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ロゴをデザインするとはなんなのか?ロゴをつくる人の頭の中と心構え

ロゴデザイン。ここ数年でとても使いやすいロゴジェネレーターサービスも増え、最近のAIツールの登場も後押しし、簡単にロゴを作成することができるようになりました。

そんな中でわたしたちデザイナーがロゴをつくる時、「それらとの明確な違い」をきちんと伝え、理解を得ることも非常に重要になってきたように感じています。

というわけで、今回は「ロゴ」をつくるときの頭の中を少しだけ語ってみようと思います👋

もちろんアプローチの仕方は様々ですし、思考のすべてを書き出すととんでもない長さになってしまうので「こういうプロセスで進めるのもありだな〜」と、参考のひとつとして読んでいただけると幸いです。


🙋はじめに - ロゴ?シンボル?マーク?「ロゴマーク」にまつわる言葉の定義

具体的にどんな風に思考しロゴをつくったかという話に入る前にひとつ確認しておきましょう。

ロゴをつくるシーンでは「ロゴ」「ロゴマーク」「マーク」「シンボル」「タイポグラフィ」「ロゴタイプ」などなど、略称らしき呼び方も多数あるために言葉は同じでも相手と自分のイメージしているものにズレが生じていることもあったり。

基本的には以下のようなパターンで定義することが多いかなと思います。

何をするにも言葉の定義は大切です。当たり前に使っている言葉でも、曖昧な言葉ってたくさんありますよね。日常生活では特に気にならなかったとしても、制作のシーンではその認識の違いが致命的な結果を引き起こすことも多々あります。

さて、それでは本題です💪🏻

01. ヒアリングと情報収集 - 企業を知る・業界を知る

まずはヒアリング。クライアントである企業のビジョンミッションや事業内容、代表や社員のみなさんの雰囲気やそれぞれが持つイメージやキーワードなどを引き出します。他社リサーチもこの段階でがっつりやります。

確認することや必要に応じてやることというのもたくさんあって、

・社内にどれだけビジョンミッションが浸透しているか?
・そもそも「ビジョン、ミッション」とか「CI」ってなんなの?という説明
・ときにはビジョンミッションの整理のお手伝い
・ロゴにはどんな役割があるか?何を生み出すか
・サービスロゴなど必要な際にはペルソナを決めたり

……などなど、プロジェクトやクライアントに応じて必要な情報を選び、伝えます。どんなプロジェクトでもお互いに時間は有限なので、何にどれだけ時間を掛けるかを考えて適切に情報を出し分けするのって超大事です。プロジェクトに応じてワークショップの提案をするなど柔軟に丁寧に対応しています。

余談ですが、最近ではロゴ制作のご依頼をいただく前にブランディングワークショップ等を行い、予め社内を整備している会社も少しずつ増えている印象です。

02. 方向性のすり合わせ - 1で得たものを元に土台を決める

ロゴの構成や方向性をある程度定めます。例えばこんな感じ👇

事業が多岐にわたり、様々なサービスを展開していく企業。今後展開されるサービスによっては企業ロゴがアンマッチになる可能性を配慮しつつ、シンボルがあるべき理由も検討。かといってまだ認知をとりたいフェーズでは多面的に訴求しやすいからという理由で安易にシンプルなロゴタイプを選ぶのは得策ではない。総合的に判断した結果、抽象的な形状でも具体的なイメージを想起させやすいシンボルマーク有りの構成を避け、ロゴタイプにあしらいを加える構成を選択。

次に、キーワードなどから大枠のイメージを定めます。他社と並んだ時にどういう立ち位置にするかなどリサーチした結果を用いて検討します。メインカラーを絞ったり、逆にNGカラーを定めることもあります。

他にも、キーワードを広げたりカラーを決めていく中で「一言で表すとどうなるか」を設定することが多いです。それを制作時の目印になる「旗」とすることで、さまざまな切り口で思考しアイディアを発散していったとしても、大事な軸の部分はブレずにきちんと戻ってくることができるからです。

03. 制作する - ラフスケッチでアイディアを発散し、ロゴタイプの仕掛けを検討する

決まった土台からデザインを展開していきます。ロゴタイプにあしらいを加える構成を例とした場合、ではロゴタイプだけでも印象が伝わるような工夫はどんなものがあるか検討をしてみます。

アイディアを出す際も、1で得た情報を駆使します。1で出たキーワードから連想できる言葉をさらに広げ、実際にロゴの形状に落とし込んでみたり。わたしは早い段階でマインドマップをつくることがほとんどです。

マインドマップはfigmamiroがオススメです。もちろん紙に手書きでもOKです。わたしはアイディアスケッチを液晶タブレットを使用して描いて、デジタルなデータで行うことが多いです。

この時に大切にしているのは、検討しているロゴの形状やキーワードだけに止まらず、視野を広げてイチからアイディアを出すこと。どんな企業かを整理していくと、以下のようなアイディアも考えられます。

イベント出展時など、ノベルティ・グッズ制作の可能性があるかも。じゃあロゴタイプと絡めてデザイン展開しやすい工夫を検討してみようかな。

そしてこのロゴタイプができた未来に、実際にどのようなシーンで使われるだろうか?どんな風に接してもらいたいか?というのも考えます。

イベントのノベルティやグッズに展開しやすく、遊び心のきいた仕掛けがあれば、ロゴを目にする機会も増える。今後社員さんが増える可能性が高いことも踏まえると、触れる機会が増えれば親しみや愛着も持ってもらいやすくなる。ロゴとして品格を損ねないガイドラインを設けつつ、それぞれが工夫して使える仕組みをもたせる仕掛けを施した。

わたしが並列して考えることを大切にしている理由は「理由の後付けの回避」です。ロゴの形状を考えつつ仕掛けのアイディアも同時に広げていくことで、なるべくしてこの見た目になった「理想の形」にたどり着けるからです。

イメージスケッチはとにかく書きまくってアイディアを発散していくのですが、「絶対にないだろう」というものから「無しよりの有り、有りよりの無し」を通り「超有り!!!」まで、スケッチはとてつもない量を出して検討します。

ただし、クライアントにどこまでみせるかはプロジェクト次第です。

この作業は見せるためにつくるのではなく、思考するために手を動かすというニュアンスが大きいです。これはロゴの形状を生み出すときに必須の作業であると考えています。

可視化することによって「どこまで思考できたか」「考えきれていない範囲はないか」を自分で把握することができるんですよね。

ただし、提案時に過程としてラフスケッチをみせるのはとても良いと考えています。実際にわたしもプロジェクトによってはそのようにしています。これもメリットがあり「なるべくして提案時の形になったことを裏付けする」ことが可能です。

04. デザインを深める - 形状を整え、ロゴのストーリーを整理する

実際にスケッチとアイディアを拡散していく中でストーリーのかけらが少しずつ生まれます。手書きラフスケッチだったものを完成形のイメージに近いデータ形式に整える等、提案する形に整理していく中で、言葉もブラッシュアップしロゴとストーリーの結びつけを強めていきます。

形状とストーリーの表現の例を挙げておきます👇

例1:サービスが大切にしているオープンさと無限の可能性を広大で自由な海のイメージで表現

事例:株式会社Pictors & Company 様

例2:サービスの価値の一つの「壁を取り払う」から着想を得た、境界をゆるやかに溶かすようなグラデーションのパターン

事例:株式会社Pictors & Company 様

例2:サービスの主役であるクリエイターに寄り添い、支えることができる。そんなロゴを目指し、あらゆる場所に溶け込むサインのようなビジュアルへ

事例:ナッジ株式会社様

こちらから他の事例もお読みいただけます

一般的には提案時に多くても3案程度で提案することが多いと言われています。わたしも過去の取り組みでは2 - 3パターンを提案させていただくことが多かったです。選択肢がありすぎると選ぶのが難しくなるのはもちろん、プロジェクトの前半で旗を立てたり、ラフスケッチで検討してきたにも関わらず、この時点であまりにも多いパターン数になってしまうのであれば進め方を見直すのが良いかもしれません。この場合ラフスケッチの時点で一度擦り合わせてみると良いでしょう。プロジェクトに合わせて進め方を提案するのも、クリエイティブを生み出す上で腕の見せ所だと思います💪

05. 提案 - プレゼンテーションでの“魅せ方”を考え、提案する

1から4のステップの中でも「行ったり来たり、広げたり狭めたりの思考をめちゃめちゃ繰り返す」ことでようやくロゴが形になりました。ここまでの想いやこれからのロゴへの期待を伝播させるために提案のプレゼンテーションも最高の形にまとめていきます。

わたしがロゴの提案で特に大事にしているポイントは以下の3つ。

1. ロゴがなぜこうなったのかがきちんと伝わる
2. このロゴを使う未来が具体的にイメージできる
3. ストーリーを感情的に伝える

1. は、その形状や色にきちんと意味があって作られていることを説明し伝えることで「納得感」を得てもらうことができます。お互いが納得できる着地点にたどり着くために最も大事なこととも考えています。

2. は、ロゴをどのように浸透させていくかに関わります。皆さんに具体的なイメージをお伝えしておくことで、実際に行動に移してもらいやすくなったりもします。

3. は、ロゴに対する愛着に関わります。このロゴは間違いなくご依頼いただいた企業や社員の皆さんが作り上げたものでありこれから掲げていくものなのですが、可視化し形状として制作をしたのはデザイナーです。どうしても「自分たちがつくった」という愛着のようなものは生まれにくいという問題があります。

愛着に関しては、制作以外のステップでもいくつかポイントがあります。社内のワークショップから意見や想いを吸い出したり、3つの案の中から選んでもらったり。方法は様々ですが、皆さんが「自分事」として考えられる工夫は必ず盛り込んでいます。
提案時や社内への発表時に、印象的かつ正確に作り手の想いを伝えることはロゴを納める儀式のように思ったりもします。

そして提案時の反応を受けて、修正とブラッシュアップを行います。最終的には、資料としてまとめてお渡ししています。

06. 完成と浸透 - 作り手の心構えと浸透させることの重要性

こうやってブランドの土台のひとつであるロゴが完成しました。ロゴはどうしてもその「見た目」の話に終始しがちになるのですが、その「見た目」の裏側にはこのような思想があって「なるべくしてこの見た目になった」という経緯があるのです。

ただ、人の好みというのはそれぞれなので、好みが分かれてしまうことは避けられません。しかしどんなことがあっても揺るがないわたしの考え方として「掲げる人がそのロゴを受け入れていないというのは淋しすぎる」と思っています。

ここで言う「受け入れる」というのは「好きか嫌いか」の好みの話ではなく「らしさの象徴として認められているか」というニュアンスが近いです。その上で、より多くの人が「好き!」と言ってくれたらそれに越したことはありませんが。これはロゴづくりで苦悩する部分でもあり、めちゃめちゃ面白くて魅力的な部分です。

今まさにロゴデザインをしている人、これからロゴデザインに挑戦してみたい人の参考になればと思いますし、さらにはこれを読んでロゴデザインをやってみたいと思ってくれる人がいたならば最高です……!

皆さんもきっと肌で感じていると思いますが、デザインの領域はどんどん広がっています。ぜひ興味のある領域にはどんどんチャレンジして、業界の壁を取り払って盛り上げていきましょう!

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