CRYCHICに脳を焼かれたオタクの戯言 ~「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」Blu-rayのサウンドトラックを聞いてくれ~
感情の置き場
はじめに
2023年06月29日、アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の第3話が放送され、劇中で初公開となった楽曲『春日影』
アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」本編のストーリーを大きく左右することになるこの曲についていろいろと書いていきます。
CRYCHICの曲としての春日影
概要『春日影』
楽曲としての春日影が初めて公開されたのは2023年06月29日放送の第3話後半。同3話前半で描かれた燈の過去と祥子との出会い、CRYCHICの結成を経て、燈が初めて歌詞として書いた詩をもとに祥子が曲を作ったのがこの『春日影』です。
第3話劇中ではワンコーラスのみでしたが、その後第7話で MyGO!!!!! ver.としてフルバージョンが披露され、2024年04月17日発売の「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」Blu-ray 下巻付属のサウンドトラックにCRYCHIC版春日影のフル音源が収録されています。
『春日影』という曲名について
『春日影』という曲名ですが、スマホやPCで変換しようとするとまず
「春日陰」←これになります。
まあ日陰という単語の方が一般的ですからね。
ですがこれでは意味が通らない。「日影」と「日陰」音は一緒でもその意味は正反対のものなのです。
「日影」-日の光。日光。ひざし。ひなた。
「日陰」-物の陰になって日光の当たらない所。
曲名の『春日影』は前者なので、曲名に込められた意味は春の日差しとなるわけです。もう既に温もりを感じます。光属性しかない。
実際に第3話劇中で春日影が演奏されたシーンのサビでは、燈の心象という形でピアノを弾く祥子のカットが流れていましたが、その背景は光に満ちていました。
曲についての掘り下げ
イントロ~1サビ前
祥子のキーボードからしっとりと始まるイントロ。
アニメの演奏シーンでは祥子の穏やかな表情が素敵ですね。
温かな曲名のイメージに反して、出だしの歌詞で描かれている”春”は世間一般でイメージされるそれとは異なるものです。
新たな出会いの季節。温かな始まりの季節。そういったパブリックイメージではなく、「ひとりぼっち」「散ることしか知らない」「冷たくあしらう」等どこか寂しいフレーズが並んでいます。
幼い頃から世間とのズレを自覚しながら生きてきたこれまでの燈にとって、春という季節がどういうものだったのかが伝わってくるようです。
その疎外感から、孤立しているわけではないのに孤独を感じていた燈は、春を出会いの季節として認識していなかったのかもしれませんね。
ですがこの年の春。燈は祥子という”光”と出会うわけです。
ここから歌詞の雰囲気が変わります。
かつては漠然とした息苦しさ、もとい”生き苦しさ”の中で藻掻くこともできずにいた自分を、祥子が手を引いて”日影”のもとへと連れていってくれた。そんな燈の心象が現れたような歌詞になっています。
この時期の高松燈という人物像の特徴として、確かに他人とのズレや生きづらさを感じてはいるものの、具体的にどう苦しいのか自分の感情の輪郭が掴めていない。所謂”何が分からないのか自分でも分からない”ような状態と考えられるため、そこに対する答えのとっかかりみたいなものが不完全ながらも自分の中で見つかったのではないかなぁと。
キーボードのグリッサンドも相まって燈の内面に閉じ込められていた世界が祥子との出会いによって一気に拡がっていくような盛り上がりでサビに突入していきます。
1サビ
イントロでのキーボードのフレーズがサビの入りからシンセの音で使われています。
最初に雲間をぬって輝く”きらり”は言うまでもなく曲名にもなっている日の光のこと。次に出てくる頬を濡らす”きらり”は涙のことでしょう。
祥子に出会い、CRYCHICとして過ごした日々によって初めて感じた幸せで満たされた心。これまで泣くこともできなかった燈は、ここでやっと泣くことができたわけです。
春日影の歌詞を初めて読んだ祥子も思わず涙を流していましたね。既にオタク(一人称)も大号泣です。
2サビ前
主旋律は1番と大きく変わりませんが、1番と違って踊るようなピアノのフレーズが織り込まれている他、歌詞についても1番からうって変わって温かさを感じるものとなっています。
出会いと別れの季節でもある春。そんな春を過ごす人々を描写している歌詞ですね。
我々からすれば当たり前というか、よくある春のイメージを描いた詩ですが、何度も言うようにこの詩を書いた燈はそんなよくある世間のイメージから浮いた存在でした。
その燈がこの歌詞を書けたというのは、人間として「皆はこんな風に春という季節を過ごしていたんだ」と理解できたことの証左に他ならないわけです。
1番で「今ならわかる」2番で「今だからわかる」と謳われているように、人間になりたかった燈が人間としての気持ちを知ることができたのはCRYCHICがあったからこそなのだと思います。
これは個人的な所感ですが、CRYCHICでカラオケに行った後、歌詞を書く燈の憑き物が落ちたかのような表情がとても印象に残っていて、きっとこんな表情ができるようになったからこの歌詞が書けたんだろうなぁと思うわけです。
間奏
約15秒間の間奏、ピアノの音が中心になって演奏されています。
祥子の独壇場です。
燈が担当した詩が存在しない空白部分をカバーするかのような祥子の演奏が光ります。しれっとトリルも入っていたりと、燈の歌詞を見て即興で曲を付ける作曲の能力もさることながら単純な演奏の技術もやはり相応に高く描かれていますね。
アニメ3話で初めてCRYCHICの楽曲として「春日影」が披露された際はワンコーラスのサイズだったため、この間奏については1年近く未知の領域でした。 まさかこれほどまでとは……。
Cメロ
これですこれ。
もはやこの一節が春日影の本質といっても過言ではない。
歌詞を書いた燈の視点で、燻んでいた自身の世界に光をもたらした祥子という存在の大きさ、その華やかな立ち居振る舞いはとても眩しく、美しく映っていたことでしょう。
直前までのピアノメインの間奏からのこの激熱なラブコール。燈と祥子がそれぞれいかに相手を大切に思っているか、その関係性が際立って感じ取れますね。
後述のシーンで大切な人=祥子の図式が公式の描写で補強されたのも相まってラスサビ前にしてもう既に情緒は限界値です。たすけて。
ラスサビ
曲全体のイメージとして日の光を連想させるような描写が随所に散りばめられていますが、内向的な燈の手を取って心の叫びを肯定してくれた祥子は、燈を”日影”に連れ出してくれた存在であり、同時に”日影”を照らす温かい太陽そのものだったわけです。
CRYCHIC、もっと言ってしまえば祥子の隣は、これまで他人との関わりで息苦しさを感じていた燈にとって初めて居心地がいいと感じた居場所だったのではないでしょうか。
だからこその”離さないでいて”。ずっとここに居たいという思いが込められているのだと思います。
余談:人間になりたいうた
CRYCHICの曲としてはこの『春日影』の他にもう一曲、『人間になりたいうた』が存在しています。
こちらは燈と祥子が出会った日に燈の部屋のノートに綴られた歌詞を見て曲をつけたものとなり、楽曲として出来上がったのも劇中で披露されたのも春日影より先ですが、その実『人間になりたいうた』は燈が感じた生きづらさを言葉としてノートに書き綴ったものを、祥子が歌詞と勘違いしてピアノで勝手に曲をつけたもの(=もともと楽曲用として書かれた詩ではない)なのでここではいったんノーカウントとします。
それはそれとして3話で祥子が弾き語りしたものとは異なり、ちゃんと"バンドの曲"として完成されたバージョンがBlu-ray 上巻のサントラに収録されているので聞いてみてください。
MyGO!!!!!の春日影
序章
事件が起きたのは2023年07月27日。アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の第7話の放送日。
迷子のバンドとして(MyGO!!!!!がMyGO!!!!!として”完成”したのは12話なのでそれまではMyGO!!!!!ではない(意訳)とフォロワーのオタクが言っていたのでそれに倣います。)ステージに立った燈。
不安と緊張から思うように声が出ず苦戦するも、フロアにいた祥子に気づいたことでなんとか碧天伴走を歌いきり曲後のMCで思いを吐露します。
「頑張れって言ってくれた気がして」「私の歌は心の叫びだから」と明らかにフロアの祥子へ宛てたセリフ。特に”心の叫び”については元々祥子から燈に宛てられた言葉。二人を繋ぐキーワードです。
話しながら昂っていく燈のMCに呼応するようにギターを鳴らし始める楽奈。
祥子にとって初めて聞くギターの音色での聞き慣れたメロディ。楽奈が弾き始めたイントロは、本来予定にない『春日影』でした。
サビに入り、フロアの方へ手を差し出すような振りをする燈と、ステージの方へ無意識に伸びていた手を引っ込める祥子。
1番のサビ終わりと同時に堪えていた涙が零れ落ちます。
そのまま逃げるようにライブフロアを後にする祥子をそよが目撃してしまったのが運の尽きでした。
例の歌詞「大切な人」
ショックを受けるそよを他所に曲は進み、間奏からCメロに入っていきます。
そう、かつて祥子がキーボードソロとして担当していた個所です。アニメ放送時点ではCRYCHIC版のCメロは未解禁でしたが、今になって思えばこの時点で祥子が逃げ出していたのはせめてもの救いだったのかもしれません。
ワンコーラスでもう十分すぎるほどのダメージは受けていたと思いますが……。
自分が書いた曲の自分が担当していた個所を、見ず知らずの少女が勝手に演奏しているなんてあまりにも辛すぎる。しかもメンバーはかつてのバンドから自分を抜いたような構成で。
(”自分たちの曲”を巡る話はガルパだとパスパレのバンドストーリー3章で似たような話がありましたがあちらとは事情が違い過ぎますからね。)
愛音と祥子は一応面識があるので、祥子のパートを弾いていた楽奈だけが7話時点で唯一面識がない存在というのが本当に残酷。
逃げ出した祥子にカメラが移り、Cメロ。
例の歌詞の場所です。
涙を流しながら走る祥子と、燈の魂のこもった”照らされた世界 咲き誇る大切な人”が見事に重なるシーン。
この場面によって咲き誇る大切な人=祥子の図式が分かりやすく示されたのです。
そもそも7話初公開時点でCメロの歌詞も初披露だったため、歌詞の第一印象に付随するシーンとしてより強く視聴者の記憶に紐づいたのではないかと思います。
迷跡波
冒頭でも記載した通りこの曲の事情って少し変わっていて、時系列としては
アニメ3話公開:春日影(ワンコーラス)
↓
アニメ7話公開:春日影(MyGO!!!!! ver.)
↓
MyGO!!!!!1stアルバム「迷跡波」:春日影(MyGO!!!!! ver.) 収録
↓
アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」Blu-ray:春日影
なので、曲として先に世に出たのはCRYCHIC版、フルバージョンの音源として正式にリリースされたのはMyGO!!!!! ver.の方が先ということになるわけです。
ここで迷跡波とブルーレイのサントラにそれぞれ収録されている二つの春日影を比べた時に興味深いポイントが、収録時のトラック名です。
迷跡波に収録されてる春日影のトラック名は『春日影(MyGO!!!!! ver.)』で
サウンドトラックに収録されているCRYCHIC版は『春日影』と表記されています。決して『春日影(CRYCHIC ver.)』ではない。
春日影は迷子の曲じゃなくてCRYCHICの曲なのでわざわざ明記する必要が無いっていうのが個人的に好きなこだわりポイントですね。本記事の中では読みやすさ重視で便宜上CRYCHIC版と付けてはいますが。
という旨のツイートをしたところそこそこ共感の反応を頂けましたのでやっぱオタクみんな考えること一緒なんやなって。
以下、蛇足
例のシーン
正直触れるかどうかめちゃくちゃ迷いましたが、一応自分の立ち位置を表明しておくのも兼ねて触れておこうかなと……。
凄い盛り上がり方はしてますが、実際いつまで同じネタ擦っとんねん。というのが正直なところ。キャストがトークしてるの聞くだけでも「あぁ~それ言っちゃうんだ……」みたいな気持ちになることはあります。
あくまで個人的に思ってることなので当然他人の楽しみ方は強制しませんけども。
自分としては祥子が好きでCRYCHICが好きなので「本当にどうして春日影やっちゃったんですか……(絶望)」みたいな方面の感情が強いです。
多分MyGO!!!!!の単独ライブとかで何の脈絡もなく春日影(MyGO!!!!! ver.)やられたら寝込むと思います。
ネタ抜きに「なんで春日影やったの……」になる可能性があります。
そこそこ長いことバンドリ!プロジェクトのオタクをやらせてもらっていますけど、一曲にここまでの文脈が込められる前例を知らないのでいざそうなったときに感情の行方が分からないのが怖いですね。
似た例で言うならRoseliaのLOUDERなんかが近いでしょうか、あれはストーリー中でもリアルライブでもやらなくなったことに意味がある曲なので。
とはいえここから一回もリアルライブで春日影が披露されないことは流石にないと思うのでいずれ来るその日を震えながら待ちたいと思います。逆に全部解決して円満な状態で披露された春日影に対して浅いオタクが「な春や」したら流石に暴れてしまうかもしれん。
以上、作法もわからないまま感情のままに書き殴ったとりとめのない文章ですのでお見苦しい点あったかと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また何か昂ったら筆を執るかもしれません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?