に投げ捨てられて目が潰れる展開にはならない!よかった~っていうメタな安心をしてしまった。

「生かしておいてはどんな災いが起こるかわからない……」と墓石の角がアップになるけど、弱々しく怯える鬼太郎の姿と、頭の中に下駄の音が響いてゲゲ郎のシルエットがよぎったことで思いとどまって抱きしめるの、きっと完全に思い出してはいないけど心の奥底に残った何かにひっかかったんだろうなあ。
抱きしめられた鬼太郎も水木の袖をきゅって掴むのいとおしすぎる。

目玉だけの姿になってでも生き延びて、窖での言葉通り我が子と友の未来をこの目で見守るゲゲ郎、本当にあきらめが悪い男で最高です。

目玉でもいい、仲良くほのぼの暮らす姿が見たい。

とか思ったら特典のビジュアルカードがあれだったんですよね。
叶わなかったしもう叶えられない、もしかしたらあったかもしれない幸せな世界線。
オタクはそういうのが大好きなんですよ!!!本当にありがとうございます!!!!!

どうやって飾ろうかと悩んでたら特典第二弾も発表されましたね。

うれしい驚きです

なんなら映画が公開されてからのすべてがうれしい驚きですわ。
みんな鬼太郎の話してるよ!?すごいことだよ。


登場人物たち

■水木

公開前は映画版のビジュ好み~ぐらいにしか思ってなかったのに、蓋を開けたら『総員玉砕せよ!』を下敷きにした戦争体験を背負った男になっていた。
本当に、『総員玉砕せよ!』みんな読んで……

戦争での体験を経ての、踏みにじられて馬鹿を見るのはもうごめんだ、強く生きてやるという思いから、人を利用することも厭わない野心家になってしまっているけれど、根は優しくてお人好しそうで、弱いものから搾取するほど非情にはなりきれてはいないんですよね。
踏みにじられない強さを求めてるけど、踏みにじる側になりたいわけではなくて、ただ強くありたいというか。

だからこそ強くなるためにMの情報を求めていたけど、そのMの背景におぞましい搾取があったということを知って、国のことも強くなることもどうでも良くなって、そんなことより愛し愛され慈しみ合い、力を持っているからこそ他者にも慈しみを向けることができるゲゲ郎夫婦に憧れ、2人とその子を守るために奮起したのかなと。

沙代さんに対しては、たぶん最後まで女としては見ていないけど、守りたい、助けたい、救いたい、という慈しみは生まれていたし、それもまた真摯な愛だと思うんですよね。全部叶わなかった。つれえ。

6期のまなちゃんも一度失った記憶を取り戻していたし、水木もいつかすべてを思い出してくれるよね。すごくつらい記憶だけど。

悪魔くん10話の水木老人は、記憶を取り戻した世界線のひとつの姿だと思ってます。
悪魔くんの一郎と3世もまた、お互い素直になれないけど種族を超えた絆で結ばれているんですよね。
パンケーキ屋さんの名前がアミーゴ(友・親友)パンケーキなのよすぎ。
鬼太郎にもパンケーキ焼いてあげたのかなあ。
そういうスピンオフください。

■鬼太郎の父(ゲゲ郎)

ビジュアルがでたときは、6期14話のイケメン父さんがまん丸お目目で田中ゲタ吉みたいになっとる!好み!!という感じでした。

あの姿から原作のミイラ男状態になるのか、なる場合はどういった経緯でああなるのか、が公開前の注目ポイントのひとつだったんですが、想像を超える物をお出しされてしまいました。

のんびりしていておだやかで子どもに優しくて、もちろんお風呂も大好きで、あーこれは確かに6期の目玉の親父さんだなあってなる。

それでいていざ戦闘になると、圧倒的なフィジカルと能力の使いこなしで、これが幽霊族の大人の戦い方だとわからされる。
あんなに強い鬼太郎も戦い方はまだ幼いんだなあ。

人間嫌いで心を閉ざしていたゲゲ郎が、どんな風に岩子さんと出会って距離を縮めて愛し合い夫婦となったのか、そのスピンオフが見たすぎる。
最初はものすごく仲が悪くてすぐ喧嘩して、砂かけ婆や子泣き爺に仲裁とかされていたらうれしい。

弱いけど強くあろうとする水木に、最初は憐れみを、しだいに慈しみを覚えていって、愛する妻が人間に向けていた思いを本当に理解できたのかなあ。

愛するもの達が生きる未来を守るため、怨念をすべて引き受けて体がどろどろに溶けてしまったけど、それでも愛するもの達の未来をこの目で見るという強い思いから目玉だけになってでも命を繋ぐの、本当に諦めが悪くて最高です。大好き。

■沙代

見れば見るほど可憐で美しくてかわいらしいお嬢さんで、つらい。

  • 道具扱いでなく自分を見てほしい

  • こんな村を出て自由に生きたい

  • 水木に普通に恋しちゃった

っていう全部が本気だったんじゃないかなあ。

倫理観の狂った村の中では、おそらく初潮を迎えてすぐに「龍賀の女」という道具にされたのに、「女」として見てほしいと願った水木はまともな倫理観を持っていたが故に、おそらく最後まで「女」として見てくれなかった。
このすれ違いがつらい。

一人の人間として向き合ってちゃんと見てくれた結果、向けられたのはやっぱり「守るべき子ども」としての慈しみだったんだよねきっと。

命を落とさずに村から出ることができて、成人するまで想いつづけていたらどうなっていたんだろう。見たかったな。

これはもう完全にとばっちりみたいなものなんですが、うちの近くの映画館はウィッシュの歌だけバージョンの予告がよく流れていて、その歌詞が「決まりにしたがって生きてきたけど自由に生きたい、この願いをあきらめない」みたいなニュアンスで、沙代さんの境遇に重なってしまうんですよね。
あのこは夢と魔法の世界で生まれたからきっと願いをかなえることができるんだろうなあ、沙代さんもこっちの世界に生まれていればなあ……とか考えてしまって本編が始まる前に泣きそうになってしまう。

■時弥

なんであの村であの家で生まれて体も弱くて大変だろうにあんな人懐っこいいいこに育つことができたの!?ってなるほどに本当にいいこですよね。

大人の喧嘩の気配を感じてすぐに仲裁するの、もしかして普段から長田夫婦の諍いをおさめたりしてます……?
あの夫婦の諍い、想像するだけで空気が最悪でしんどい。

野球はラジオで聴いてたのかな?時代や龍賀の財力を考えたらぎりぎりテレビもあるかもしれないけど、テレビで見る外の世界はあの村には眩しすぎて、外に出たいという気もちを呼び起こすから禁じられてそうな気もする。

熱に浮かされるシーンで
「助けて……おじい様……」
って言ってるんですよね。
最初は薬学にくわしいであろう祖父に自分の病気を治してほしいという意味の「助けて」だと思ったんだけど、体を奪おうとするジジイに対する抵抗の、やめて、とらないで、の抵抗の「助けて」だったのかなあと思うとつらい。
あのシーンで布団のそばに座っていた黒い影は時貞の遺体そのものなのか、魂とかの概念的な物なのか、いずれにしても張り倒したい。自分に「唵!」できる力があればなあ。

■時貞

だいたいこいつのせい。

醜悪で最悪なことを全部言わせようやらせようとしたのかな、いう気概すら感じるキャラクターですよね。
それを時ちゃんから奪った体でやるもんだから、いちいち腹立たしさが倍増してしまう。

「マブイ移し」については、誰がどこまで知っていたのか、対象は時ちゃんだけで、しばらく霊のままでいるつもりだったのか、一時的に時麿に入ってから20歳になったら再度時ちゃんに移る気だったのか、そこらへんが全然わからん。最悪だということだけはわかる。
密かに進めていたって言ってるし、龍賀のしきたりに一番染まっていそうな乙米も沙代さんを「時弥と」妻合せるって言ってたし、ジジイの単独犯なのかな。
マブイ=魂が琉球言葉なのは、この舞台のクソ因習村が現実の特定の場所に絞れないように、お社の装飾が諏訪だったり方言は西日本だったりいろんな地方の要素をミックスしてるのかなあと思いました。

最近は悪役にもそうなるだけの重くてつらい理由があることが多いんだけど、こいつにはそういう同情の余地がいっさい無いことがある意味この作品の救いかもしれない。

■時麿

おそらく近親交配の影響で、ふだん表に出せないぐらい精神的に壊れているところがあるけど跡継ぎの権利はあるという立場がめちゃくちゃ難しい人ですよね。

浮世離れした風貌だけど、丙江から「時麿にい」って呼ばれてるのがなんだかすごく普通に兄妹っぽくて、その歪さがほんとにぞわぞわする。
幼いころはあの兄弟たちが普通に兄弟してたような時期もあったんでしょうか。そういうほのぼのスピンオフください。

泣きじゃくりからの龍哭でスンッと「一族のものは御籠りを始めるように」と豹変したり、スイッチがいろいろ切り替わるタイプの情緒不安定な壊れ方しちゃってるのがわかりやすい。

「ととさま……」と言いつつ沙代さんをじっっっっとり見るところとか、お社で舌をべろべろしながら沙代さんに迫るところとか、性欲はしっかりあるのに修行漬けで抑えられてきたのが「当主」になったことで爆発したんだろうなあ。
2回目以降のあのシーン、「ととさま……(がこの娘にやっていたことを自分もやっていいんだ、それが当主の務めだもの)」みたいに感じてぞわぞわする。

■乙米

めちゃくちゃ嫌なやつポジションだったけど、嫌な言動も含めて「完璧な龍賀の女」として洗脳されてるが故のもので、それに忠実に生きることしかできなかったんだろうなあと思うとやっぱりジジイおよび龍賀の家の被害者なんですよね。
心をもたせるためにお国のためという大義名分を自分に言い聞かせ続けて、それが本当に正しいと思い込んでるというか縋っているというか。
本来の乙米はお社での龍哭で長田の胸に飛び込んじゃったあのときだけで、あとはずっと「完璧な龍賀の女」をやってた気がする。

ちょっと甘やかしてる感じのある丙江に比べて庚子にやたら当たりが強いのは、庚子が
・跡継ぎとなる男児を身ごもる(龍賀の女として)
・長田と結婚(1人の女として)
という自分がやりたかったことをどっちも叶えているという嫉妬もありそう。

沙代さんを産んだあと男児を身ごもるチャレンジ()はおそらくしていなさそうなあたり、名前に「時」の字が付く跡継ぎとなるには「龍賀の女」が「当主との勤め」で「最初に孕んだ男児」でなければならない、みたいな縛りがあるんでしょうか。

とか考えながら周回してるときに上で書いた水木のスクラップブックの家族写真でジジイが抱いてる赤ちゃんに時ちゃんの泣きぼくろが無いことに気づいてしまったんですよね。
もしかしたら乙米も男児を産んでいて、そのときにあの家族写真を撮ったけど、近親交配ゆえの身体の弱さで産まれてすぐ亡くなってしまって、そのあと庚子が時ちゃんを身篭った?とかも考えちゃうじゃん。

乙米が長田家の許嫁になったらあかんかったんやろか?とも思うんだけど、「長女」は嫁に出ず婿をとらねばならないみたいなしきたりとかあったのかな。
まあジジイが2人の感情を察したときに、じゃあそこがくっつかないように庚子と長田を許嫁にしたろ!って誰も救われない絵図をひいただけかもしれんけど。
相思相愛同士を夫婦にしてしまうと自分の子種を孕む確率下がるから~とか、そういうこと考えそうだもんあのジジイ。
ジジイ~~~~~!!!

■克典

一族や村がやっていることについては、変なしきたりが多いし変な神を祀っているし村の連中の血の気は多いし、は~やだやだ、ぐらいのことしか知らなかったよねたぶん。

龍賀の女の務めのことを知ったら普通にドン引きする倫理観はあると思うし、水木のことは野心ギラギラなところ含めてほんとに気に入ってたんだと思う。まあパワハラおじさんなんだけど。

村にいるのは嫌になるだろうし、仕事柄外との取引も多いだろうし、そもそも村の中にあまりいなかったんじゃないかな。
乙米にとってもそのほうが都合がいいもんね。

決して善人ではないけど、あの村の中ではまともに見えてしまうからあの村がこわい。

■丙江

きっと元は溌剌とした、みんなから愛されるタイプだったんだろうな。
家族写真のさっぱりしたかわいらしいお嬢さんから、やさぐれてむちむちに肥えてけばけばしい化粧をして金と酒と男遊びに狂うようになった経緯のことを考えるとしんどい。

村の外から来た男と駆け落ちして、見つかって連れ戻されて、務めのことをばらされて、おそらく相手の男は工場で屍人にされてるんだろなあ。

丙江さん、駆け落ち相手の男に対しては、村から逃げる手段として利用したというよりもただただ純粋に恋しちゃった、であってほしいかも。
逆に男の方は、務めのことを知ったら丙江さんに穢らわしいものを見るような目を向けたうえに、ジジイの会社を2つ3つ~の甘言にホイホイ乗っかったりして丙江を絶望させてほしい。
ジジイのあの甘言についてはただの口車で叶える気ないと思ってるから、村から一時的に解放されて「人生勝ち組確定~♪」って浮かれてたら裏鬼道にさらわれて、丙江の目の前で幽霊族の血を入れられるときに、丙江に自分を愛する気持ちがまだ残ってる可能性狙いで命乞いとかしてたら最悪で最高。

いろいろ対比構造が多い映画だから、務めや狂骨を使った殺人のことを知ってそれでも一緒に逃げようとしてくれたり、ジジイの甘言に「つまんねえな」と斧を振り降ろしてみせた水木とは全部逆だった、みたいな。

最初は村に派遣されてからそのまま行方不明になったらしい水木の前任の龍賀製薬担当が駆け落ち相手かなあとかも考えたんだけど、家族写真の丙江が駆け落ち前だと血液銀行がまだできてないから違うか。

出てきてもいない駆け落ち相手さん勝手にクズにしてごめん。全部妄想です。

■孝三

カットされたという岩子さんとの逃亡劇の一部始終を、ください。
円盤収録とかでどうか。

たぶん、修行のために窖に入るようになったけど幽霊族や村の外の人を犠牲にするのはどうなんだ……というまともな葛藤を抱えていて、そこで出会った岩子に惹かれたけど夫がいることを聞かされて、それならその人のところまで逃げて幸せになってほしいと願うような優しい人だったんじゃないかな。

岩子はきっと孝三を見捨てて一人で逃げることに専念すれば逃げられたけど、置いていけずに助けに戻って再度捕まってしまったとかありそう。
孝三が自分のために泣いてくれて、その姿が泣き虫な夫と重なってしまった部分もあって、見捨てられなかったとかそういう。

全部妄想すぎる~~~。
ディレクターズカット版お願いしますよ本当に。

死因が克典の車に撥ねられてなの、幽霊族の狂骨たちからかつて同朋を逃がそうとしてくれた男だと認識されていてターゲットにはならなかったとかありませんかね。

■庚子

なんて言うか、三姉妹でいちばんしんどい。
乙米のように「龍賀の女」にもなり切れず、丙江のように外に出ようとする勇気もなく、ただただ無気力に流されて生きるしかなかったんだろうなあ。
それなのに跡継ぎとなる男児をしっかり身篭ってしまうし、姉と想い合っている男のところに嫁がされるし、そのせいで姉からのあたりは強くなるし。

そんな庚子が初めて反旗を翻したのが息子の時弥が当主になって力関係が変わる!と思ったときで、やっぱり子どものことは利用しちゃうんだなあこの一族の大人は。

遺言状読み上げの場での「かあさま」「早く座って」のやりとりや、時ちゃんを見つめる眼差しには母の愛を感じたから、あの時点での母子の愛はどうか本物であってほしい。

いっぽう長田はあの広間にいる間2人のことをピクリとも見やしねえんだよな!!!表向きは妻と自分のこどもで、龍賀の将来的な跡継ぎに我が子が選ばれたって立場なのに喜ぶふりすらしねえなあ!!!
なんならあの広間にいる間どころか劇中一度も視界に入れてすらない気がする。

克典とかの「よそ者」以外は、龍賀の女の務めのことも形だけの夫婦関係ってことも知ってて、親族たちの前では取り繕う必要もないってこと?

じゃあ庚子はどんな気持ちで自分だけずっと欠かさず指輪つけてたんだよ~~~しんどい。

庚子→長田、姉と想いあっている自分が好きになってはいけない男の人、でもちょっと憧れていた。ぐらいの距離感であってほしい。しんどいから。

■長田

長田ってさ~~~~~童貞?

第一声がこれでごめん。

時ちゃんは時貞の子だとして、乙米様一筋な長田は夫婦関係にあっても庚子に手を出さなそうですよね。
龍賀の女は当主の子を孕まないといけないから、もし自分の子種で孕ませてしまったら面倒なことになるだろうし。
感情ゼロで庚子を抱いててもそれはそれで最悪で良いんですが。

乙米一筋であることはそりゃあ純愛で美しいんだけど、それはそれとして庚子と時ちゃんに1ミリも興味が無さすぎるのが見ててしんどい。
いやまあ政略結婚だし自分の子じゃないしだから興味無いのは仕方ないとしても、表向き親族が集まるところでは取り繕ってくれんか、庚子のメンタルのためにも。

長田のことを考えてたら、お前は!!!お前はさ~~~!!!も~~~~~!!!誰も幸せにならないでしょうが~~~~~!!!お前自身も幸せになれないんだからな!!!!!ばかばか!!!!!
みたいになってしまう。
何だこの感情?????

愛を貫くなら最初から乙米を攫って逃げるとかしてくれよ。庚子のためにもさあ。

乙米が狂信洗脳状態だったし、長田もまた村で生まれてそれに近しい状態だったから難しかったんだとは思う。

公開数日後に『糸目の石田彰』でトレンド入りしてたの笑っちゃった。


なんか……すごい量になってしまった。誰が読むんやこれ。
読んでくださった方はありがとうございます。おつかれ様でした。

断片的に思い出しては、ああだったのかなこうだったのかな~とぐるぐるしてしまって、いろんなことに身が入らなくなってしまっていたので、いったん上から下までさらったことで少し落ち着けた気がします。

ストーリーの時系列をまとめたフローとか、真・家系図とか、因習5W1H表とか、背景資料集とか、スピンオフとか、ディレクターズカット版もりもりの円盤が出ますように!!

よーし色んな考察読むぞー!!!


みんなもこれ読んでね!!!
電子版も各種あるみたいです。

『総員玉砕せよ! 新装完全版』
著:水木 しげる
講談社文庫


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