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海外留学すれば英語がペラペラになるのか

幼少の頃から海外生活に憧れがあった私は、大学生になったくらいから留学したいと思うようになりました。留学を希望していた理由の一つに「海外留学すれば英語がペラペラになるんじゃないか」という浅はかな考えがありました。その後、医者になり、大学院を終えて、留学のチャンスがやってきました。しかし家庭の事情で長期滞在は断念せざるを得なくなり、半年弱で帰国しました。短期の海外生活とはなりましたが、色々な経験ができましたし、今回の記事に絡めるなら、行けば英語がペラペラになるというのは完全な幻想であったことに気づいたのは大きな収穫であったと思います。というわけで今回は英語について書いていきます。あくまで個人の見解になります。

1: 海外でぶち当たった言葉の壁

私の留学は研究目的で、主に病院附属の研究所で働いていました。留学した国は非英語圏でしたが研究所内の公用語は英語で、ミーティングやセミナーは全て英語でした。
初日に昼ご飯を研究室のメンバーと食べにいったのですが正直、皆が何を言っているかわかりません。さらに私からもあまり話をしなかったため、いきなり若干、孤立してしまいます。ちなみに話をしなかったのは英語の問題もありますが、私の人見知りの影響もあります。その後、徐々に研究室のメンバーと打ち解けることができ(人見知りが解けたということです)、1対1なら会話ができるようになります。1対1だと、こちらが聞き取れなかったらゆっくり話してくれたり、向こうがわからない場合は聞き直したりしてくれるからです。しかしグループになると、聞き取れないし、発言もできません。「このままではいかん」と思い、対策を立てることにしました。

2: 1000時間理論

まず英語学習の仕方を色々と調べました。この時に知ったのが1000時間理論という考え方です。日本人が英語をマスターするには1000時間の学習時間が必要という理論です。これには諸説あり、日本人の場合はもっと時間が必要だという人もいれば、中学・高校で学んだ時間、厳密に言うとリスニングやスピーキングに当てた時間をここで言う学習時間に含むことができ、もう少し短い時間でも良いと言う人もいます。とりあえず1000時間を目安に考えてみました。
語学留学や大学・高校に通うための留学を想定します。授業が平日朝の9時から夕方5時まで8時間あり、それ以外に寝るまで1日3時間、英語を勉強したとします。さらに土日も頑張って9時5時で勉強すると、1週間の英語学習時間は、11時間X5日+8時間X2日で71時間となります。わかりやすく週70時間とすると、4週間で280時間となり、1000時間に達するまで3-4ヶ月ということになります。高校生や大学生が、海外留学すると3-4ヶ月たった時、急に相手が話していることが理解できるようになると言いますが、おそらくそれが1000時間を超えた瞬間なのでしょう。
次に自分の今の状況を考えてみます。平日は1日実験をしていて、研究室のメンバーと話すのは昼休みの1時間程度、下手したら一人で食事をとることもあります。また週に1回、研究所内でセミナーがあり、これが1時間。これとは別に研究の進捗報告が月に1回程度、数時間。土日はみんな休んでいて人と会わないため英語を使う機会はない。計算すると1時間X5日+1時間セミナーで週に6時間。4週間で24時間、ここに月1回の進捗報告の時間を入れて25時間。1000時間達成まで40ヶ月で、実に3年半かかることになります。だめだ、こりゃ。
この時、研究目的で留学した場合、実験ばかりやっていると(それ自体は悪いことではないのですが)英語に触れる機会が少なくなること、英語は自分から積極的にやっていかないとうまくならないということに気づきます。語学留学とはそもそも目的が違うのです。厳しく考えれば、英語は話せる前提といいますか。
冷静に考えてみたら、ずっと誰かと話しながら実験しているやつがいたら、ただの迷惑で危ないやつです。実験は普通、黙って集中して行うものなのですが、それが英語を学ぶという点では仇になるとは思ってもいませんでした。
これに気づいてから仕事が終わった後の時間を使って、英語の動画をみて英語耳を鍛えることにしました。なるべくネイティブが高速で雑談しているような動画を探して、見漁りました。またCNNなどのニュース番組も参考にしました。
あと個人的な問題で、単語力がないことを思い出し、英単語アプリをダウンロードして隙間時間にひたすら英単語を覚えていました。数ヶ月の短期留学だったので流石に1000時間は達成できませんでしたが、少しずつ周りについていけるようになりました。と言っても、やはりペラペラには程遠いレベルでした。

3:長く海外留学すればよいのか

ではもっと長期間、海外にいたらペラペラになったのか。それは違うと思っています。その理由を書いていきます。
私が帰国してから、海外で活躍して帰国された先生の英語を聞く機会が増えました。自分自身が学会などで英語のセッションに参加するようになったことが大きい理由だと思います。
まず気づいたのは発音は海外に長くいても、ネイティブのようにならないということでした。研究留学の場合、海外に行くのは博士課程を終えてからなので、30歳前後です。私個人の感想ですが、20歳を超えると発音がネイティブのようになるのは無理な気がします。発声の仕方が固定化するのでしょうか。15歳くらいが限界な気がしますし、完全なネイティブやバイリンガルになるには下手したら、もっと小さいときに行かないとダメなのかもしれません。
もうひとつ気づいたのは、海外帰りでも英語がうまく話せる人と話せない人がいるということでした。医者の研究留学の場合、2-3年の期間が多いのですが(最近はもっと長くいる場合もあります)、先ほどの1000時間理論に従えば、計算上は少し頑張れば達成できそうです。
実は1000時間だと足りないのかなとも思ったのですが、それも間違っていることに気付きます。純粋な研究者の方だと、博士課程を出て、すぐに海外にわたり、そのまま5年とか10年とか、海外で過ごす場合があります。しかし10年近く海外に住んでいたわりには、あまり英語が上手くない人もいたのです。なぜでしょうか。

4:結局、どれだけ使うかのようです

私の中の結論は「その人のキャラクターによる」です。結局、社交的な人、もともとよくしゃべる人は言語関係なく話し続けるので流暢になるようです。中には海外に行ってから日本人とは関係を絶ったとか、日本語で話しかけられても無視していたなど、ストイックに追い込んだ場合もあるようですが、それでも結局はその人が社交的かどうかによるような気がします。逆に言えば黙々と実験だけやってる方は、論文はたくさん出るかもしれませんが、英会話はうまくならないようです。
また結婚しているか、子供がいるかも大きなファクターらしいです。やはり英語的には独身が一番、伸びるようです。一人だと動きやすいですし、飲み会やパーティーなども参加しやすいので話せるようになるようです。もちろん引きこもっていたら意味がないですが。
結婚している場合(日本人同士で結婚している場合)は毎日、飲み歩くわけにもいかず、さらに自宅では日本語なので、必然的に英語に触れる時間は短くなります。しかし子供がいるとまた状況は変わるようです。現地の学校や保育園に入れると、そこの先生たちとコミュニケーションを取らざるを得なくなります。ここまで書くと予想できるかもしれませんが、このプロセスにより専業主婦の奥さんの英語が、働いている旦那以上に伸びるパターンもあるらしいです。結果、現地になじんでネイティブなりかけの子供>学校とやりとりしている専業主婦の妻>黙々と働いている夫の順に英語ができるようになっていたという話もよく聞きますし、実際にそういうご家族とお会いしたこともあります。そのご家族ですが、子供と奥さんは海外生活を満喫していて、旦那さんがなんとなく鬱々としていたのが印象的でした。

5:まとめと今考えていること

結局、英会話がどれだけ上手くなるかはどれだけ使うかによるようです。筋トレと同じですね。
また発音に関しては30歳前後からだとネイティブレベルになるのは厳しいようです。英語が得意な私の上司曰くは、「ネイティブにはなれないが、トレーニング次第でネイティブと互角に渡り合えるレベルにはなれる」とのことでした。また研究発表だけに関しては、中学生レベルの英語力でも使い方次第でうまく伝えることができるということも言っていました。
私もまだまだの英語力ですが、コロナ禍で急激に進歩したオンライン英会話や動画を駆使して、継続したいです。と言っても、なかなか時間がとれないのが悩ましいところなのですが。
今回も長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。写真は留学先で撮ったもの、ではなく家族で訪れたハワイのホテルにいた白鳥です。

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