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『オール・ノット』

一昨日、noteにて私の記事の購読料が支払われました。とはいっても色々引かれて516円。支払いはアマゾンギフト券ですが、私の記事をお金払って読んでくれた方がいるのは嬉しいです。
せっかくだから記念になるものにしようと本を買うことにし、それが昨日届きました。柚木麻子さんの『オール・ノット』。
主人公は親からの支援がなく、奨学金とバイト掛け持ちで大学に通う真央。そんな彼女がバイト先で出会ったのはやや話を盛る癖があるものの浮世離れした雰囲気を持つ凄腕試食販売員の四葉さん。真央は四葉さんと打ち解け、職場をすこしでも快適にするコツやキュウリのサンドイッチの美味しい作り方や温かい飲み物を飲む習慣等を教わります。しかし、四葉さんの好意で高そうな宝石箱とそれに入った宝石をこれからの足しにしてくれと託されたものの、それが予想を大幅に下回る買取額だったこと、せっかくの好意だったのにがっかりな結果になった後ろ暗さから真央は四葉さんと疎遠になってしまい……といういつものガールズブラボーな、よく言えば結束力の高い友情、悪く言えば弁当箱にこびりついた飯粒のようにペタペタした友情アピールが強めの作風と違い、極力ご都合主義を廃したビターな展開。
さらに、近年の柚木作品らしくかなりルサンチマンやミサンドリー色が濃くて合わない人もいるでしょうが、真央の貧しさゆえに可能性を失ったり、縮小されるよるべのなさ、失敗できない恐怖の生々しさが伝わり、だからこそ四葉さんのできる範囲でのノブレスオブリージュがしみますし、後の真央が八方塞がりな状態な若者に彼女ができる限りのことをする手に届く範囲でのノブレスオブリージュの連鎖に少し心が温かくなります。
あと、名家の出でありながら、何故四葉さんが没落していったのかというバックグラウンドは、今の倫理や風潮では正しいことでも、過去の時流では冷笑されたり、むしろ訴えた方が嘲られたり返り討ちにあってしまうという、時の隔たりの残酷さを改めて考えさせられます。
ラストの取って付けた感が少し気になるものの、それを差し引いてもできる範囲での、次世代への思いやりについて考えさせられた作品でした。
(文責・コサイミキ)

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