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「圧巻の一人芝居と朗読」・・・朱の会小公演



出演者からの案内を受けて、朱の会の小公演を見た。
小さな会場(阿佐ヶ谷ワークショップ)での朗読と一人芝居の講演であったが、見るべきものはたくさんあった。

まず何よりも、玉木文子氏の一人芝居「Repentir」だ。
母の通夜に帰郷した(三姉妹の中の)次女、という一人芝居なのだが、
セリフと受けの芝居だけで、その場にいる三姉妹の性格と状況が非常によく分かる。
実際には無い母の遺体や保湿クリームなどの小物に至るまで、
実に丁寧に描写されていて、見事に惹きつけられた。
ここまで、人物や設定をしっかり認識させて、
どう終結させるのかと期待を持たせてくれる作品に出合ったのは
久しぶりだったった。
小林四十氏の書き下ろしという事だが、氏の他の作品も見てみたくなった。

順に紹介すると、冒頭は、森下典子氏のエッセイ「日日是好日」の
前書きを朗読された高井康行氏。
エッセイの朗読というのは、上っ面を撫でただけの印象に陥りがちで、
危険な選択かと思われたが、その心配は杞憂であった。
このエッセイの魅力を存分に観客に伝えきっていたと思う。
元の本を読んでみたくなった。

続いて主宰の神由紀子氏。谷崎潤一郎の「刺青」。
シャレを言うつもりではないが、神さんの姿勢にはいつも頭が下がる。
作品へのアプローチの仕方、観客への気遣い、もちろん佇まいなど外見的な事も含めて、尊敬してしまう。毎回公演が満席なのも頷ける。
「刺青」については良く知られている作品で自分も読んだことがあったが
神さん流のアプローチで全く違う印象で面白かった。
絡め取る、というよりスパッと切り捨てられるような感じで小気味よかった。

最後は、佐藤昇氏。森鷗外「高瀬舟」。
この作品は色々な朗読の会で良く聞くが、何度聞いても難しい作品である。
内容がと言うより、朗読として読むのはかなり難しいと思う。
読まれた佐藤さんは読み終わってからのカーテンコールで、
「高瀬舟は何度読んでも感涙する」と言い、実際に涙ぐんでおられた。
作品への思いは相当強いのであろう、朗読にも力がこもっていた。

わずか、2回だけの公演(26日まで)で、すでに完売とのことだが、
後日、配信などが可能なら是非お願いしたいところである。

来年5月には「朱の会」の本公演も控えているという。今から期待が大きい。

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