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【2020年オンライン夏合宿インタビュー Vol.3】スーパー彦市 田頭誠志さん編

四万十川から見えるスーパーマーケットとして、地元の人に愛される「スーパー彦市」
西土佐店(四万十市)と十和店(四万十町)の2店舗展開のこちらのスーパーは、地域一番店になることを目標に、住民の生活の一部として重要な役割を担っています。

図1

スーパー彦市 十和店
(画像:株式会社彦市HP

今回お話を伺ったのは、「スーパー彦市」の従業員として働かれている田頭誠志さんです。

図2

↑田頭さん(左)が、お客様に商品説明をしているところ。
*表現上の演出でマスクは外してますが、通常はマスクをして接客しています。

高知県で生まれ育ち、働き続けている田頭さんに、スーパーで働いていて感じる四万十町の魅力、地元の方や観光客との関わり方、そして今後の展望について伺いました!

四万十町におけるスーパー彦市の存在

ースーパー彦市さんの周りには、他にスーパーはあるんですか?

田頭さん:小売店が、東に3キロ程に二軒、6キロ程に一軒あります。それから、西に20キロ程行くと、彦市の本店がありますね。コンビニエンスストアについては、東西南北40キロくらいはありませんね。

ーなるほど、スーパー彦市さんは、住民のライフラインのようなポジションなんですね。

田頭さん:そうありたいなとは思います。車で東へ50分程の四万十町中心地の窪川という町には大きなスーパーや大きなドラッグストアもあるので、ちょっと離れたところで仕事をしている方なんかは、そこで買い物をしていますね。また、愛媛県の方にも車で40分くらい行くと、ドラッグストアや大きなスーパーマーケットがありますので、そこで買ってこられる方も多いと思います。

ー結構車で遠くまで行かれる方も多いという感じなんですかね。

田頭さん:窪川で働かれている方もいますし、行く人は多いと思います。ただ、高齢の方はなかなか行けないので、そういう方の食に関するインフラを確保するのに貢献できたらなという思いです。


スーパー彦市と地元のつながり

ースーパーには、地元の食材なども置かれているんですか?

田頭さん:いやぁ、これが弱いところでしてね。地元の食材といっても、まあ野菜なんかはたまに入ってきた時に置きますけど、あんまりないんですよね。

ー野菜とかいっぱい置いてるイメージだったので意外でした。

田頭さん:彦市は高知県の大手スーパーのフランチャイズなので、野菜は、その系列で卸してもらっています。また隣接する四万十市の青果市場から取り寄せています。そういった流通の中、四万十町でできたものを売ってはいますが、直接地元生産者と取引して定期で置いているということではないですね。残念ですけど…。でも、地元産品もいい品物はありますね。

ー地元の農家さんと関わりはありますか?

田頭さん:あります。良いものを作っている老夫婦がいるんですよ。ししとうとか、キャベツであったりとか、大根であったりとか、かなり良いものを無農薬で作っています。そこの農家とは、品物ができたらうちで販売をしてますし、例えば都市部の方にもそういう安全安心で美味しいものを届けたいなという思いはあります。四万十川の流域で老夫婦がやっているんですけど、今は販売ルートがないのでそのルートを作れたらすごくいいなと思っています。また、そうすることで、その夫婦はもう後継を作らないような感じでいるんですけど、誰か継ぐ人もできるんじゃないかなというところも考えています。要は、都市部との繋がりを作れたらいいなと言うふうに考えてるんですね。それは一農家のことでなく、郡部の小規模農業者(家族経営のような)にとっては、とても必要なことだと思います。

ーそうなんですね。都市部との流通網を確立したいということですよね。

田頭さん:流通について、日本はすごく流通網が発達してるんですけど、都市部から地方に向けての方向が発達してるだけであって、逆に地方から中央に向けては難しいんですよね。力がある若手とか、大きな母体を持ってる人々、四万十町でいうと豚肉であったりとか生姜であったりとか、そういう産品はどんどん中央にいって評価をもらってますけど、郡部の方で高齢の方が2人くらいで作ってる良い作物を中央に送ることがなかなかできないことは、ちょっと課題だと思っていて、町の方にも投げかけています。

ー彦市さんが直接繋がりのあった農家さんを広めたくて、町の方に繋いだと言う感じなんですか?

田頭さん:それも当然含まれますけど、そういう方々が利用できるルートを作って欲しいし、必要ではないかなと思っています。


スーパー彦市のこだわり~3つのロスをなくすこと~

ースーパー彦市さんのモットーを教えてください。

田頭さん:地域一番店を目指すことを目標にしています。そのために、気をつけようとしていることが3つのロスをなくすことです。1つ目が、機会ロスですね。お客様にものを買ってもらうチャンスを逃すということです。例えば、お客さんが欲しいなって思ったものが品切れだったりすると、これは一つの機会ロスになります。他にも、この時期に、あるいは今これ欲しいなというものをできるだけ品揃えできたらいいなと思っています。

2つ目が、廃棄ロスです。例えば、ちょっと売れ筋がよくないものは割引をせざるをえなくなります。また賞味・消費期限がきたものは廃棄しなければなりません。こういった割引・廃棄を少なくするということです。特に食品廃棄(フードロス)は世界的にも問題視されてます。

3つ目としては、これが一番大事かなと思ってるんですけど、コミュニケーションロスをなくすということに気をつけています。これは当然、お客さんとのコミュニケーションもそうですけど、従業員同士のコミュニケーションが最も基盤になると思っています。なので、従業員同士のコミュニケーション、それからお客さんとのコミュニケーション、といったことに気を付けるようにしています。

ーコミュニケーションにもフォーカスして、地域の人とのつながりを大事にされている印象を受けました。

田頭さん:小売店なので、日々お客さんと対応して話しながら買ってもらうとか、単に商品を売るということ以外にも、人が集まってくるような店、それがやはり地域一番店だと思います。地域で一軒しかないとか、地域で一番売れているとかそういう意味合いではないんですね。そのようなもう少し広い意味合いで、地域一番店を目指しています。

ー彦市さんで、ここは特に力を入れているというポイントはありますか?

田頭さん:安心安全というところは外せないと思うんですけど、新鮮で良いものを置きたいなというところもあります。例えば、流行ってるものや旬のものを都市部や大規模店とタイムラグなく提案できればと思っています。

図3

新鮮で豊富な品揃えの店内
(画像:株式会社彦市HP


四万十町の魅力の伝え方

ー四万十町の魅力を伝えるためのスーパーならではの発信方法は、何かありますか?

田頭さん:発信というのは、来ていただいて実際に会話を交わすことで伝えるのが一番いいのかなと思ってます。ただ、あくまでも情報発信はうちの仕事ではなくて、役場の仕事であったりとか観光協会の仕事であったりとかなのかなと考えています。

ー生活とか現地に根付いているという強みがあってのことですね。

田頭さん:最近では、ある方が一週間くらい四万十川に来られてたんですね。その方なんかがチラッと来てくれた時に対応することで、いろいろな話もできます。今日はわざわざその方がお別れの挨拶に来てくれたんですけど、いいところですという話など、四万十町の良さを伝えることもできるし、実際にコミュニケーションを図るというのはいいかなと思っていますね。

ー他にも何か、より観光客に来てもらうための関わりなどはされていますか?

田頭さん:例えば町であったりとか、役場がキャンペーンをする時には、積極的に参加するようにしています。今やっているのは、2つあって、1つは、「奥四万十じも旅キャンペーン」というものです。四万十川流域の5つの市町村が協力してやっている地域内経済活性化キャンペーンです。もう1つは「道の駅 四万十とおわ」にジップラインができたんですけど、ジップラインをやられた方がうちにきて、1000円以上買っていただくと飲料を1本進呈していますね。

地域密着型のスーパーで働く田頭さんから見た四万十町の変化

ー田頭さんから見て、近年の四万十町の変化はどんなことがありますか?

田頭さん:高齢化が進んでいることは間違いないですね。仕事をする上での課題にもつながるんですけど、高齢化が進んでいって、例えばうちの店に来られなくなってるお客様もかなり増えてきています。100mの移動もなかなか難しいという方も現実に増えてきていますね。うちに2,3年くらい前に来てくれていた方も亡くなっていたりとか、来られなくなっている方も増えてきています。これが大きな課題です。


ーそうなんですね。そのような課題に対して何か取り組まれていることはありますか?

田頭さん:「とくし丸*」が彦市本店と1台契約しています。いま1週間くらい経ったところですね。こういった移動スーパーがとても大事かなと思っています。うちのスーパーは固定されているので、来ていただくことも大事ですけど、お客さんの方に行く、軒先まで行きますよ、というのが売りなんですね。そういう移動スーパーが、うちの店近隣で、とくし丸以外に2台走っています。

とくし丸*:軽トラックの移動スーパーのこと。お店まで移動するのが困難な高齢者のために取り組みが進む。商品は、約400品目、約1,200〜1,500点にもなる。(出典:移動スーパーとくし丸

田頭さんにとってのスーパーのやりがい、そして今後の展望

ー先ほどのコミュニケーションをとても大切にされているというお話が印象的だったのですが、コミュニケーションをとるうえで大事にされてることや感じられていることなど、スーパーで働かれるうえでのやりがいを教えてください。

田頭さん:商売でやっているので、物が売れたら嬉しいですね。ですが、ただ単に物が売れて、売り上げが上がるというだけでは寂しすぎるので、「美味しかったよ」という声が聞けるとか、「これはいけるぞ」というものが売れたときなんかはもっと嬉しいですね。ちなみに私、インスタントラーメンが好きなんですけど、品揃えは、そこらへんのスーパーには負けませんよ。東京のコンビニにも負けないかな(笑)

あとは、観光客の方といろいろ話す時に、私自身が興味を持った時にパッと話しかけているというようなイメージですね。いまちょっとコロナの影響で全然来ていないんですけど、うちのスーパーのすぐ上にゲストハウス「かっぱバックパッカーズ」があり、インバウンド効果がすごく高かったんですよ。コロナウィルスが流行る前は、外国人の方がすごく来てました。ヨーロッパの方も多く、結構面白かったですよ。例えば、フランス人の方とかは、「何しにここに来たの?」とか聴くとね、「ただ歩きに来た」とか、「川を見にきた」とか、そんな感じなんですよね(笑) そういう外国の方との、ちょっとしたあいさつとかでも結構面白味を感じますね。地図帳を見せて、「どこから来たの」とかやったりしてました。(笑)

ーでは最後に、これから10、20年でみて、田頭さん自身はスーパー彦市の今後にどういうイメージをお持ちなのか教えてください。

田頭さん:移動スーパーをもっと増やしたいと思っていますし、その需要は増えるのではないかなと思っています。地域の方の食のインフラを支える必要性があるので、人口減・高齢化がすすみますが、なんとか店も維持をしたいなと思っています。商品の売り買いについてもそうですけど、それ以外にもちょっとした休憩室であったりとか、買い物に週に1回バスで来られた人などがお茶でも飲みながらお話をするようなスペースを作ることを、準備段階ではあるけれども考えています。また、そのスペースが、地域の若いお母さん方が子供の送り迎えの間に使えるような、物が動くだけでなく、コミュニケーションをとれるような場所作りというのも地域一番店として欠かせないのかなと思っています。

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地域一番店となることを目標とされているスーパー彦市さん。中でもコミュニケーションを通じて地域のつながりを大切にされているという田頭さんのお話はとても素敵でした。

今、地方が直面している高齢化の進行という課題に対して、役所と共に積極的に取り組まれている姿勢は、田頭さんが地元を愛し、地元に愛されているからこそのものだと感じました。

図1


最後に、牛島ゼミの“ぎゅうポーズ”で田頭さんもご一緒に写真を撮っていただきました!
本当に気さくな方で、途中の小話もとても面白く、話がつきませんでした!
四万十町に行ってお会いする時が待ち遠しいです☺️


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