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朝の湯気。

カフェに朝早く行く。
そういう経験はあまり多くない。
早朝にオートバイで出掛けて、そのさきで冷えたカラダを温めようとカフェに入ることはある。
でも徒歩で出かけた際にはほとんど経験がない。

朝の空気はとても気持ちがいい。
どの季節でもいいのだけど、とりわけ秋から冬にかけてのピンと張り詰めた空気が満ちている季節が格別に気持ちがいい。


旧くからの街の景観を大切に守っている、その街に着いたのはすっかり暗くなってからだった。
夕食を摂ろうと街の中心地に行ってひとしきり食べて、呑んで。
ホテルに帰る道すがら少しその景観地区に足を伸ばした。

観光客の姿は全くなくなったその街区で、店の中の灯はわずかに残っていた。
ひとりのスタッフが何やら書き物をしている。
窓ガラスに貼られた翌日の営業時間を確認すると朝食を食べることができそうだった。


翌朝。
昨日の道を思い起こしながらカフェを訪ねてみた。
開店時間すぐだったからか、店内にひと気はない。


旧い木製のガラス戸の向こうから朝の光が差し込んでくる。スタッフが無駄のない所作で準備を進める中で、ひっそりとキッチンから湯気が上がっている。


お願いしたモーニングプレートには、小ぶりのグラスにお白湯が付いてきた。
さっきの湯気はこのお白湯のものだったのかな。

厚切りのトーストをベースにしたモーニングはとても美味しかった。
ほのかに立ち昇る湯気の店内には人が増えてきた。
観光地の朝が始まったようだ。

さて、街を歩きに行こう。




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