スパイダースの大進撃を観賞したんだ。

再び、BSプレミアムにて放送されたスパイダースの映画を。
スパイダースの映画は日活で四本、東宝で一本作られていますが、今回のスパイダースの大進撃は二作目になります。
監督は日活の黄金期を牽引した中平康さんなのですが、正直、この作品では日活解雇間近に撮ったからなのかやっつけ仕事感があり、後年、中平監督の娘である中平まみさんは「名画座」という自伝的小説でこの映画の出来についてスパイダースは好きだけれどこの映画は面白くなかったと書かれています。
内容はアメリカツアーでマチャアキが買ったタンバリンに本物のダイヤモンドが仕込まれており、それを狙う悪女と、さらに、スパイダースのマネージャー的役割の少女、ユリ子が歌詞や楽譜を入れていたアタッシュケースをマフィアの秘密書類を入れたアタッシュケースと間違って持っていってしまったことから、悪女とマフィアに命を狙われる破目になるスパイダース。
東京から鹿児島を舞台に追われながらの珍道中。そして、ユリ子に片想いをするマチャアキと順ちゃんの恋の行方は?といった内容。
正直、古きよきMGMミュージカルを彷彿させるセットメインの撮影、ドラマパートと歌パートの切り替えの鮮やかさが華やかだった前作に比べてドラマパートと歌パートのぶつ切り感が酷く、折角の歌パートがぱっとしない印象です。
あと、マフィアたちが取り返したい書類、悪女が手に入れたいタンバリンが何故そんなに重要なのか分からず、ストーリーに入り込めないので散漫な印象が漂います。
それでも、悪女役の真理アンヌさんを撮るときのカメラワークや、カーチェイスシーンに中平監督の日活無国籍アクションの残り火を感じます。
また、歌パートも田辺社長のソロ曲であるロンリーマンが聴けたことや、暗闇にバラを捨てようや紫の船のような地味ながらも佳曲が聴けるのは見処です。
しかし、田辺社長。煙草吸いながら歌うのはどうかと。

あとは、前作よりも大野克夫さんの出番が多目です。当時28歳とは思えない、リスのようなくりくりした目の童顔な大野さんがキュートに撮られていて、マチャアキや順ちゃんに次ぐ人気だったのも納得です。あと、ムッシュのスタイルのよさもお洒落な服装と相まって魅力的です。
かっぺちゃんこと加藤さんは前作同様オチ担当ですが、純朴そうな喋りがほんわかします。残念なのがタカユキさん。全体的に出番が少ないのが寂しいところ。
最後に特筆すべきはユリ子役の和泉雅子さんの、手に届きそうで届かない、身近なかわいこちゃんなキュートさとおきゃんさ。 物心ついたときにテレビで見た和泉雅子さんのイメージは冒険に挑む勇猛果敢で快活なおばちゃんだったので、和泉雅子さんのイメージが思い切り覆されました。
スパイダース面々のたのみごとをてきぱきこなし、マチャアキと順ちゃんに大島紬を遠回しにねだるちゃっかりさ、なんとなくなんとなくを鹿児島弁で唄おうというスパイダース面々の妄想シーンの中、大島紬を着てふりふり踊り、おさげをおどらせながら乙女チックなポーズをする和泉さんは、マチャアキと順ちゃんが取り合うわけだと納得します。
内容も、プロモ映画としても前作のゴーゴー向こう見ず大作戦のほうが好きですし質も高いですが、シーンに散見される日活の名監督の輝きの断片と同じく日活黄金期の残像のごとき和泉雅子さんの魅力が見れる点では貴重な作品です。
それに、マチャアキと順ちゃんが作中では恋敵同士なのに同居しているという設定なので、二人の名コンビっぷりや、寝巻き姿でバカ話しながらきゃいきゃい戯れるサービスシーン(?)が見られる点では美味しすぎる映画だと個人的には思うのです。

文責・コサイミキ

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