S #9

『さて。この件は片付いたな。みんな、おつかれさま。』

わたし、は、いつものように事務的に言葉を綴った。わたし、の辞世の句は「平穏無事」らしい。

『まあ、今回も一切の痕跡がないので、警視庁の馬鹿どもは鼻すら聞かないでしょう。』

私、は、今回は自分の出番がなさそうね、と、安心した表情を浮かべている。


『ねー、あたし、あれ買っていいんでしょ!お金頂戴。いつもニコニコ、口座非経由の完全現金払いでよろしくね。』

『はいはい、わかってるわよ。お疲れ様。いつもの金庫から、必要なだけ取って行っていいから』

年長者が最若輩にねぎらいの言葉をかける。

『おれ、もお疲れ様。なにか欲しいものあれば、ご自由にどうぞ。』

『ダマスカスナイフの程度の良いものがひとつ出ていたから、あれ買っとくわ。たぶん、550ぐらいかな。』

『あなたたち、ほんとモノが好きね。理解できないわ。まあ、今は現金はたくさんあるから、ご自由に。』

金庫番を兼ねているわたしは、彼らの物欲、そのものが理解出来かねるようだ。

『あーあ、愛もお金で買えればいいのにね。』

幾度も買おうとして、偽物ばかりをつかまされた、彼女の言葉は含蓄にあふれていた。

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