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気だるい休日明けの朝に。Original Loveの夏うた〈ヴィーナス〉〈サンシャインロマンス〉

Original Love(オリジナル・ラブ。田島貴男さん)は、とても吸引力のあるアーティストだ。

ソウル・ジャズ風の音楽は、通好みのリスナーに愛され、骨太でアグレッシブな佇まいで、ライトなリスナーにも愛される。

ソウル好きでもロック好きでも「オリジナル・ラブいいよね」と一致できる、そんな存在。

*  *  *  *  *

数年前、30代の終わりが近づいた夏のこと。
私は同級生の友人と会って、彼女の部屋で、久しぶりにゆっくり話をしていた。
私は初めての子どもがお腹の中にいて、友人は、地元で食品関係の会社を立ち上げたばかりだった。

1Kの友人の部屋は、在庫や試作品であふれていた。

超自然体で、愛想笑いする所を見たことがない、でも男女問わず誰からも愛される彼女。

「まぁ、会社勤めに向くタイプでもないからね」
興味を持ってあれこれと聞く私に友人は、そんな風に淡々と、でも面白い話をたくさんしてくれた。

そのうちちょっと横道にそれ、音楽の話に(私の地元の友達は、たいてい音楽好きだ)。
田島さんファンの友人に、私は言った。
「オリジナル・ラブって、意外と爽やかな曲多いよね。朝聴きたくなる」

私があげたのは「サンシャイン・ロマンス」。夏らしさ満点で、海へ山へ繰り出したくなる曲。

すると友人は言った。
「私は朝聴くなら、『ヴィーナス』だな」

「え、『ヴィーナス』? 気だるくない?」
という私に友人は言った。
「『ヴィーナス』聴いて、っつーって言いながら、朝運転するのがいいんだよ」

私は、気だるい「ヴィーナス」を聴きながら、ハンドルを握る友人を想像した。
それは、海へ山へ行く車ではない。仕入れや納品に向かう、彼女お気に入りの営業車。

なるほどなぁ。
それから、「ヴィーナス」は私の夏の定番になった。

あれから数年経った。
お腹にいた子どもは小学生になり、友人の経営する店は、地元で知られる存在になった。
いつもSNSで、彼女のお店の最新情報が入ってくる。

盛り上げ曲でも励まし曲でもない。ただ、夏の暑さと共に、じわじわギアを上げていくような「ヴィーナス」。

彼女のしたたかさ、しなやかな強さを、この曲を聴くたびに思う。


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