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小説:プライドの行方(第一章)


都内のあるドイツ系の商社。人手が足りなく、一人でも優秀な社員が入ってくるのをいまかいまかと望んでいた営業に、ついに新卒社員が入って来た。

手の足りない中何とか仕事を覚えてもらおうと社員達は奮闘するが、一向に手ごたえが無い。

入社したてのその社員は、管理職になるという大きな夢を抱いて入社してきた。
管理職に昇格するには現場の仕事の知識など必要ないプライドの高いと考える新人社員を、周囲はどのように育てて行けば良いのか。新人社員の野望は叶うのか。

若手を活かしきれていない企業の抱える、やる気のある新人を育てるという課題を抱えた部門の一年間追った作品

あらすじ

(2023年7月16日 に投稿した「私管理職になりたいんです」の再投稿です。

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「山崎さん、おはようございます。見ましたか、大会議室。新人さん達で溢れるかえってますよ!」

「おはようございます。見ましたよ!10人位ですかね。会議室、狭くてかわいそう」

あれは今の会社に転職して数か月経った、四月の事だった。

何度かの転職で出会ったドイツに本社を置く商社。ここでの仕事に慣れるよう必死の毎日を送っていた私の目の前には、課長に連れられてやってきた新しく入ってきた新卒の社員達がいた。

デスクの島の傍に立った課長の傍には、黒のリクルートスーツと黒のA4サイズの書類が入る鞄が初々しい二人の女性がいた。

「今日から入社の速水さんと竹川さん。あ、速水さんはお待ちかねの三課の人だからね。また後で改めて連れてくるね」

速水は小柄で愛嬌のある、明るそうな印象のある人だった。人出不足で過重労働に近い状態が続いていた私達の部門では、待ちわびたメンバーがやっとやってきた、とチーム全体が安堵していた。

私達のいる営業三課は、海外の支店と連絡を取り合い、商品の企画に携わる部署だった。

インテリアを主に扱うこの商社では、クライアントから受けるオーダーに沿って商品を開発したり、自社のオリジナルの製品を考案したりする。クリエイティブな部署でもあった。せめて後三人いればもう少し楽になる。課長もその事情を知っており、毎日新規の採用に駆けずり回ってくれていた。

一時間後、課長と速水が私達のデスクの方へ戻ってきた。

「皆さん、今日から配属になった速水エリカさんです。アメリカに留学していた経験がある方なので海外とのやり取りは心配ないだろうけれども、うちの会社の仕事の流れなど慣れないといけないこともあると思うから、ぜひサポートしてあげてください」

チームメンバーは全員起立して拍手しながら速水を迎え入れた。

語学に問題の無い人は大歓迎だった。これまでに何人も事務経験者が私達の部署に配属になってきたが、語学がネックになり辞めて行ってしまった人が続いていた。たとえ社会人経験がなくとも、それはここに入ってから経験を積めばいい。教えてあげられることはいくらでもある。私達は待望の妹を迎える気分でいた。

速水は思っていた通り優秀な人だった。昨今の新卒の人と同様にデジタルネイティブで、PCの基本操作には何の問題もない。チャットもすぐに使いこなせて、チームとのコミュニケーションもすぐに馴染んだ。

仕事の手順は、オン・ザ・ジョブトレーニングと言って、実際の業務を担当しながら少しずつ業務の流れを覚えて行ってもらう。と言っても教育係の小林が一人で教えるのではなく、速水から質問があれば誰でもすぐに対応できるよう、チームで共有していた。

せっかく入ってくれた若い人材。これまでに派遣や契約という立場の経験者達が何人も辞めていくのを見ていた私達は、今度こそ長続きして欲しいと期待をしていた。

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その年、私はドイツ系の商社から内定をもらった。インテリアの輸入を得意とするその東京支社は、JR有楽町駅のすぐそばにあった。

以前から働くとしたら外資系の資系の企業と決めていた。そのためにも大学の三年生の時にアメリカに留学し語学に磨きをかけ、準備は万端に整っていた。

将来管理職になりたいと思っていた私は、サークルはラグビー部に所属し、マネージャーを三年間勤めて、人の管理というものをしっかり学んだ。

外資系の企業は能力勝負。年齢に関係なく実力主義で、若くとも能力さえあれば出世も出来る。そういうフェアな環境に身を浸したかった。商社での昇進、と考えただけでもやる気がみなぎってくる。

そして入社の日。大きな会議室に並んだ折り畳み椅子に座った私達は、会社のトップであるジェネラルマネージャーから祝辞を頂き、会社の概要とビジネスについて簡単な講義を受けた。

ジェネラルマネージャーは大柄な五十代と思しき女性で、気さくな人だった。同じ東北出身者ということもあり、私は大いに親近感を覚えた。

その後、私達新入社員はいよいよ各部署に挨拶に回ることになった。憧れの外資。さぞかしきりっとして能力の高い人達が働いているんだろうと密かに期待していた。営業部の本部長が私達新入社員を紹介してくれた。

「今日から一緒に働くことになった新卒十名を連れてきました。最初のうちは不慣れなこともあると思いますが、皆さんで協力して一日も早く業務に慣れるよう、しっかり教えてあげてください」

私は出来る限り社員さんにアピールできるよう、姿勢を正して笑顔を絶やさないようにした。ファースト・インプレッションがものを言うはず。アメリカで揉まれて鍛えられたその笑顔で、私は一人でも早く社員さんが私を覚えてくれるよう、アピールをした。

各部署での紹介が終わると、私達はそれぞれの所属部署の上長と一緒に、配属先の部署へ連れて行ってもらった。

配属になった営業三課の課長はほっそりとした三十代の女性で、若くして係長に抜擢され、今は二十人ほどいる三課の管理をされていると言う。

私が配属になるのは三課の欧州・オセアニアチームだった。メンバーは私を入れて四人。これから産休に入る社員さんがおり、配属後はしばらくしたら三人で仕事をすることになると言う。

「皆、気さくな人達だからね。分からない事があったらどんどん質問していって」

課長がそう言った。

どんどん質問?私はそんなことしない。質問するのは三回まで。就職雑誌で学んだことは、しっかり覚えている。質問が多いのは仕事のできない証。あくまでスマートに立ち動かなければ、会社にも認められないだろう。

デスクに近づくと、二人の女性がこちらを向いた。

私は軽いショックを覚えた。

今まで外資系の会社のイメージはメディアや雑誌、ネットで見るだけだったのだが、私はきりっとしたビジネススーツに身を包んだかっこいい社員さん達が、ピカピカに整頓されたお洒落なデスクで仕事をしているのを期待していた。

それがどうだろう。

目の前にいるのはどうという事のないグレーのセーターと黒のズボンの女性と、やぼったい紺のカーディガンに白ブラウスの女性だ。きりっとした印象はどこにもない。

デスクもまあまあ片づけられているが、二人とも何やら大きな図面をデスクに広げ、散らかしているように見える。こんな人達で大丈夫だろうかと一瞬不安になった。

見た目からしてあまりに仕事の出来なさそうな人達に、私は軽い失望を覚えた。ここで仕事を覚えて出世するとしても、部下がこんなに出来なさそうな人達では先が思いやられる。

課長が嬉しそうに言う。

「今日から三課に配属になった速水エリカさん。みんなよろしくね。速水さん、こちらが山崎さんと小林さん。小林さんがOJTであなたに仕事を教える予定だけど、二人いるから、何か困ったことや分からない事はこの二人に聞いてください。あと、あちらにいる鈴木さんがもうじき産休に入るので、彼女の仕事を三人で分担することになると思うからよろしくね」

私が配属になったチームは、欧州とオセアニアを担当する。第三課の中では文化圏の違いでチームが組まれており、アジア方面を担当するアジアチームと、欧州・オセアニア方面を担当する欧州・オセチームとに別れていた。

欧州やオセアニアなら、アメリカにいた私でも対処ができるはず。文化の事やインテリアの事なら、これまでのアメリカ滞在経験も十分に活かせそうだ。

自分のデスクが与えられ文房具を渡されると、私は小林さんについてフロアの奥にあるミーティングスペースへ行った。

明るいオレンジのカーペットの上には黄緑色の椅子と白のテーブルが並んでいた。ちょっとしたミーティングはここで行われると言う。

私は小林さんと向かい合って席に着いた。

「それじゃ、実践に入る前にチームの業務内容を説明するね。私達の仕事は大きく分けて二つ。フィールド・セールスが確保してきた案件を、本社や支店に依頼することと、自社のオリジナル製品を開発する事です。

フィールド・セールスが持ってきた案件の場合は、家具の種類から大きさ、デザイン、コンセプトなどを海外のオフィスに伝えて、見積もりを取ります。三課はオーダーメイド製品を扱っているので、家具はすべて一点もの。海外の支店は私達からの依頼を家具デザイナーなどに依頼して、送料を含めた見積もりを取ってくれます。

見積もりが上がってきたらそれをフィールド・セールスに戻し、案件が成立した実際に製品をオーダーします。

ここで案件を販売チームに引き渡し。納期までの時間の確認や支払いなどは販売チームが専門にやっています。

時々海外の家具デザイナーをご指名してオーダーが入る場合もあります。

二番目に、うちのオリジナル製品の開発について。これはうちが何度も製品をオーダーしたり、人気があると思われるデザイナーやアーティストがいたりすれば、こちらからうちの会社のオリジナル商品の開発をお願いする場合があります。

これはマーケティング部門と共働して、どのような製品ラインナップが人気かを踏まえて、海外のデザイナーに見積もりをお願いして、試作品を作る所までやってもらいます。カタログが上がってきたらフィールド・セールスに引継ぎ、見込みのありそうな顧客に提案をしていただきます。

今現在プロジェクトとして進んでいるのが、オーストラリアのアボリジニーのデザイナーが手掛けているデザインの生地を使ったソファやカーペット。それとベルギーのデザイナーが手掛けている屋外用の椅子とテーブルのセット。

具体的にどんなデザインを手掛けているかは、過去に扱った商品のカタログや、デザイナーのホームページをみながら確認していきます。

海外のオフィスとのやり取りは英語で、社内システムを使ってやり取りをしています。そして社内のフィールド・セールスやマーケティング部門とは日本語でメールをやり取りしています。速水さんは英語も問題ないようだし、あとはシステムの使い方さえ覚えてしまえば心配ないでしょう。

ここまでで何か質問はありますか?」

私はあっけに取られていた。今聞いた事を飲み込むだけでも必死。やってみなければ分からないことだらけだ。質問を考えても何も浮かんでこない。

「特にありません」

「そう!それじゃ、最初のうちは私と一緒に少しずつ新しい案件に手を付けていきましょう。仕事を実際に見てもらって、何か分からない事が出てきたらすぐに質問してね。結構スピード感が求められるので、質問があったらすぐに聞いてください。

今話したことは、パワーポイントにまとめてシステムに掲載しているので、時間があるときに自分のPCに保存するなり印刷するなりして管理してください。」

私達はデスクに戻り、仕事を始めた。最初に任されたのは、デザイナーから上がってきたカタログの商品説明の翻訳だった。私は気を引き締めて翻訳に取り掛かった。出来上がった翻訳を小林さんにチェックしてもらう。

戻ってきたWordの資料の翻訳には沢山の赤が入っていた。

ショックだった。英語には自信があった私は完璧に訳せたと思っていたが、赤が入っている単語が全く分からない。小林さんに尋ねると、それは私が日本語で聞いたことも無いような専門用語だった。

「初めは皆こうだから気にしないで。でも専門用語だけでもネットを使ってどんどん覚えて行ってね。他の案件を繰り返し扱っていけば覚えられることだから」

小林さんはそう言っていたが、語学に自信があった私は少し打ちのめされた気がした。たかが家具、たかがインテリアと思っていたのに、まさか専門用語があるなんて。

午前中は翻訳を二本やって、チェックをしてもらい、昼休憩になった。

私は同期の子達と休憩スペースでお弁当を広げながら、午前中の様子を話合った。

「もう、販売は大変!英語も日本語も覚えることだらけよ!でも物の輸入には興味があったから、商社に入った、っていう実感があるんだよね」

「じゃあ頑張れそう?」

「さすがにまだわかんないけどさ。とにかく周りの人達のスピード感と言ったら!あの速さで仕事が出来るようになりたいよね」

「インサイド・セールスは思ったよりも大変・・・マーケティング部門から上がってくる商品の見込み客に連絡を取って電話をするんだけど、先輩達のトーク!本当に丁寧に話しながら、買ってみようかと思わせるような話をしているんだよね。早くああなりたいな・・・」

「フィールド・セールスは早速外回りに行っているみたいよ。あっちも面白そうだよね」

「営業は?どうだった?」

絵美子が私に話を振ってきた。

「うーん、なんか翻訳ばっかりさせられた。しかも誤訳に赤入れられて。ちょっとめげてるところ」

「誤訳に赤?どういう事?」

「翻訳したら、先輩のチェックが入るのよ。それで間違っている所を直されるんだけど・・・」

「何を翻訳してるの?」

「製品のカタログ。椅子とかカウチとか、カーペットとか」

「やだそれ、私達がお客様とお話しするときに使う資料じゃない?!エリカ達の所で訳してたんだね」

「うん。実際に商品を開発するのがうちの部門だから、商品はここが一番よく知っていなければならない、って。でもなんかなあ・・・他の部門でもできそうなことじゃない、翻訳って。専門用語が分かれば訳せるって言うけど、それなら別の部署でもできそうなことだと思うけどな」

「あ、それうちのマーケティングでちょっと聞いたよ。昔はマーケティングで翻訳をやってたらしいんだけど、やっぱり言葉のニュアンスやデザイナーのコンセプトを訳しきれないので営業に戻したんだって。エリカ達の所は実際に商品を仕入れてるんだって?それなら他の部署よりも詳しくなりそうだね」

「すごい、いかにも商社の中核、って感じじゃない?営業、いいなあ。私も第一希望を営業にしておけばよかった。インサイド・セールスだと出来上がった商品しかわからないから、どんな経緯で製品が出来たか分からないんだよね。営業から回ってくる資料が命綱だっていうもの。エリカ達が作ってくれてる資料、大事だよ」

「そうなんだ・・・」

私は実感のないまま返事をした。

仕事のできなさそうだと思っていた人達から立て板に水を流すかのように仕事の説明を受け、出来ると思っていた翻訳も赤だらけ。気にするなと言われてもめげていたところに、同期達から大事な仕事をやっていると言われて、私は混乱し始めていた。私の仕事がそんなに大事だなんて、実感がわかない。

けれども、まだ初日だ。午後には何か新しい事をやらせてもらえるかもしれない。頭を切り替えて、私は同期達と別れて自分のデスクへ戻った。

PCを開くと、Wordの文章が帰ってきている。それを開くと真っ赤に直しの入った商品説明の原稿があった。すべては専門用語。私はネットで言葉を検索しながら、赤の入った単語を調べ始めた。

それを見ていたのか、小林さんが横から声をかけてきた。

「翻訳するときは最初からネットできちんと調べてから翻訳したほうが効率良いよ。専門用語も出てくるし。分からない事があったら、まず自分で調べてね」

そう言われても何が専門用語で何が専門用語なのかさえも分からない。普通の英単語だと思っていたものが、日本語では聞いた事のない専門用語に変わっているのだ。私はネットで赤が入っていた単語を繰り返し調べ始めた。Deep Lを使ってもその専門用語の候補すら出てこない。

そんな矢先に、山崎さんから声がかかった。

「速水さん、それ少し急ぎだから、赤の入っている通りに文言を変えてフォルダーに格納して。終わったら声をかけてください。最終チェックは私がやります」

慌ててネットで単語を調べるのをやめ、直しが入った通りに文面を変えていく方に切り替えた。

「山崎さん、今終わりました」

「ありがとう!」

そう言うと山崎さんはPCの画面に向き直り、原稿をチェックし始めた。

そう言っている間にも、何本か電話がかかってきた。PCから目を離さずに山崎さんや小林さんが電話に出る。

その声を聞いて、私はあっけにとられた。二人ともネイティブ並みの英語の発音だった。

アメリカ英語とは少し違った発音。まるで自分の横で外国人がしゃべっているような気持になった。

この二人は何者なんだろう?

山崎さんはPCから目を離さず、話し続ける。

小林さんは手を止めることなく、電話で話しながら何かの作業を進めていた。

私は二人の電話に吸い寄せられるように聞き入っていた。何を話しているのかが分からない。アメリカ時代に努力してリスニングに自信が付いてきたところなのだが、山崎さんや小林さんの話している内容が全く分からないのだ。発音だけの問題ではない。言葉自体が全く分からなかった。

電話に聞き入っていた私の目の端に、何か動くものがあった。ふと目をやると、斜め前に座っている鈴木さんがこちらに向かって手招きをしていた。私はそっと立ち上がり、鈴木さんの席へ行った。

「何かありましたでしょうか?」

「ごめんね、集中していた所。多分山崎さんと小林さんの電話を聞いてたんだよね?最初は誰しもびっくりするんだけれど、あの二人は海外生活が長いんで、英語はすごく流暢なのよ。いいお手本になるから時々は聞いた方が良いかもしれないけれど、なるべく見つからないようにさりげなく、ね。サボってると思われちゃうから・・・」

「海外って、どちらにいらっしゃったんですか?」

「山崎さんはオーストラリア生まれで、十五歳くらいで日本に来たって聞いたよ。他社さんでシンガポールや香港に駐在して、去年の年末にうちの会社に来たばかり。小林さんは香港とシンガポールに長く住まわれていて、うちに来てからもニュージーランドやイギリスの支店に長く居て、三年前に東京に着任したんだって。二人とも日本語が廃れてないでしょ?すごく努力して二つの言葉を維持してるって聞いたよ」

語学なら私もこれまで学生時代や留学時代に努力してきたことだ。アメリカに留学していたのはつい昨年の事。

今日はびっくりしたけれど、山崎さんや小林さんの様に海外から三年も離れている人達とは比べ物にならない程、最新の海外の生活を経験している。電話でどんなに話せる人達でも、実際の経験は過去の古い物。私も電話対応をさせてもらえる様になれば、周囲も私の経験に納得してくれるだろう。そう考えて私は目の前の仕事に戻った。

チャットを見ると、十五件のメッセージがたまっている。

こんなに溜めていてはいけない。私は大急ぎでチャットの画面をスクロールした。

「アントワープのデスクの案件、終了。ダブルチェックお願いします」

「了解」

「@山崎さん、ウェリントンのDunnさんから請求書送付の依頼がありました」

「@鈴木さん、ありがとうございます。今日午後一で送付します」

「@小林さん、パリの椅子の案件、終わりましたか?」

「@山崎さん、あと少しでメール書き終わります。終わったらまたチャットでチェックを依頼させていただきます」

「了解です」

「@小林さん、ハノーバーのイェンスさんからデスクの下書きを送ったと電話がありました。今週末には届くそうです」

「@山崎さん、ありがとうございます」

こういったやり取りが交わされていた。

他人の業務についてもいちいち確認しなければならないのか。とりあえず既読さえ付けておけば良い。私はチャットを無視する事に決めた。


(続く)


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