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"小さな成功"が月に連れて行ってくれる

今日は「目標の持ち方」の話です。目標について考えるときに自分の頭に常にあることは、今日のテーマである"スモールウィン(小さな成功)"です。

スタートアップが持つ特性上、ムーンショットが求められるし、強迫観念のように倍々ゲームな事業計画がたてられがちなのではないかと思います。ですが、僕自身の基本的なスタンスとしては「ムーンショットな目標は持つべきでない」と考えています

正確にいうと

【Must】
短期的な目標(業種にもよるが、直近1年が目安)

【準備状況による】
・ムーンショットな目標に対して、仕込みが決まっていない
≒特に準備や根拠はないけれど、"いま伸びている"からと倍々成長な目標をたてる

【事業特性による】
行動量(マンパワー)と成果が比例しにくい
≒"極端に言うと"、営業はアポ件数 × 契約成立率なので、契約成立率が同じであれば、アポ件数を増やせば増やすだけ売上は上がる

1:nの関係性でない
≒自分たちで実在庫(not デジタル)を持つ必要がある事業など

という場合に関してであって、長期的にはムーンショットな目標はむしろ持っておくべきだと思っています。また、ムーンショットを生むための戦略・施策を考えないということではなく、あくまで目標の持ち方の話ということを念頭に入れていただければと思います。

なぜムーンショットな目標は持つべきでないのか?

では、なぜムーンショットな目標を持つべきでないと思っているか、の前提としてあるのが「ムーンショットはコントロールできない」という自分自身の体験からです。そして、それによって、以下の2つの問題を引き起こすという実感があります。

1.コントロールできないものを追って、正しいことをやめてしまう
2.ムーンショットな目標にカスリもしないときにチームを破壊する

0.ムーンショットはコントロールできない

個人的な経験として、過去モンスト・AbemaTVなどで働いてきて、ムーンショットな成長をしたときは、いつも自分たちの現状から少し背伸びした目標を立てて、そこを達成すべく頑張っていたら、蓋を開けてみると「えっ、なんでこんなに伸びてるの?」とビックリするケースしかなかったです。

事前にムーンショットな目標をたてて、それが現実になったという経験は個人的には一度もなく、ムーンショットな目標を立てたときにいつも崩壊してきた経験があります。(帰納法として、n数少ないぞというご指摘は最もではありますが、現時点の自分はそう思っている)

ムーンショットが起きるのはティッピングポイント、閾値を超えるときでそれはコントロールできないと考えています。

1.コントロールできないものを追って、正しいことをやめてしまう

そして、そのコントロールできないものを追い求めるあまり、正しいことをやっているのにそれが間違いである、これではいけないとやめてしまう可能性が高いということが1つ目の理由です。

よくあるパターンかなと思うのが、年の目標をムーンショットで決めて、それを月にプロットしていくものです。例えば、現在伸びてきているぞ!という10万MAU(≒月に10万人が使用している)のアプリが100万MAUを目標に掲げると、以下みたいなのが結構やられがちなんじゃないかなと思っています。(恐ろしいけど、普通にあると思う...)

1月:12万MAU、2月:14万MAU、3月:18万MAU
4月:25万MAU、5月:25万MAU、6月:30万MAU
7月:50万MAU、8月:60万MAU、9月:65万MAU
10月:75万MAU、11月:80万MAU、12月:100万MAU

そして、はやくも3月くらいには大きくビハインドしてて、桁が変わる7月くらいにはもう後ろ姿も見えないみたいなのが想像つきます...

「人が人を呼ぶ事業モデルだから」とか「4月から広告打つから」という期待値だけで、過去のデータなどによる"実現難易度が正しく把握できていない"状況で目標だけ高く持つというパターンです。

そして、7月とかになって「もうこれはどうしようもないぞ...」となったときに現実的な目標に修正するパターンはまだ良いのですが、それでも大振りしてリカバリーを狙いにいくというのがカイジ顔負けの最悪のパターンです。

その最悪のパターンまではいかなくとも、今までやってきたことで達成できていないのだから、違う方法に全振りしてリソースをかけにいくというのは往々にしてあると思います。

もし正しく続けていれば、半年後・1年後にムーンショットな成長が待っていたかもしれないのに、その時点で達成できなかったことで、これではいけないとやめてしまう。大振りを狙いすぎて、長期的なストックの上に成り立つ成長を許容できなくなる、という損失が大きいと考えています。

2.ムーンショットな目標が達成にカスリもしないときにチームを破壊する

そして、目標は持ち方によって、本当にかんたんに「組織・人」を腐らせると過去の経験上思っていて、その典型的なパターンが"根拠のないムーンショットな目標"だったというのが2つ目の理由です。

ムーンショットな目標はコントロールできないわけで、そこに向けて精一杯やりきったとしてもいつ来るかはわからないわけです。100%コミットをしても未達という状況が続くと以下のような強力な負のループが回り始めます

どうすればいいかわからなくなって、手数が減る(思考停止)

未達に対しての感度が鈍る(防御反応)

他のチームが悪いなど、他人のせいにしだす(他者攻撃)

僕は人間そんなに強くないと思っていて、頑張れば達成できそうなことは努力できるが、遠すぎると思考停止するほうが圧倒的に多いと思っています。そして、それを起点として、チーム全体の自信と活力を奪っていきます。

目標をたてる際に参考にしている言葉

現Gunosyの代表取締役会長 グループ最高経営責任者である木村新司さんが2015年に書かれていた「目標設定の大切さ」というmediumの記事を毎月読み直すようにしているのですが、ここにすべてが詰まっていると個人的には思っています。

何かをやるのであれば、数年後、10年後などの数値目標、定性的な目標を明確にする。多くの人が目標を達成できないのは、①「詳細な日々の行動目標に落とさないこと」 ②「実現が可能なような日々の目標におとさないこと」にある。

まず、無理な目標を平気でたてる。例えば、腕立て伏せ毎日100回とか、まず3日目から続かないような努力目標を立てて、達成しないような事をやる。もっとも大切な事は達成することなのに。

達成する目標を設定して、それを徐々にあげていって、今度は3ヶ月それが続くようにしていく。3ヶ月続いたら、今度はそれを1年の目標にしていく。徐々に伸ばして、自分が目標としている数年後の目標へ届くのか確認する。よく、新規事業の売上を平気で当年に入れている事業計画をみるけれども、そんなうまくは行かないし、そこは計画外の成長として扱う。1度目は、こうやって、簡単に日々の目標から積み上げをする。そうやって、自分の目標へ実は届かないというのを思い知る。

次にこの日々の目標設定は信頼性があるのかというのを疑う。この目標設定をずらさない事がまず第1の目標だ。その為には自分が作った目標設定と行動計画をもっともっと小さく分解して、それが本当に達成可能なのか?どこに甘さが残るのか。達成できなそうであれば、それのバックアッププランを10個ぐらい書き出す。何が何でも達成するのだという意思で、そのバックアッププランを用意しておく。

自分自身まだまだ至ってない部分が多いですが、自分の思考をチューニングしてくれます。

まとめ

現状、ベストエフォートではないかと思っているものは以下のとおりです。

1.近い目標は現状から背伸びしたレベルでたてる
・目標は常に修正するもの、上方修正するのが当たり前という姿勢で運用する

2.遠くの目標はムーンショットでたてる
・口に出して常に言うようにするのが良い

3.ムーンショットのための戦略、施策は計画外のものとして分けて準備する

もちろんこの目標の持ち方でも「ぬるま湯になってないだろうか」「できるはずの努力を怠っていないだろうか」という自問自答は常に必要になるし、その匙加減には悩み続けています。ただチームが崩壊しにくいという点ではこちらのほうが個人的には合っています。

何が正解かは、自分だったりチームに合う合わないもあるので、ムーンショットな目標に苦しんでいる人がいれば、他のパターンで考えてみると意外に楽になって前を向いて進んでいけるかもという記事でした。


うれしいです!