チケットノルマを取る以上はバンドさんはお客さん

 チケットノルマを払っているから客だと思っているのならどうかしているというご意見なんですが、これは前々から指摘している発注者と受注者の混同によるものですね……。チケットノルマを取っている以上はお客さん以外にはならないです。過去動画でもお話しましたが、ここに関しては全体で論点をしっかり整理しておく必要があると思います

 いい機会なので少し整理しておきたいのですが、なぜチケットノルマを取るとお客さんになるかと言うと、理由は単純で、お金を出している側の人の方が立場が強いからです。


帳簿上の話

 帳簿上、チケットノルマで徴収した金額は売上高に相当します。この場合借方がチケットノルマ総額、貸方が売上高で計上されます。売上高で計上する以上はお客さんにしかなりません。

帳簿例
|現金|xxxxxx円|売上高|xxxxxx円|バンド名 チケットノルマ|

 逆にバンドさん側の場合、借方が現金、貸方はチケットノルマの総額、チケットの売り上げに関しては、借方がチケット代、貸方が売上高になります。

帳簿例
|現金|xxxxxx円|チケットノルマ|xxxxxx円|yy/mm/dd 会場名等 チケットノルマ|
|現金(チケット代)|xxxxxx円|売上高|xxxxxx円|チケット売り上げ|

 余談ですが、チャージバックは基本源泉徴収されませんから、実は割増料金なんです。ハコ側は売上金を預り金として預かり、バンドさんに右から左へ全額渡す。その上でノルマの全額+(100-バック%)xチケット代を頂戴する。帳簿上はそういう計算です。

 要するに、ハコをコマ割りした時間をお貸しして、その設備を使ってバンドさんが商売をされている。ただそれだけなんですね。ギャラなら源泉徴収しないといけないので。しないという事は帳簿上の扱いも違うという事になります。

キャンセル代の話

 もう一つ、チケットノルマを取る場合はバンドさんがお客さんになる証拠なのですが、キャンセルした場合チケットノルマの全額、場合によっては早めに伝えたので半額などにはなりますよね。

 これがお客さんではなく外注先や内部のスタッフであった場合、ノルマの全額どころでは済まないです。キャンセルによって興行一本を丸々潰される訳ですから。売上げの見込み金額の全額が妥当な所です。

 こういう安い金額でキャンセルできてしまうのも、チケットノルマを課されたバンドさんが予約客だからです。

イベンター側が提供するサービス内容

 バンド側が客なのであればイベンター側は何をサービスとして提供しているのかというと、ライブハウスとバンドの仲介業です。

 イベンター側はお仕事として、その日の会場の精算の責任、タイムテーブルなどの予定調整、といった物を提供し、舞台に立たせてあげるサービスを提供しています。

 人の良い方であればそんなこと無いよ協力するよと言うスタンスかもしれませんが、イベンター側はそれに甘えてはいけないんです。仕事としてお金をもらう以上はきちんとやり遂げないといけません。しかし、バンドさんの人の良い部分につけこんでタイムテーブルをいつまでも出さないようなイベンターさんが多いのも事実で、相手を客とすら思っていない、言い方は悪いですがいいように使える金ヅルだと考える人も多いです。そしてそういう仕事の出来ない人を作ってしまったのは甘やかしたお客さん、つまり甘やかしたバンドさんに責任があるので、客として言うべきクレームはつけてください。

チケットノルマはなぜ課されるのか

 常々指摘していますが、チケットノルマは相手に演奏家としての信用が無いから課されるものです。つまり、演者としてお金を払う価値が無いと主催者が判断しているためチケットノルマが発生します。

 失礼なんですよ、本来は。

 いくら常日頃、相手の演奏を凄いだなんだと褒めた所で、いざ主催ライブをやるときにはチケットノルマを取るという事は、本音の部分では価値のない演奏だと思っているという事です。

 本当に価値があると、本音から凄い、是非やって欲しいと思うのであれば主催者側が大口の客となって、お金を出しますと言うべきです。

受発注の対象を明確に

 舞台芸能の悪い慣習ですが、ノルマを課しながら、課した側の方がまるで発注者、すなわち客側であるかのように振舞い、客よりも偉そうにする。客に外注先のような振舞いを求めるなどの行為が、これまで平然と行われてきました。

 どちらがお金を払い、どちらがお金を受け取るのか。

 この関係をナァナァにし続けてきたため論点が混乱し、売り上げと粗利の区別もつかない良くない世界が出来上がってしまいました。この慣れあいが舞台上の慣れあいにも繋がり、良くない商品で来場客からお金を取るような環境が産まれてしまっています。

 舞台芸能の世界を良くしていくためにも、一旦誰が客なのか。ノルマ制は実は演者に対して失礼であるという事実を全員で見直していければなと個人的には考えています。

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