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2020年の新入社員たちへ

パズルでは毎年4月に3週間ほどオフィスで新入社員研修をしていますが、今年2020年はコロナ禍の影響によりリモートで実施しました。正確には3月下旬から会社全体でリモート勤務を推奨していてほとんどの社員が在宅勤務している中、4月1日(水)の入社日から3日間だけオフィスで研修し、翌週の6日(月)からリモートになりました。そして4月7日(火)、緊急事態宣言が発令されました。

8人の新入社員だけでなく、パズルの誰もが初めての体験で何もかも手探り。走りながら考える状態で、5月6日までとされる緊急事態宣言も延びるだろうと思いながら、カリキュラムを組み直し続けて毎日を迎えていました。結果的には6月4日のオフィスでの業務再開までの約2ヶ月間、リモートでの研修が続きました。今となっては笑い話も多い良い経験でしたが、研修する側も受ける側もけっこうヘトヘトになりました。

思えば最初の3日間、会社の基本的なことや社会人マナーと心構えを学ぶ研修だけでも、マスクして消毒して距離を取りながらオフィスで出来たことが後になってすごく良かったです。たとえ3日でも顔を合わせられたことでその後2ヶ月間に渡るリモート環境でもモチベーションを保つことができ、チームとしての結束が強まったのではないかと思います。そんな彼らへ研修の最後に話したことを紹介します。

リモートネイティブ

世界中の誰もが初めてしている体験に、新入社員の立場で直面した。経験豊富な人の中にはリモートワークを「制約」と感じた人も多い。多くの人は現状を困難と考えている。

社会生活、会社生活、それぞれにある作法、所作が体に染み込んでいる状態、すでにリテラシーが高くある状態へ、突然降りかかった異質な状態、非常の状態。

リモート研修の初日に初めての経験から出た素直な感想が、
・意外と一人ひとりの話を最後まで聞く。
・この状態に最適な人数は?

誰も答えを知らなかった。これからの経験の中から答えが見つかり、皮膚感覚として身につく。パラダイムシフトの最中、全ての世代が横並びのスタートラインに立っている自覚を持とう。そこから「世代の役割」がきっと見えてくる。

新しいノーマル

あらゆる前例、すべての成功体験を捨てる覚悟が必要な時代。前例を持たない者がフラットに考えるベスト、それが新しいノーマルへの近道

コロナ禍を通過中の今、ウイルスと共生する時代、ウイルスを克服する時代、次の困難を迎える時代に、どんどんノーマルは変わり続ける。もう前には戻らない。

これまでもノーマルは変わり続けた。みんなが生まれた頃からだけでも、インターネットの前と後、携帯電話の前と後、ソーシャルメディアの前と後。スマートデバイスの前と後。生活習慣も街の風景も変わった。作法が変わって、所作が変わり、価値観が変わった。常識が変わった。

今回は大きく強いショックがあり、時間的なオーバーラップがなかった。あまりにも極端な急変。映像で言えばカット変わりで全く違うシーンになった状態。リアルタイムだからこその動揺が多いが、数ある歴史の転換点の一つに過ぎない。

100年に一度のことを、100年後に伝える

まだ個人的に整理がついていない。
我々は100年前のスペイン風邪の記憶を持っていない。75年前の戦争の記憶の風化が懸念されている。25年前、9年前の震災の記憶すら風化が始まっている。

今は5年後10年後にいかに生き残るか、何をすべきか、を考えている。
その先、20年後30年後40年後、子どもや孫たちにどう語るか。
歴史の教科書に載る体験をしている中、当事者として伝え方も考えておきたい。

例えば、1990年代後半に生まれた世代は、
911(2001年)をどう知ったか。 
*2,996人死亡(被害者2,977人+実行犯19人)、6,291人以上負傷(wikipedia
SARS(2002−2003年)を知っていたか。 
*世界30ヶ国、8,422人感染、916人死亡(wikipedia

違いを知る、認め合う

ここからは例年も話していることを。

個性的な同期、お互いの違いを知ること、認め合うこと。大切だが難しい。
みんな一様の経験は無い。1年目だから出来ていなければならないこと、知っていなければならないこと、の画一は無い。

自分ができるなら誰でもできる、とは限らない。
人ができていて自分ができていないことを、悔しがらない。
隣の芝は青い。

こんな考えを持つきっかけになった本が「バカの壁」。

相手は分かってくれない。人は自分の思い通りにはならない。
全ては自分にも原因がある。相手は自分に合わせて思考してくれない。

常識の違い。価値観の違い。
環境により、関わりにより、
常識は違う、価値観は違う。

男と女は違う

男女差別はしないが、男と女の区別はする。
生物としての違いから、能力の違いを知っておく。

進化の過程から違いを説く本が「話を聞かない男、地図が読めない女」。

大枠をつかむ、ディティールを積み重ねる、得手不得手の違いが男と女にはある。

男はシングルタスク。集中力は高いが、二つのことを同時にできない。
女はマルチタスク。情報認識能力が高く、複数人の話を聞き分ける。

(ここで実証実験。当日の朝礼で司会をしたスタッフの服装を聞くと、男は全く答えられず、女は服の構成や色、アクセサリーまで答えます。)

能力の違う者たちが補い合うから、チームは成り立つ。

人は誰でも自分が一番可愛い

誰でも自分の身は守りたい。誰でも自分が一番大切。
自分は正しい、自分だけは正しい、と考えやすい。
自分以外は間違っている、悪い、と考えやすい。

今、目の前の彼、彼女もそう思っている。
その相手の気持ちになってみる。思考回路の訓練でもある。

究極の状態において、自分さえ良ければそれで良い。
ただし、不幸は巡り巡って自分に返ってくる。因果応報。
良い行いは必ず報われる。

自分ができないことを人のせい、環境のせいにしない。

疑って、変わり続ける

おそらく研修を通じて多くの先輩たちが異口同音に言ったであろう、既成概念にとらわれるな。例えば今のパズルのルールや方法はたまたま今そうなっているに過ぎない。全て正解ではない。同じように研修で習ったこと全てが、たった一つの正解ではない。常にそれがベストか?そこにクリエイティビティはあるか?を問う姿勢を持つこと。良い方に変えることは誰も文句を言わない。勝手に変わって良い。

そして、変わり続けるために、変わる前のものを身につける。
変わることはかけ算。相乗効果を生むこと。小数点以下では効果が薄いどころか、かけると減ってしまう。ゼロからは何へも変われない。1.0以上のものを何か身につけること。

生きる時代を意識しながら、今の時代の一人前に必要なことを考えて目指すこと。先輩の成功体験はあてにならない。変わり続けねば、の前に、今できること、今やるべきことを一つひとつ、丁寧に、確実に、やる。

今後のヒントとして、安定した時は壊す時。出来上がって安定した状態からは退化しかない。身についた所作を疑ってみる。惰性でしていることを変えてみる。変化にはタイミングが重要。

苦手意識を捨てる

どんなことも、最初は誰でも初めて。
苦手と思っていることをどれだけやったことがあるのか、
得意になれるのに途中であきらめていないか。

ただ単に好き嫌いで決めていないか。
嫌いと感じたことを苦手ということにしていないか。

反対に、好きなことを得意ということにしてしまっていないか。
それは他の誰よりも上手にできているか。

苦手と決めつけて向き合わないことで多くの機会を失う。
可能性を閉じてしまう。あまりにももったいない。

失敗する

人がやることには必ずミスは起きる。
ミスはつきもの、という前提を持っておく。

失敗が許される1年間。
知らなくて良い、できなくて良い、間違えて良い1年間。
できる失敗はこの1年のうちに全てやっておく。

来年、知らないこと、できないことが許されなくなる。
失敗が許されなくなる。そのために、今のうちにやっておく。

物事の考え方、今の人格形成、自分が大きな影響を受けた本「失敗学のすすめ」。

失敗はあるという前提で考えておく。失敗は隠れる性質がある。共有し、知識化する(ナレッジマネージメント)。とても数分に要約しきれないが、事実を例に失敗に学び創造性を培う考え方を叩き込まれた思いのする本だった。

2000年に出た本だが、2011年に東日本大震災で津波被害のあった三陸地方に点在する「ここより下に家を建てるな」と刻まれた石碑の下に家が建つ様子を紹介し、失敗情報の風化しやすさも説かれている。

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失敗体験を同期の間だけでも共有すると良い。先輩たちも毎年やっていて蓄積されているが、先輩から聞く失敗談よりも同期の体験談の方が身につまされて当事者意識を持ちやすい。

正解をあてにいかない

失敗して良い、ということに納得しているはずなのに、現場に出ると忘れる。

先の「人は誰でも自分が一番可愛い」には、
自分以外の人に負けたくない(潜在的な競争心)
人より優れた人でありたい(無意識的な優越感)
という気持ちが潜む。

失敗しない人、間違えない人でありたい。
だから、
失敗が怖い、間違えることが怖い。

自分は正解を出す人、間違えない人でありたい。

萎縮、事なかれ、マイナス思考に陥る。

失敗していい一年、
間違えていい一年。

繰り返し言うが、
むしろ、失敗しよう。
積極的に間違えよう。

「先輩は自分に正解を求めていない。」くらいに開き直れば良い。
バカのふりをして可愛がられようとするくらいで良い。

ゆとり世代 = お膳立て世代

自発的に、自ら進んで考える力、思考力を鍛える教育をうけ、「さあ、考えよう」と、考えることを後押しされてきた世代。やがて、考え始めることに先生の許可を求めた世代。もしかしたら先生は自発を禁じられ許認可の中で生きてきた世代。

現代の高度な教育と、培われた能力の発揮がアンバランスに感じる。
自分なりの答えを持っても、背中を押されれるのを待っている。

研修を通じて、また現場でも世代特有の傾向を感じて気づいた。質問が多いのは良いが、それは間違えたくない気持ちの表れでは?質問には答えを持ってこいと現場では教わる。つまり一度は自分で考えるように、しかも間違えて良いということ。これはゆとり教育で目指したはずではなかったか?

もう一歩、踏み出す意識を持ってほしい。勇気はいらない。お膳立ては待たない。
アタマで考えたことを言う必要はない。ココロで感じたことを言えば良い。

この世は分からないことだらけ。初めから正解探しをしない。

コピペ禁止

目の前によくできたお手本があったら真似したくなる。自分でも使ってみたくなる。ごく自然なことで全く問題ない。お手本をかたわらに置いて、真似して書く、描く。まずオリジナルの意図を考えてみる、理解する。真似しながら自分のものにしていく。

コピー&ペーストは正確な複製のために行う作業であり方法である。良いところ取りの抽出作業ではない。

しかし例えば、コピペで繋ぎ合わせた文章は耳障りの良いフレーズを集めて文脈を無視して並べられる。元の文章には文脈があって、話の順序がある。書き手の意思がある。意思を無視したフレーズ集は意味が通らない。

コピペそのものは人力の作業。人のやることには必ずミスが起こる。
コピペのミスは情けない。格好悪い。信用を失う。コピペはパクリを生む。
安易に正解を欲しがらないこと。

肩書きは周りが決める。

プロフェッショナルとアマチュアの違い、差は何か。なぜプロフェッショナルは報酬を得るのか。なぜアマチュアはプロフェッショナルと同じようなことをしても報酬を得られないのか。確かに、プロフェッショナルもアマチュアも同じクオリティのモノはできる。

プロフェッショナルはゴールイメージを持つのが早い。
一直線にゴールへ向かい、質を高めるのに時間を使う。
アマチュアはゴールイメージを固められない。
試行錯誤を繰り返し、時にやり直し、見えたゴールへ近づくのにも時間がかかる。

知識量やツールを扱う技量の差だけではなく、目標を見出す能力(目指す方向、やるべきこと、ゴールとアプローチの設定、プロセスマネジメント)の差が違う。取り組む姿勢が違う。所作が身についているかどうか。

仕事中の雑談は良い。時に良質なインプットにもなるし、知的好奇心の刺激にもなる。ただし、冗談に笑っている時、アマチュアは手が止まる。プロフェッショナルは手が動いている。取り組んでいる姿勢の違い。所作の身につき方の違い。

それぞれ志望職種がある。プロフェッショナルとしてなりたい職種がある。
今から名乗ることもできる。自称はこの世に多くいる。

それを周囲が認めるかどうか。
周囲が役割を認める。役割を求める。それが自分の役目になり、肩書きになる。

これから今はない表現で役割を示されることもある。自分が好きか嫌いかではない。場合によっては、なりたかったものへ固執しないことも大切。
認められた役割を担う。求められる役目を全うする。すると報酬を得る人になる。
その時の肩書きがプロフェッショナルとしての自分ということ。

初心

入社前に抱いた希望と不安。入社して感じたこと、分かったこと。研修を通じて掴んだこと、見えたこと。湧き上がってきている決意、野望。悲しいかな一年もすれば、すっかり忘れてしまう。今の純粋な気持ちを忘れないでいて欲しい。

(ここで毎年、自分宛の手紙に「初心」を書き、一年間、会社の金庫へ保管します。今年はリモート研修の最中、4月末に書いて会社へ郵送しました。)

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こうして新入社員たちは研修を終え、現場へ入って仕事をし始めます。今年は未だ出社できていない新入社員も多くいると聞きます。ただどんな環境であれ、この状況にチャンスを見出してほしいと思っています。いま想像する将来像、その半分くらいは憧れかもしれず、その想像通りに成長することはたぶんないでしょう。これから出会う人や仕事、世の中の出来事、何かがきっかけになって、初心で抱いた決意を飛躍させ、想像以上の何者かになると思います。

冒頭で述べた通り、大きな変化の時は先輩も後輩も関係なく、全ての人が同じスタートラインに立ちます。その時、若さはとても強みになります。気力も体力も充実し、吸収力や理解力は圧倒的に有利です。今年は世界中の人たちが同じスタートラインに立ちます。こんな経験こそ、100年に一度なのかもしれません。

2020年に、もはや古くなってしまった常識を持たずに社会人デビューした若者たちが、どんな成長をするか、どんな変化をもたらすのか、楽しみで仕方ありません。日本中の新入社員たちに期待しています。

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